第4話 迷走する勇者パーティ

ちょうどそのころ

『にゅめょりと』を追放ついほうした勇者ゆうしゃパーティでは

深刻しんこく問題もんだい発生はっせいしていた。




『にゅめょりと』がいなくなって以来いらい

かれらはモンスターに一度もつことができず

全滅ぜんめつかえしていた。




そのたたかいでも

またしても全滅寸前ぜんめつすんぜんまれ

パーティ全員ぜんいんつかっていた。




女格闘家おんなかくとうかのアイシャは

苛立いらだちちをかくせないまま

魔法剣士まほうけんしガルディアスにった。




「これで10回目ですよ、ガルディアス!


この3日間みっかかん

私たちのあたらしい勇者ゆうしゃパーティが

全滅ぜんめつした回数かいすうがもう10回目じっかいめだなんて!」



彼女かのじょこぶしにぎりしめ

くやしさをにじませたこえった。




彼女かのじょまえには。



あたらしい勇者ゆうしゃであるバルトルスは既に

死んでおり棺桶かんおけの中に入っていた。



ガルディアスもそのよこ疲弊ひへいしていた。




ガルディアスは


かってる、アイシャ……

バルトルス様はまだ戦闘の経験がほとんどない

これからが本領発揮ほんりょうはっきと言ったところさ」


と言った。


しかし、かれ言葉ことばにはあせりと無力感むりょくかんざっていた。




アイシャはくちびるめながら

てんあおいだ。




「『にゅめょりと』がいなくなってから

私たちはもっと強くなったはずなのに……」


その言葉ことば

空気くうきがさらにおもくなった。





アイシャは

けわしい表情ひょうじょうでガルディアスをにらみつけ

くやしそうに言葉ことばつづけた。




「それだけじゃないわ

王国おうこく国民こくみんからも不満ふまんこえがってるのよ!

『にゅめょりと』を追放ついほうしたあと

より強くなったはずの私たちが一度いちどててない

そのことがひろまってるのよ!」


彼女かのじょ言葉ことばにはあせりと苛立いらだちがじっていた。




これまで勇者ゆうしゃパーティとして尊敬そんけいされてきた立場たちばらいでいることが

彼女かのじょにとってえがたかった。




王国おうこくは私たちに期待きたいしていたのに

いまじゃまった成果せいかせてない。




あたらしい勇者ゆうしゃパーティが強力きょうりょくなモンスターをたおしてくれる』って

期待きたいされてたのに

この有様ありさまよ……」


アイシャはこぶしにぎりしめ

地面じめんけるようにしてそのくやしさを表現ひょうげんした。




「このままじゃ

私たちは信用しんよううしなって

王国おうこくのためどころか

自分じぶんたちすらまもれなくなる……」


彼女かのじょ言葉ことばおもひび

パーティ全員ぜんいんむねさった。




女魔法使おんなまほうつかいのセリーヌは

険悪けんあく雰囲気ふんいきなか冷静れいせいさをたもちながら

ふとかんがんだ。




そして

やや躊躇ちゅうちょしながらもくちひらいた。




「ガルディアス

私たちはいまのままじゃてないのはあきらかよ。




だから

無理むりつよいモンスターとたたかうんじゃなくて

まずはスライムのようなよわいモンスターからはじめるのはどうかしら?」


その提案ていあん

パーティの緊張きんちょうすこやわらいだかにえた。




しかし

ガルディアスはそれをいてかおけわしくし

こぶしつよにぎりしめた。




「スライムだと?」

かれはセリーヌをにらみつけ

いかりをおさえきれない様子ようすこえげた。






国民こくみんまえ

そんなみっともないことができるか!


おれたちは勇者ゆうしゃパーティだぞ!


いまさらスライムなんかとたたかって

それでだれおれたちを信頼しんらいしてくれるってうんだ!?」



ガルディアスのいかりに

セリーヌはすこおどろいた様子ようすせたが

すぐに冷静れいせいたもった。






「でも、いまのままじゃつよモンスターもんすたーにはてないわ。



てないたたかいをつづけるより

基礎きそをしっかりかためてからふたた挑戦ちょうせんするほうが――」




だまれ!」

ガルディアスはセリーヌの言葉ことばさえぎった。






おれたちの名誉めいよほこりをまもるために

そんなはじさらすわけにはいかないんだ!


スライムなんか相手あいてにしてわらわれるのはごめんだ!」



そのにはふたたおも沈黙ちんもくひろがり


ガルディアスのはげしい感情かんじょう

空気くうきをさらに緊張きんちょうさせていた。




ガルディアスは腕を組み

胸を張って言い放った。


「安心しろ、みんな!


俺たち勇者パーティは

たとえ死んでも教会で生き返らせてもらえる

特権とっけんがあるんだ


死ぬことはおそれるな」





その頃


『にゅめょりと』は

エリシアを探して森の中を走っていた。

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