それでも私は生きている。それでも私は生きて行く。 エピソード2

天野 みろく

第1章 人生の迷い

狐事件からすっかりダイバー職から遠ざかっていた。

こんなはずじゃなかった。本当は、南の島でリゾートダイバーをやっていたかった。

金が稼げるからと無理をしていた。

いくら海の仕事でも好きな仕事では無いとどっかでストレスになり、結局は辞めてしまうことになるのに…


私は何故か中学生時代の事を思い出していた。

夏の学校の帰り道友達とスーパーで20円のチュウチュウを買いスーパーの前のベンチに座って涼んで帰るという事を良くやっていた。

土曜日になるとスーパーの出口付近に占い師がいる。

特に気にしていなかったが、誰1人として占っている姿を見た事がなかった。


占い師『おーい!君たち。』


私『は?俺たちっすか?』


占い師『そうそう。良かったら占ってあげるよ。勿論、お金はいらないからさ、どう?』


よっぽど暇だったんだろう。タダならと私達は占ってもらう事にした。


先に友達を占った。当たり障りのない答えに余り面白くない。 例えば、高校卒業してサラリーマンになるとか…

占わなくても良い様な答えが帰ってきたり…

今考えると、私達が若いのであまり不安を煽る事もいえなかったんだと思う。

そして私の番である。


占い師『うん?う〜ん…そ、そうだなぁ…』


言葉を選んでいる様だった。


私『あまり、良くないのですか?』


占い師『…そんな事は無いよ。ただ…君は女難の相が出てるから女性に気をつけなけばいけないね。』


中1の私に言っても全然ピンとこない。

それから、故郷とは縁が薄いとか…

今考えるとあの占い師は私の波乱な未来が見えていたのかもしれない…


ダイバーを辞めて色々アルバイトをやった。配管工や、車の工場、バーの店長などなど…行く先々で気に入られ、社員になって欲しいと頼まれた。

それを言われる度に何か、悪い気がして辞めてしまう。

ずっと何か……心の中のモヤモヤが取れずにいた…

もう、30歳を過ぎていた。


私『沖縄に帰るなら今が最後のチャンスなのかもしれない。』


そう思う様になっていた。

もうお金ではないと精神的な安らぎを求めていた。

姉に電話した…


私『俺さ、沖縄に帰ろうと思う。でも、貯金も無いし。少し貯めたら…』


姉は物凄く喜んでくれた。こんな駄目な弟でも姉にとってはたった1人の身内だからだと思う。


姉『今すぐ帰っておいで。大丈夫!何とかなるよ。』


涙が止まらなかった…


仕事が落ち着くまで姉夫婦の家にお世話になる事になった。

姉夫婦には、3人の子供がいる。

みんな良い子たちだ。それよりも、俺を受け入れてくれた義理の兄に感謝してもしきれなかった…

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