第4章 釣り

ある日同僚のMが釣りに行かないか?と誘って来た。MはTの後輩で、Tの舎弟のような関係性だった。

TとMは昔空港で働いていた。フォークリフトに乗って資材など運ぶ仕事だ。

Tはかなりフォークリフトの技術が高く、Mはいつも仕事の面で負けていた。


M『今度こそTに勝つ!』


と、ライバル心を燃やしているのだった。

が一度も勝つ事が出来ず今に至っていた。


T『Mよ、なぁ、お前に越えられない壁は俺なんだよ!』


とTは言っていた。その、クール感漂うセリフに爆笑してしまった。

いくらクールに決めても、サマー○の三○さんにそつくりだからである。


因みに私は本物のサマー○の三○さん大○さん大好きです。

○○かよ!とか、悲しいダジャレ最高です!


話が脱線してしまったが、とにかくMに釣りに誘われた。Mは釣りが大好きで腕前も凄かった。釣り雑誌にも釣った獲物共に写真が掲載されるほどだ!


私もTも遊びでしか釣りはやった事がなかった。場所はヤンバルの防波堤だと言う。ヤンバルとは、沖縄本当北部周辺のことを指し那覇から約2時間くらいの場所である。

明け方に釣れると言う事で夕方出発し車で一泊しようと言う事になった。


Tはアウトドアと言う感じではないが、後輩が誘った事と私も行くと言うので参加した様だった。


M『到着しました。とりあえず、近くの漁港でイカを釣って酒の肴にしましょう!』


と、粋な事を言った。それだけ腕に自信があるのだろう。

早速釣りの準備に取り掛かる。と言っても私とTはビールで乾杯していた。


T『えー、Mよ。早く美味いイカ食わせろ!』


Tがジャイアンに変身した瞬間だった。

ニヤリと笑うM。


M『任せてください。』


仕事では勝てないが、釣りなら俺とばかりに港の海に釣り竿を垂らした。

10分もしないうちに小ぶりのイカ2匹吊り上げた!


私『すげ〜さすがMやな〜釣り立て美味そう!』


T『問題は味だろ!』


まぁぁ褒めない男である。でも、嬉しそうだ!

私達はイカとビールを堪能し、明け方まで仮眠する事にした。


AM4:00…


皆んな起きて!釣り行きますよ!

とMの大声で目を覚ました。声の大きさにTも私も少し不機嫌になったが準備を始める事にした。


それぞれ分担して荷物を持ち防波堤を目覚した。

が、普通の防波堤ではない。陸地から約100メートルほと離れた沖合にそれはあった。と言っても石が敷き詰められているので歩いていけるのだが、石もガタガタでかなり足下が悪い。

かつ、重い荷物を持っているのでなかなか辿り着かない。

Tはかなり息を切らしていた。


T『えー!Mよ!まだ着かないのか?もうここで良いだろ!』


M『こんなところで何も釣れないっすよ。もう少しだから、頑張って』


私もMもへこたれそうだったが、何とか目的地の防波堤にたどり着いた。


防波堤の外側はかなりの沖合と言う感じで深場になっている。


M『防波堤の外側は大物が釣れるので私は此処で釣ります。 Tさん達は内側で釣って下さい。ここはグルクンがけっこう釣れます!』


初心者の私とTはグルクンを釣る事になった。

Mの言うとおりグルクンは入れ食いだった!やはり、釣れると楽しい。

釣れたグルクンは網に入れ海に沈めていた。簡易生簀だ。


私『グルクンの刺身に、唐揚げ!煮付けも良いんじゃない❤️』


T『良いんじゃない〜』


2人ともテンション上がっていた。

1時間くらいで結構な数を釣り上げたが、日が登るとともに釣れなくなってきた。


私『疲れたから少し休むわ』


T『俺も休む。ビール飲むか?』


Mはまだ頑張ると言って釣りに集中していた。

私達は、ビールを飲むと疲れで少し寝た。

暫くして…


M『おーい!おーい!釣れたー!早く、早く、手伝って〜』


とMの大声に目を覚ました。


急いでMの所に行く。かなり竿がしなっていた。

海面を見ると巨大な魚影が見え隠れしている!


私『やっべ〜超大物やん!どうすれば…』


M『早く、は、早く、タ、タモ、早く〜』


タモとはヒットした魚を掬い上げる網である。見た目は虫取りの網みたいな大きなやつである。


30分格闘した後、タモて掬い取り釣り上げた!

体長1.5メートルくらいの磯マグロだった!


私『すげ〜』


T『すっさー!』


すっさーとは沖縄の方言で(やるな!good job!)の意味である。


磯マグロより、Tが褒めた事に少し驚いた。


磯マグロとは、スズキ目・サバ科に分類される魚の一種でマグロと名がついているがマグロとは別物である。

食べ方は、刺身、フライ何でもいけるが、油が少なくあっさりと淡白な味なのでムニエルなどが美味しく頂ける。


私『今日は大漁だなぁ!』


T『Mの家でシーフードパーティーだな。』


M『OKですよー!さぁ、帰る準備しましょう。』


私達は帰る準備を始めた。グルクンは鮮度を保つため最後に引き揚げる事にした。


私『あれ?なんか…グルクン少ないよな…』


T『本当だなぁ。網破れてるのか?』


そんな様子をニヤニヤと笑いながらMが言った。


M『お二人様。私の為に生き餌を捕って下さりありがとうごさいました!』


とニヤニヤしながら丁寧に言った。


そう、私とTはMが大物を釣るための活き餌を取りに連れて来させられたのだった。 私とTは釣りも堪能出来たし数が少なくなったグルクンとはいえ3人では食べきれない量なので特に何も思わなかった。


Mは少し怪訝な表情を浮かべていた。

彼からすれば悔しがるTを見たかったからだ。またしてもTには敵わないMだった。

やはりMに越えられない壁はTなのかもしれない…

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