第5話 魔法剣士と鋼の咆哮


むねおくがざわつき

あせりにられるままにあしうごかした。




(エリシア……! 無事ぶじでいてくれ……!)




しばらくもりなかはしつづけると


突然とつぜんもりおくから金属きんぞくがぶつかりおとこえてきた。




「!」


『にゅめょりと』はそのおと反応はんのう

さらにスピードをげる。




木々きぎをかきけてすすむと

視界しかいひらけ、そこにはエリシアの姿すがたがあった。




そこはゴブリンのかく住処ずみかだった。




彼女かのじょ一人ひとりでゴブリンの大群たいぐん相手あいてにしていた。




するどけんさばきで次々つぎつぎとゴブリンをたおしていく姿すがた

まさに王国おうこくのエリート剣士けんしそのものだった。




村人むらびとたちはすでに解放かいほうされ、安全あんぜん場所ばしょ避難ひなんしているようだった。




『にゅめょりと』は洞窟どうくつ入口付近いりぐちふきん木陰こかげひそ

そっとなか様子ようすのぞんだ。




(エリシア……)




彼女かのじょ洞窟どうくつ広場ひろば圧倒的あっとうてき優位ゆうい

ゴブリンたちを一掃いっそうしていた。




彼女かのじょけんはまるでおどるかのようにかるやかにるわれ

次々つぎつぎとゴブリンをたおしていく。




ゴブリンたちはかずおおさをたよみにおそいかかってくるものの

エリシアのまえでは無力むりょくだった。




彼女かのじょうごきは無駄むだがなく、まるでかぜのようになめらかにながれていた。





「……すごい」


『にゅめょりと』は木陰こかげからそのたたかいぶりをじっとつめていた。




(エリシアの技量ぎりょうおれっていたころよりも

はるかに上達じょうたつしている)




かつてとも剣術けんじゅつまなんだときよりも

さらに洗練せんれんされたうごきで

ゴブリンたちを片かたづけていく彼女かのじょ姿すがた

むねおくがチクリといたんだ。




おれ出番でばんはなさそうだな……)




かれ自嘲気味じちょうぎみみをかべた。




エリシアはひとついきをつき、最後さいごのゴブリンをたおした。




洞窟内どうくつないには静寂せいじゃくおとず

彼女かのじょけんおさ

あたりを見回みまわす。




村人むらびと無事ぶじ解放かいほう

ゴブリンを一掃いっそうした彼女かのじょ

満足まんぞくそうな表情ひょうじょうかんでいた。




そのときだった。




エリシアのまえに、ゴブリンのボスがあらわれた。




ボスのは『グラッシャー』だ。




全身ぜんしんおおはがねのようなうろこ

かれ強靭きょうじんさを物語ものがたっている。




グラッシャーは咆哮ほうこうとも巨大きょだいおの

エリシアにおそいかかってきた。




勝負しょうぶよ!」




エリシアは冷静れいせいけんかま

つぎうごきをんだ。




グラッシャーのおの地面じめんさる瞬間しゅんかん

エリシアは素すばや回避かいひ

けんほのおまとわせた。




「フレイム・スラッシュ!」


彼女かのじょけんほのお軌跡きせきえが

グラッシャーのよろいこうとする。




しかし

かたうろこがそれをふせ

きずひとつつかない。




「やはり

ただのゴブリンではない……!」


グラッシャーはふたたびエリシアにかって突進とっしんしてきた。




エリシアは瞬時しゅんじ後退こうたいしつつ

かぜちからけん宿やどす。




「ウィンド・ダンサー!」


かぜ剣舞けんぶで素すばやみをれるが

グラッシャーはその攻撃こうげきをものともせず

巨大きょだいうでまわしてくる。




エリシアは一瞬いっしゅんすき

さらに魔力まりょく集中しゅうちゅうさせた。





けんふたたひか

彼女かのじょ必殺技ひっさつわざ準備じゅんびはいる。




「レクイエム・オブ・ザ・エレメンツ……!」


ほのおかみなりかぜこおりけん集約しゅうやくされ

グラッシャーへとはなたれる。




強烈きょうれつちからがボスをつつみ込み

かれうろこつらぬはじめた。




エリシアはグラッシャーの猛攻もうこう苦戦くせん

何度なんどおの一撃いちげきけながら距離きょりっていた。




かれ圧倒的あっとうてきちからはがねのようなうろこ

彼女かのじょの通つうじょう攻撃こうげきとおすことができない。




おのの一ひとふりが地面じめん

エリシアの足あしもとふか亀裂きれつしょうじさせた。




「これ以いじょうはもたない……!」




エリシアはいきととの

ついにおく使つか覚悟かくごめた。




彼女かのじょけんほのおかみなりかぜこおり四大元素しだいげんそあつまり

けん全体ぜんたいひかかがやく。




「これでわりよ! レクイエム・オブ・ザ・エレメンツ!」


けんかかげたエリシアは、一気いっきにグラッシャーにかって突撃とつげきした。




けんからはなたれた四大元素しだいげんそちからがグラッシャーをつつみ込み

かれはがねうろこ破壊はかいはじめた。




すさまじい衝撃しょうげきともかれの巨きょたいうしろにばされ

苦悶くもんさけびが洞窟どうくつぜんたいひびわたる。




「ぐ、グラアアアァァッ……!」


ついに、グラッシャーはそのくずちた。




いきらせながらも

エリシアはけんしずかにおさ

勝利しょうりを確かくしんする。




ちはだかった巨大きょだいてきたおした彼女かのじょ姿すがた

まさに王国おうこくのエリート剣士けんしそのものであった。




わった……」



『にゅめょりと』は木陰こかげから一歩いっぽそうとしたが

そのあしまった。




(エリシアの勝利しょうりを見届けたけど

自分じぶんなにえばいいのかからない。




結局けっきょくおれなにもできないままだったな……)




『にゅめょりと』はもう一度いちどためいきをつき

木陰こかげからふたた姿すがたかくした。




そして、エリシアにつからないようしずかにそのることにした。




(これがいまおれ立場たちばか……)




こころなかにかすかな焦燥感しょうそうかん無力感むりょくかんかかえながら


『にゅめょりと』はもりなかへと姿すがたした。




洞窟どうくつの中に沈黙ちんもくが戻り

エリシアはけんおさ

ふかいきをついた。



しかし、その瞬間しゅんかん



周囲しゅうい空気くうき異様いようおもわった。


まるで深淵しんえんからがるような

つめたい気配けはい洞窟どうくつつつむ。



「……だれ?」


エリシアは緊張きんちょう

ふたたけんかまえる。




突如とつじょ


やみそのものが具現化ぐげんかしたかのように

まえ空間くうかんゆがんだ。



そして、そこにあられたのは

ひとりおとこだった。




漆黒しっこくのマントをひるがえ

かおには無機質むきしつ仮面かめんをつけたその姿すがた




はがねよろいつつまれたそのからだ

まるで虚無きょむからあられた存在そんざいのようだ。




「君の命もここまでのようだね

エリシア・ファルストラード


すぐに殺してあげるよ」



ひくひびこえ洞窟どうくつないひろがった。




「……だれなの?」



彼女かのじょこえにはけっしておそれを

せまいとする意思いしがこもっていたが

まえおとこ威圧感いあつかんあきらかに異常いじょうだった。




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