第19章 やり終い詐欺
何だかんだで3ヶ月が過ぎようとしていた。
その間、会社から何人か応援部隊と、地元の下請け業者を使い工事は8割程進み、終わりが近づいていた。
相変わらず口の悪いKと、その祖父の間で無駄な動きをさせられていた私もピークを迎える事になる。
K祖父『◯さんよ、今日はあそこに見える柱を吊ってガスでシャーとやって、ドンしたら、終いや。』
この頃になるとK祖父の言いたい事は大体理解できる様になっていた。
つまりはこうだ。鉄の柱をワイヤーでクレーンで吊り、ガスバーナーで切断した後、地上に降ろしたら今日の仕事は終わりにすると言うことだ。
私『本当すっか?やったー!頑張りましょう!』
どう考えても、昼の2時、遅くて3時には終わる! ゆっくり身体を休められる。
休憩せずに頑張り、1時30分には終わらせた。
私『K祖父さん、仕事終わりました。』
K祖父『おっ?は、早かったなぁー!よし、次はあの柱に取り掛かってくれ!』
結局、6時まで残業させられた。
この後も、何度も[やり終い詐欺]は続いた…
K『◯やーん!おーい!◯ー!』
私『おい!俺はなー、オメェらの奴隷じゃねーんだよ!だいたいよ、あんだ、てめえの口の聞き方はよ!年上に対する物の言い方おかしいやろが!クソが! 俺は今日限りで辞めてやる!』
K『………』
青くなるK…
K『◯やん。すまんかった。だ、だから、辞めるって言わないでくれ…あ、兄貴に、兄貴に…怒られてしまう…』
兄貴とは、後の社長になる次男坊のTの事だった。
私『うるさいんじゃ!ボケ!謝るくらいならはなっからやるんじゃねえよ、このダボが!』
間髪入れずに私は社長に電話をした。
社長『もしもし、◯さんですか?どうですか?島のお仕事は?』
私は今までの経緯を話した。
私『と言う事で、こんな非常識な人達と働く事はできませんので…』
社長『本当に申し訳ありませんでした。祖父の方は仕事しない時は良いおじいちゃん何ですが…あっ、Kにもキツく言い聞かせますので、どうか辞めるのを止まってくれないでしょうか?』
私『…… 無理です。』
社長『私は仕事の事に関してあまりわからないもので…と、とにかく一度、Tと話してくれませんか? その後にお決めになって下さい。 お願いします。』
私『わ、わかりました。』
私の気持ちは変わらないと思っていたが、頼み込む社長の言葉に思わずTと話す事を約束した。
恐らく、このK祖父そしてKの態度で人が続かないのだろうと思っていた。
そして、5分も経たないうちにTから着信があった。
T『◯さん、今回は辛い思いをさせてしまって本当に申し訳ない。 他にも現場があって、そこの人達は面倒見のいい人達ばかりだから違う現場で働いてみて欲しい。
そうすればウチの会社の良さがわかると思う』
私は少し悩んだ。今辞めたら、また職探し。S子にも子供達にも申し訳ない事になる。違う現場を見るのも良いかもしれないと少し考えた。
余り期待はしていなかったが、承諾した。
T『◯さん、明日迎えに行くから、とりあえず一緒に兵庫にもどりましょう。』
私『わかりました。でも、2〜3日休暇を下さい。心身ともに疲れたので…』
と言って電話を切った……
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