第2章 うーまくーオジサン

[うーまくー]とは沖縄の方言でやんちや、わんぱく、聞かん坊の意味がある。

通常小さな子供に使う言葉である。


姉夫婦は勿論、義理の兄の両親や親戚に助けてもらいなが、何とかレンタカー屋さんで就職する事が出来た。

やはり沖縄は給料が少ない。残業しまくっても手取り20万を切っていたが、東京と比べてやはり皆暖かい。

誤解のないよう言っておく。東京の悪口では無い。東京は色んな地方からの集まりなので他人との距離感があるが、それは仕方のない事だと思う。

東京でも下町(千住、小菅)は人情に熱くとても好きな地域である。


そんなこんなで、職場にも馴染んできた頃Tと言う奴と知り合いになった。

スタッフの多いレンタカーなので話した事も無い人もいる。

Tはそんな中の1人だ。たまたま洗車作業が隣り同士になったのだ。

いつも気難しい顔していたので話しにくかったが、いざ喋ると面白く良いやつだった。 しかも同じ年と言う事でますます親近感が沸いた。


Tは間違った事が嫌いで真面目な男だか、人を注意したり、叱ったりする時かなりチンピラヤクザ並に相手を詰めてしまう所がある。

周りの若い子達からは怒らせるとヤバイ奴ともっぱら噂だった。


そんなTだったが、お互い気があいよく2人で飲みに行ったりした。


T『たまには、若い奴らも誘って飲みに行こうか。』


私『良いね!勿論カラオケもな、な、行こうぜ!』


T『本当にお前はカラオケ好きだなぁ。OK!』


私はお酒を飲むと歌が歌いたくてしょうが無くなる酔っ払いシンガーだ。

そんな俺の歌を嫌がる事なく聞いてくれるTだったが、むしろ俺の歌が好きな感じもあった。

休日はシフト制だつたが、Tの都合の良いところで行く事になった。


当日…

若い子3人と私達計5人で行く事になった。

お決まりのスタートは居酒屋だ。

私は久しぶりの仲間たちで楽しむ沖縄なのでテンション高めだった。

勿論、グルクンの唐揚げは外せない!

県外に出た事のない人はあまりわからない事だと思うが、昔以上にグルクンに執着があった。

シェアなんかしたくない!1人で平らげる。


T『全部1人で食べるのか〜?お、俺も一口食べたかった…』


と寂しげにTは言った。

これが若い子だったら、死ぬほど詰められていたことであろう。


私『ごめんな。もうひとつグルクン頼む?』


T『いらんよ。頼んでも、もう食べん。』


と、少し駄々っ子の様にいった。

彼は本当に一口だけ欲しかったのだ。

うーまくーである。差し詰め私は隠れうーまーくーだった。

因みに、前にも書いたと思うが沖縄の居酒屋に行けば必ず食べられます!グルクンのか.ら.あ.げ❤️


宴も酣私達は2次会のカラオケに行く事になった。

カラオケでも、散々飲み食いし、いよいよお会計となった。

すると若い子が、言った。


『金額おかしいです。少し高くありません?』


T『だー見せてみー!』


私も確認したが明らか20%位ぼったくっている。

相手は酔っ払いだと舐められているに違いない。

Tの逆鱗に触れた。


T『責任者は誰かぁ!今すぐ呼んでこい!』


待ってましたとばかりに叫んでいた。

そして、少し離れた所で責任者と思しき人に詰め寄るT。

私からしたらもはやお家芸でしかない。


私『また始まったか…普通に交渉出来ないもんかね。』


暫く待っていると、激しい罵声が聞こえ始める。

さらにヒートアップした声が轟く。

酔っていた私は、


私『ま、まさか…ぼ、暴力…』


勘違いしていた。私の変な正義感。

滅多にキレない私がキレていた。


私『おい、くぉらぁー!お前ら、ええ加減にせーよ!』


と2人の所までオラオラで近づいて行った。


Tと、責任者は手を取り合い私をガン見して少し震えていた。

責任者『Tさん…本当にすいませんでした。あ、あのひ、人…た、助けてく、下さい』


Tもまた、怯えた様に私を見ながら


T『あ、あー大丈夫、で、す…』


と、明らかに私は場違いのキレかただった様だ。

酔っ払いとはそんなもんである。

因みに私は酒乱が嫌いである。

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