第4話 リウムとリア
流転暦4億年の七月六日。いつも通りの学校生活を終えて、アニマニウム製の移動用ドローンでリウムとリアは帰路につこうとしていた。
一つの子供部屋をそのまま抽出したような大きさの黒色の直方体の機械に迎えられる。
「いつも思うんだけどさ、なんでアニマニウム製のものって白黒どちらかなの? 青とか憧れない? それに直方体って可愛くないよね?」
黒いドローンに少し不満であったリウムは、白い校舎を指差して、リアに疑問をこぼした。
「お姉ちゃん授業寝てたでしょ。移動するものは黒で、固定するものは白。直方体なのは待機用の形態で、移動時は変化するって先生ちゃんと言ってたよ」
「そ、そうだっけ〜?」とリウムは初めて聞いた感を出すが、
「初見感出さない。お姉ちゃんはわかりやすいんだから。……前みたいに口笛吹こうとしてたら怒ってたかも」とリアに叱られる。
「リアごめ〜ん」とリウムは対し、リアに抱きついてスリスリする。
「分かったって。もう、お姉ちゃんは元気良すぎなんだから」
二人はそんな他愛のない会話をしながらドローンの前に行く。そうするとドア部分が蒸発のような現象:熱量吸収が起こり、中に入れるようになる。
「こうやってドアが開くのもさ、シツリョウホゾンソク?となんか違くない?」
「それは大学院で習う範囲らしいよ。先生が言ってたね」
ドローンの内部は机と椅子とベッドが左右対称に並べられている。ドローンはこのまま家の中に入り、家の一部になる。つまり、本当に子供部屋なのだ。
「勉強ってつーまーらーなーい」といってリウムはベッドにダイブする。
「お姉ちゃんはバスケ選手になるんだから良いじゃん」
リウムは勉強が苦手である。先ほど遺伝子改善にて容姿は悪いことがなくなったと述べたが、逆にいうと容姿以外は遺伝子に手をつけていない。理由は様々あるが、多様性の問題と生物として生きる上で容姿は関係ないことが決め手である。
「バスケも頭良くないとダメなんだって」
「でも、お姉ちゃんは圧倒するほど強いんでしょ?」
リウムのバスケは完全に才能の塊のようなプレイだ。ボールを掴んだら、ドリブルでごぼう抜きして、レイアップにて点を決める。
「結局囲まれたらどうしようもないんだよね!」
「そう言って4人囲まれた状態から抜け出して、最後の相手からボール奪ってたよね。あれは酷かったな」
「流石、私!」
「監督呆れ返ってたよ。うん。僕にもその気持ちわかる」
「なんかひどいこと言った?」
「そんなことよりもさ」
「そんなことよりも⁉︎」
「明日あの大田舎からうちの学校に転入するらしいよ。お姉ちゃんと同い年だって噂だよ」
あの大田舎とは、マルクトの自然の残っている場所に存在するらしい集落のことである。
「なにそれ聞いてない!」
「僕も今日知ったんだよね。なんか急に決まったことらしいよ」
「仲良くなれるかな?」
「お姉ちゃんに仲良くなれない人なんていないでしょ?」
「この可愛いやつめ〜」と言ってリウムはまたスリスリを開始する。
「お姉ちゃん……くるしい……」
『目的地に到着しました』
ドローンの通知音によって子供のじゃれあいは終わってしまった。
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