第16章 J一族

無事採用され、最初の仕事が鹿児島県の出張だった。


S子『いつまて出張なの?』


私『わからないけど、多分、3ヶ月…くらいかなぁ…』


S子『私、反対だな。家族が離れるのは良くないよ。』


私も離れたく無い。が、仕事を覚えれば給料は上がるのは確信があった。


何よりS子は私にそばにいて欲しいと。そして、自分はブランド物もいらないし、贅沢しなくても良いと。ただ、あなたと一緒笑って暮らしたいと…

胸に何か突き刺さる……でも、もっともっと、お金を稼いで楽させたい気持ちが優っていた。

後にこの選択が間違いだった事に気づく……



採用の連絡が来た翌日、私の会社用の書類を作るとの事で写真撮影したいと言われた。


携帯のやり取り


社長『明日の9時に面接した場所に来れますか?』


私『は、はい。大丈夫です。では明日午前9時に伺います。』


私はギリギリが嫌いなので、30分前には到着していた。

近くのコンビニでコーヒーとタバコを買い、心を落ち着かせながら一服。

10分前には社長宅の玄関前にいた。


5分前チャイムを鳴らす……


9:00チャイムを鳴らす……


9:05チャイムを鳴らす…


ガチャッ!


扉が開く…………


身長185cm位あるかなり恰幅の良い大男(例えると相撲取)髪の毛がボサボサの20代後半と思しき男性が出てきた。


大男『ごめん、ごめん!待ったー?ほな、なかにはいりーや。』


何だ?しかも、タメ口。失礼な男やな。


私『はい。宜しくお願いします。』


大男『ハイハイ。宜しくね。写真とるから、その壁に背を向けて。はいチーズ』


思った通りやばい会社だ。


大男『今日はもう帰って良いよ。』


私『えっ!こ、これだけ?』


大男『せやで。鹿児島出発は連絡するから、それまでに安全靴用意しといてな!後、革手と軍手も。はい、さよなら。』


バタン。ドアが閉まる。


もう、嫌な予感しかし無い。

普通では無い。

が、後戻り出来ない……


この大男はTといった。社長の息子で長男坊だ。その他に次男坊Ta、三男坊Kがいる。

この三兄弟はとんでもない言葉遣いでチンピラヤクザ並みだった。

と言うか、目上など関係なくオラオラで話す行為はチンピラ以下だと思う。


とんでもないとこに就職してしまった……


後悔しても仕方がない。私には受け入れるしか選択肢はなかった…


鹿児島行き当日、三男坊Kと、その祖父前社長他数名で車で行く事になった。

車にはワイヤーロープや、作業用の道具が積まれている。

南港から、車ごとフェリーで行く予定らしい。前社長が車を運転する。年齢は恐らく70歳くらいだ。


また、この運転が怖い。普通の道路なのに80km当たり前だし、途中ホームセンターによると言いホームセンターの駐車場にまともに止めない。

何と、入り口の前に、しかも面倒だからと、斜めに駐車する。


私は心の中で[ヤバイヤバイヤバイ]を繰り返すしか無かった…




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