第3話 リウムの誕生と未来での生活

 そのマルクトで新たなる生命が誕生する。その名もリウム。

 父は135歳、母は92歳だ。どうやら古代では歳の差婚というらしいが、この時代ではそんなことはない。

 13歳までが未成年であり、14歳からは成人となる。ここまでは少しだけ早くなった程度かもしれないが、これからが大きく違う。大体600歳後半までが労働力人口と呼ばれる。所謂お年寄りは700歳以降の年齢者のことを言う。

 そう考えるなら43歳なぞ誤差だといえよう。

 その一年後に弟が生まれる。名前はリア。

 リウムもリアも容姿には恵まれていた。生まれた頃の赤ちゃんの時代の可愛げは言うべくもなく、六歳までいけば誰しもが愛おしさで二度見してしまうほどである。

 リウムは母似であり茶髪のポニーテール、リアは父似であり黒髪のショートヘアを好んでいる。父同様リアは美少年すぎて兄弟ではなく姉妹と見られることも多々あった。

 そもそも遥か昔に行われた遺伝子改革によって、容姿に関しては誰しも整った状態で生まれることが確定している。その中でも秀でているのがこの兄弟であった。

 未来での生活はここまで非常識ばかりを見せてきたが、それ以外は古代とそう変わらない。

 朝は一緒に雑談し、昼の間に兄弟は学校に行き、その間に両親は働いて、夕食を共にする。

 人間の成長には、人間とのコミュニケーションが必要不可欠だ。それはデータとして脳に植え付けてどうこうなるものではない。最初に子供の中の社会で育まれていくものである。教育の速度は上昇すれど、精神性はゆっくりと育てていくものなのだ。

 これは大人とて相違ない。成人すれば、それで完璧な人間になるかと言われたら、そんなことはない。多くの経験を重ねて、本人の望む人生を旅していく。

 これは働く理由になる。当然の如くこの時代では人間が働く必要自体はない。前述の通り、必要なものは揃っているためである。AIで社会を回すのに過不足はない。

 では何故に働くのか。それはなりたい自分になるためである。たくさんの人と友達になりたい。もっと綺麗になりたい。どんな人からも尊敬されたい。そのために人間は働くのだ。

 例えば、リウムの母は美容師、父は科学者である。

 古代では美容師とは髪の専門の仕事であるが、未来ではメイクやコーディネートまで担当する。その名の通り、美容の師匠である。メイク時の会話を楽しませ、流行りを体験させ、美容の限りを尽くさせる。そうとて、メイク自体は機械が担当するのではあるが。しかしながら、会話の楽しさや流行りを作るのは人間でしか行えない。故にこの時代でも美容師は形態を変えて存在し続けたのだ。

 また、科学者も必要である。人間は肉体までは解き明かした。しかしながら、精神や魂を完全に理解しているわけではない。未だ理解不能な世界を探求するために、科学者という仕事はこの時代でも存在している。人に備わった好奇心はこの時代においても影響力は大きい。

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