第9章 不気味な現象
S子達の荷物はほぼ新居に持って行った。
後は私の荷物だけだ。
私『今晩は荷物の整理するから、自分のマンションに泊まるね!』
S子『わかった。こっちの片付けはもういいから、早く自分のマンションに戻って。 早く一緒に暮らせる様に片付けてらっしゃい!』
私『あ、ありがとう。』
私は1人になりたい理由があった。
それは…
私も1人の男。エロの類のものはある。それを捨てる為だった。
S子はともかく、子供達に見つかるわけには行かない。
私には神奈川に住むHと言う友達がいる。
20代の頃、沖縄のダイビングショップで勤めていた時に一緒に働いていた仲間だ。
腐れ縁と言うか、気づけば20年以上の友達だ。
そいつは無類のアダルトビデオ好きで私に沢山のエロDVDをくれた。
H『今回も良いの入ったから、あげるよ』
ってな具合に一回に2〜30枚くれる。
私も正常な男。貰わない理由はない。
私『せんきゅー!』
が、一度に2〜30枚。そんな感じで2ヶ月に一度送ってくる。
私『有難いけど、量が多すぎて見きれないから暫くいらないよ〜』
H『えっ!そうか?本当にいらないのかぁ? わかったよ。笑』
という感じで、ダンボール箱に入った未だ未開封のエロが怪しげな光を放ちつつクローゼットの隅に置いてあった。
何だか、お宝の様な感じがして捨てるに捨てられないでいた。
今考えると、ある意味、Hのエロ処分場は私だったのかもしれない…
クローゼットから、お宝の入ったダンボール箱を取り出した。
私『独身最後の夜だし、今晩は楽しむかな』
ビール、焼酎を買い込み、飲みながら処分するDVDをプレイヤーに入れ早送りで再生した。
パッと見て面白く無いのは即ゴミ箱行きだ。と言うか、ほとんど面白くない。
奴とは趣味趣向が違うからだ。
が中には自分好みもあった。気がつけば処分と言うより選別している自分がいた。
男性なら気持ちがわかると思うが、女性からしたら男ってアホやなと思う事であろう。
アルコールも程よく周り、次々とDVDを早送りして行く…
すると、なんか、今までと違う感覚に襲われた。
私『な、なんか、変だなぁ……』
ある洋物のDVDだった。
普通に再生する…………
皆さんもご存知だとおもうが、普通の映画DVDに特典映像がある場合。
例えば映画のシーンを見ながら音声だけで監督と俳優が、ここは、こうだった。
このシーンは大変だった…
とか、話してるやつあるじゃないですか!
ああ言う感じで、再生されているDVDから聞こえてくる。
ハッキリとは聞き取れない…
私『?』
エロDVDでそんな感じの映像特典。見たこともない。
私『な、何だこれ』
明らかに男性2人、女性1人の声が聞こえるが、何を言っているのかわからない。
画像も何だか変だ。
画面中央にソファーがあり、そこで黒人と白人が事をなさっているのだが…
部屋の中だったはずが、草原に変わっている。
と言うか、草原と、部屋が交互に変わると言うか…
上手く表現出来ない。
すると、画面の一番上中央から黒い線最初は3cmくらいのスジ?
私『液晶画面が壊れたのか?)
と、前のめりにテレビに近づき指で触れる。
テレビは何とも無いし、これはDVDから流れる映像だとわかる。
画面から遠ざかり全体をみる。
その黒い筋はユラユラと長さを増しながら逆三角形のように幅を広げながら黒い紐の束がユラユラと降りてくる。
私『??』
黒い紐の束のはばが安定してする画面中央幅的には10cmくらい。長さ20cmくらいの黒い紐の束がユラユラとうごめいている。
当然エロ見えない。
その間何秒かわからないが、変化が起きる。少しずつ少しずつ、紐の束が下がる。
肌色が見える。少しずつ下がる。肌色に黒い点?丸?2つ見え始める。
私『…………』
眼球がキョロキョロ…
黒い点の様なものは右左に動き…
全て明らかにわかった。
逆さになった髪の毛の長い女の人が…
画面に映し出されていたのだ!
血の気のないあの肌質。不気味にうごく眼球。
人は本当の恐怖に陥った時、こうなると体感した瞬間だった。
わーとか、ぎゃーとが叫ばない。
行動は至って冷静に、しかも身体の動きもゆっくりだ。
まず、画面から視線を逸らす…
プレイヤーの電源をオフにする。オフにする。オフに…なら、ない。
もう、画面は見れない…
冷や汗と心拍数が上がる…
血の気は引いている…
頭の中で冷静に、財布を握りしめる。
あくまで動きはスローだ。
ゆっくりと玄関に向かう…ゆっくりと…
もう、振り向けない…
玄関のドアをあける。あくまてもスローだ。
部屋の外に出た瞬間物凄い勢いでS子のもとへ走り出した。
裸足だった…
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