第5章 それぞれの道
そんな楽しい時もやがて終わる事となった。
Tはバスの運転手になると言って会社を辞め他にも仲の良かった関西出身のFも辞めて地元の尼崎に帰ると言った。
私『関西は仕事あるのかなぁ…』
F『沖縄に比べたら沢山あるよ!』
関東程ではないがお給料も沖縄より良いと聞き、経済的に苦しかったのもあり私も尼崎に行く事に決めた。
せっかく沖縄に帰って来たのに…でも、このままでは旅行にも行けないし貯金も出来ない…日本一賃金の安い沖縄では1人で生きて行くのはとても困難な事でもあった。
と言う訳でFと共に尼崎に向かった。
尼崎では、Fの友達がアパートを用意してくれていた。 と言うか、また貸しだったのだが…
しかもワンルームにオッサン2人の奇妙な共同生活が始まった。
まずは職探しだ。2人共手元のお金が寂しく、自炊しながら節約の日々が続いた。
とりあえず何でも良いと言う事で地元の求人雑誌を見まくった。
Fはと言うと慎重に探していたが、私としてはお金に余裕がないので焦っていた。
そして、とあるビルメンテナンスの会社に雇われることになった。
ビルメンと言っても、廊下や窓掃除がメインであったが生活が落ち着くまでと働く事にした。
Fはなかなか職が決まらずにいた。
私『何でも良いから、なんかアルバイトかなんかやらないと…来月家賃とか…』
F 『………』
Fはお金の管理が苦手と言う事で私がお金を預かっていた。
と言ってもお金のトラブルは嫌なので押入れの奥に隠していたが、『来月支払いの分はいくらで此処に置いてあるから使わないように』とFに言ってあった。
因みに何故銀行に預けなかったからと言うと、関西圏の口座を持っていなかったからだ。
家賃など光熱費の支払いが近づいた時、押入れの奥から現金を取り出し確認する。
あるはずの金額が1万円足りない……
私『F…よ、お、お金足りないんだけど…』
F 『えっ⁉︎ お、俺は盗ってないし、知らんよ』
私『………』
彼が嘘を付いているのは明らかだった。
お金を盗った事より嘘をついた事が悲しかった。
これ以上一緒に生活するのは難しいと考え、会社に借金してワンルームマンションを借りる事にした。
あっという間に1年の時が過ぎ、取り敢えず生活の為に始めたビルメンの仕事だったがいつの間にか主任と言う肩書きが付いていた……
生活が落ち着くとよく外食に出かける様になった。
関西は粉物文化が優れていて、皆さんご存知だと思うが、たこ焼き、お好み焼きなどめちゃめちゃ美味い😋
週末になると近所の鉄板焼き屋に通う様になった。 その鉄板焼き屋は珍しく女性2人で切り盛りしていた。
Aちゃん、Bちゃんとしておく。
Aちゃん『いらっしゃい!いつものビールと、今日は何食べる?』
私『ぼっかけ〜』
ぼっかけとは、牛すじとこんにゃくを甘辛く煮込んだ料理で、地域によってさまざまな食べ方や味付けがあります。
兵庫県神戸市長田区のご当地グルメで牛すじとこんにゃくを醤油やみりんなどで煮込んだ料理で、うどんにかける、酒のつまみにするなどして親しまれています。戦後の食料不足の折、捨てられていた牛すじを美味しく食べられるように考えられた料理です。
馴染みのお店も出来、暫くは気ままなオッサンの1人暮らしを満喫していた。
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