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  ◆


 ・・・顔つきが変わったな。


 鼻から若干ズレ落ちて少し上の視界が歪んだ駐在所の景色の真ん中で、視界に捉えている精悍な顔立ちの青年が、先程のおろおろとした口元をキュッと引き締め、例の写真を見つめながら、これから出す言葉を一生懸命組み立てているのだという事は、想像するに容易だった。


 一体、彼の中にはどんな感情があるのだろうか。


 自分も今朝連絡を受けて、暇とも忙しいとも言えない退屈な職場を一目散に飛び出して来たのだ。正直、この年齢の身体にはかなり鞭打っての弾丸出張。唯一の救いは、出張先が馴染み深い元勤務地だった事くらい。しかし、それでも、自分はここに来たいと心から思ったし、こうして人生の岐路に思いがけず直面している青年を見届ける事が出来ている。


 この佐藤という男はその目で見てしまった、「国盗り」を。


 最早無知では済まされない。今日本各地に点在する多くの職員たちがどれだけ長い時間をかけてこの使命に従事していても一生見れないことが殆どの、一大事件を。その目で見てしまったのだから。

 しかもそれだけじゃない。いや、コレに巻き込まれてしまった人にとっては仕方のない事なのかもしれないが・・・。


 きっとこの男は、目撃している。俺たちが喉から手が出るほど欲していた情報を・・・。


 「・・・鈴さん。・・・じゃあ、やっぱりあれは・・・あの姿と、”刀”は・・・。」


 「ビンゴだ!!田中さん!」

 「あぁ。やっとだね、安倍君。」

 「佐藤くん!気持ちは固まったかい!やっと、何の回り道もせず、俺たちの事、そしてこれからを、説明しても、大丈夫かい!」


 青年が、ゆっくりと顔を上げた。

 もう、先程の新米警官の顔は消え去っている。

 今俺たちの目の前にいるのは、誰でもない。

 これから一緒に困難に立ち向かう事になる。大事な仲間の出で立ちだ。


 「はい。お願いします。僕は、彼女の事、そしてこの場所の事を、きちんと知りたい。」






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九三郎(ここのつ さぶろう)

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テーマ『田舎の幼馴染が人外で、自分以外の全員がそれを知っていた小説』 - 九三郎(ここのつ さぶろう)の小説

テーマ『田舎の幼馴染が人外で、自分以外の全員がそれを知っていた小説』

九三郎(ここのつ さぶろう)

145,547文字4時間51分

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オリジナルホラー小説完結恋愛ファンタジーホラー幼馴染異種間恋愛サスペンス

以前ネット上の知り合いと「田舎の幼馴染が人外で、自分だけがそれを知らなかったって設定の作品が読んでみたいね」みたいな会話があったので、自分も読んでみたかったので書きました。3文字でもいいので感想、批評、酷評、なんでも頂けるととても嬉しいです。是非気の合うお友達などがいましたらお勧めなどして頂いて、一人でも沢山の方に読んで貰える事が、自分にとって最高の喜びです。

アシッド・ダイバー - 九三郎(ここのつ さぶろう)の小説

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