第21章 潰れかけの会社

相変わらず週末になると誰1人として帰ろうとしない無駄とも言える時間が過ぎて行く…


日曜日しか休日が無いのに…本当に週末のこの時間が嫌でしょうがなかった。


同じ現場に行ってる先輩に話を聞くと、入社時期が私と2ヶ月ほど違わず、この会社に馴染もうと頑張っていることがわかった。


先輩に関しては解体経験の年数がかなりある様で、ある種風格があり、長い事この会社にいるもんだと勝手に思っていた。


岡山組はと言うと、THE 職人的な感じの人が多い印象で話しづらい雰囲気を醸し出していた。


その中で年齢的に60歳くらいの1番年配であろう人が話しかけてきた。


ON『初めまして。わしはONです。』


私『は、初めまして。◯◯と言います。宜しくお願いします。』


意外と礼儀正しいONさんは気さくに話が出来る感じだった。


私は単刀直入に聞いてみた。


私『何故皆さん帰らないのですか?』


ON『入って間もない◯やんには、不思議に思うよな。 帰りたけりゃ帰っても大丈夫だよ。』


とてもそんな雰囲気では無い。


ON『実はな、ワシら3ヶ月程給料貰ってないんだよ。 ◯やんが貰っている給料は本当はワシらに入ってくる金なんや。』


私『えっ、え〜?そ、その話し本当ですか?』


何でも、前の社長がかなりのどんぶり勘定でかなりの負債があるのに気がつかなかったのが発端らいし。

前の社長とはあの口の悪いK祖父の事だ。


そして週末になると、社長の息子Tにいつ金が入るのか詰め寄っているとのことだった。


T『電線を売って現金にするからもう少し、もう少しだけ待って欲しい。』


銅は希少金属であり、価格変動はあるもののK約500〜700円で現金で買い取ってくれる。

電線の中身も銅で出来ている。


と言うと、デスクの引き出しから500円のクォカードを取り出し、全員に配り始めた。


私『とんでもない会社に入ってしまった…』


T『もう遅いから、皆んな帰りましょう』


そう言うと、みんなブツブツ何か言いながら事務所を後にした。


T『ちょっ、ちょっ、◯やん。ちょっと話しがある』


私『はぁ。何でしょう?』


T『◯やんの給料は絶対大丈夫だから、心配しなくても良いから。 確かに今、会社は金銭面では大変な直面だが、仕事は途切れず沢山依頼があるんだか、人が足りないんや。』


T『だから、頼む。協力して欲しい。俺を信じてくれ!5年、いや3年以内には立て直すから!』


私に土下座をした。


私『Tさん、土下座なんて…顔を上げてください。出来る限り協力しますから。』


T『ありがとう。遅くまですまんかった。これ持って帰ってくれ。』


そう言って私にもクオカードを差し出した。


私『そ、そんな。貰えません。』


そう言う私を制する様に無理やり私のポケットにねじ込んだ。


T『◯やん!お疲れ様!また月曜日頼むね!』


と言って帰って行った。

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