鞄の中の島

小高い丘

「ああ、君か。こんにちは」

「今日は星空くんと一緒ではない? 珍しいですね。本官がここへ来てから見かけるたびに、君達はずっと二人でいたように思いますが」

「本官は」

「単なる休憩です。辻のお婆さん宅へ一緒に荷物を運んだ帰りでして。よく冷えたラムネを持たされたから、眺めの良いこの丘で一休みという訳ですな」

「うん?」

「はは、いや、失礼。別に終始、海の方を監視している訳ではない。当然ですが」

「この孤島には小さいながら港もある。よく整備されているし、船の出入りもある、ように見える」

「……なのにどうして、いいや、見落としているだけだとは思うんですが」

「本官は今まで、外の土地から誰かが正に訪れた場面を、一度も見たことがないんですよ」

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