第8話 引っ越し

S子には兄と妹、疎遠だが姉もいた。


S子は母親と子供を含めて4人でマンションで暮らしていた。


兄、妹、姉はそれぞれ独立していて、車で1時間圏内に住んでいる。


S子は私に対して積極的だった。


まず、一緒に暮らしている母親に私を紹介した。


離婚して何年も会っていない父親に連絡を取り紹介した。


私は思った。何故?こんな私と結婚したいのか?何故?


でも……


運命を感じさせる様な偶然がそこにはあった。


私が母親を失った年齢が9歳になる時。


彼女の息子も9歳になる年。


姉と私の2人姉弟。


彼女の子供も姉、弟の2人姉弟。…


そして、決定的だったのは、S子の名前が、

母の名前とほぼ同じだった事だ。

ほぼ同じとは、一文字だけ彼女のほうが多いだけである。


運命だと感じた…


S子『とりあえず、アパートを借りて同棲しましょう』


私は、S子の事は好きだが一番は子供達が気がかりだった。


子供達がわたしを受け入れない限りは結婚は難しいと…


同棲する事は、恐らく良い事だと思った。


結婚するかしないかは、同棲して子供達が決めてくれたら良いと思ったからだ。


私『わかった。同棲しよう。でも、お金がないから少し待って欲しい』


S子『私、貯金あるから大丈夫よ!』


私『全部出してもらうのは……しかも、俺、給料少ないし…』


S子『あなたがお給料安くても2人で働くから大丈夫よ!何とかなるって!』


かなり前向きなS子だった。


同棲から一気に結婚まで持って行くのはミエミエだったが、付き合いが長かろうが短かろうが結婚はタイミングなのかとも感じていた。


私の気持ちも結婚を考えていたのは言うまでも無い。


私『わかった。同棲しよう!』


S子『早速家探しね!今週末とかどう?』


行動力が凄いS子に押される形でどんどん話が進んで行った。


腰の重い私には丁度良かったし、明るくポジティブな感じは、益々私の心を掴んで行った。


無事アパートも決まり、引っ越しをする事になった。


私は早速一人暮らしのマンションの荷物をまとめ始めた。


レンタルでトラックを借りて先ずはS子のマンションへ荷物を取りにいった。


S子のマンションは4LDKだが、母親は1人でここに住むのは広すぎる気がしていた。


私『お母さんは、ここで1人で住むの?』


S子『そうよ。何で?』


私『何となく…寂しいんじゃ無いかと…』


S子『何言ってんのよ。私たちのアパートから歩いて行ける距離じゃない。』


私『そっか!』


と、妙に納得してしまったが、彼女と母親との間に確執がある事をこの時は知らなかった。

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