第6話 歓迎パーティー?

 その後、姉さんも混ざって部屋の片付けをすることになった。


 もちろん見られたくない物などは姉さんが気を遣ってくれたので、そういうのは一人の時に整理しようと思う。あのラノベのことをいつ言われるのかとヒヤヒヤしていたが、今のところは暴露されていない。


 しかし、あの二人のことだ。油断するのはまだ早い。


 直さんは完全に僕をからかうのが楽しそうだし、心愛さんは好奇心オバケなので油断した隙に話すかもしれない。


(はあー、どうしてこんなにドキドキしないといけないんだよ……)


 まあ、誤解されるようなラノベを持ってた僕が悪いんですけどね……。


 一通り部屋を片付けると、すでに時刻は午後四時半を回っていた。僕たちはリビングに移り、少しだけゆっくりすることに。


 姉さんの淹れてくれたコーヒーを飲んだり、お菓子を食べながら休憩することになった。だけどさっそく美少女二人に弱みを握られて、心はまったく休まらない。

 少し休憩すると姉さんが席を立った。


「こんな時間だしそろそろ買い出しに行こうかな。一応これってものは予定してるんだけど、祐樹くんは何か食べたいものとかある? 好き嫌いとかもあるからさ」


「食べたいものですか? うーん。僕は別になんでも構いませんよ。それに好き嫌いも無いので大丈夫です」


「それなら今日の歓迎パーティーはみんなで鍋にしましょう!」


「やったあー! 今日は鍋パだー! 私それ大好きなんだよね〜!」


 ……歓迎パーティー?


「え、ちょっと待ってください。もしかしなくても、その歓迎パーティーってのは僕のために……?」


「もしかして話してなかった? 今日は祐樹くんを歓迎するために前から私たちが計画してたのよ」


 僕のためにそんな歓迎会を開かれるのは素直に嬉しい。今までは祝ってもらうとしても父さんくらいだったので、姉さんが出来てから僕の周りがどんどんと変わっていく気がした。 



 今日の主役だから言われて僕は部屋で待つことになり、三人は近くのスーパーへ買い物に向かった。


 その間に僕は自分の部屋でやり残した片付けをすることにした。数時間まで段ボール箱しかなかった部屋が、今ではすっかり自分の部屋になっており今日からここに住むのだと改めて実感する。


 そうこうしていると玄関が開き、三人はパンパンの袋を抱えながら戻ってきた。


「お帰り、結構遅かったですね」


「うん、ちょっと具材を何にしようか悩んじゃって……。でも美味しいのを作るから期待しておいてね」


「楽しみにしとくよ」


「ちょっと私も手伝ったんだよー! ねえ弟くん、私にも何か言うことがあるんじゃないのかな〜?」


「は、はい。ありがとうございます心愛さん」


 そう言うと心愛さんは天使のような笑顔を浮かべて「えへへ〜」と頭をさすっていた。するとくいくいと袖を引っ張られてジッと直さんがこっちを見ている。


「ありがとうございます」


「よろしい」


 そんなやりとりの後、鍋の準備をするために姉さんと直さんはキッチンに向かい、僕と心愛さんは二人でゲームをすることになった。


「ゲームの前に、はい! 弟くんにはこれを授けよう!」


「これをですか……?」


「うん! さっき百均で見つけたからつい勝っちゃったんだー」


 それは『今日の主役』と書かれたタスキでパーティー用とかで使われるやつだ。

 ちょっとこういうのは子供っぽいけど、せっかくなので肩からかけた。


 そしてさっそく僕たちはゲームをすることに。

 これは僕が実家から持ってきた『大乱戦スマッシュシスターズ』で、幅広いキャラを選ぶことが出来る対戦型のバトルゲームである。


 キャラとステージを選んで、僕VS心愛さんの1戦目が始まった。


「よしよし、えい、そりゃあ、とりゃあ!」


 心愛さんは攻撃するたびに声を出すのでやりにくいけど、その攻撃をかわしていく。


「あ、ちょっとそれズルイよー!」


 このバトルにおいてズルなんてないが、勝ち負けのあるものには本気でやるのが僕の流儀だ。わざと負けたりするのはやられている側も冷めるので、美少女相手でも必殺コンボを決めていった。


「ううう〜……負けたー……。ねえ、もう一回しようよ! 今度こそ絶対に勝つんだから!」


「もちろんです」


「よーし、じゃあさっきと同じキャラでやっても良いかよね?」


「それは別に良いですけど、どうして?」


「そんなのさっきのキャラで勝たないと意味がないからじゃん。次は絶対ゼーったい負けないからね!」


「はい、望むところです!」


 心愛さんは袖を捲ると、身を乗り出してコントローラーを握りしめた。意外と負けず嫌いな人らしい。


 それから2戦目、3戦目、4戦目と繰り返した。ここまで全部僕が勝っているのだけど、心愛さんには諦める様子は無い。海外の血が流れたサファイア色の瞳には完全に火が付いていた。


 そして5戦目、6戦目と僕が勝ち続けて――


「もうそろそろ鍋をしようと思うんだけど……」


 僕たちがいつまでもゲームをしているので直さんが呼びに来た。


「はーい、今すぐに……」


「まだ……」


「えっ?」


 心愛さんを見れば、テレビ画面をじっと見つめていた。これは勝つまでコントローラーを離さないつもりだ。さすがにお腹も空いたし、早く鍋に行きたいのだけどその勝ちたい気持ちも僕は分かる。


「すいません。あと一戦だけやらせてもらえませんか? これで最後にするんで……」


「そうね。まあ、心愛は気が済むまでやめないし、早いとこ決着つけてよ?」


「はい……」


 直さんは呆れた様子だったけど、キッチンの方に戻って行った。そして僕と心愛さんのバトルは佳境になり、いつも通りここで必殺技を出せば、僕は勝てる。


 だけどお腹も空いたし、ここで勝てばまたもう一戦することになるはずなので……。


「やっと勝てたぁあああー!」


 コントローラーを掲げながら、心愛さんは嬉しそうに立ち上がった。さっきは本気でやるのが流儀とか言いながら、この短い間にわざと負けることになった。


 ……もう流儀なんて語らないようにしよう。


 それに『今日の主役』というタスキをつけながら、接待ゲームをしているこの矛盾。

 なんなんだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

義理の姉さんが可愛さで無双している はとり @heyanonaka

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ