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少し金具が錆びていた閂は簡単には外れなかったが、流石の大人二人の力には敵わず、ゴリゴリと音を立てながら外すことができた。小さい割に頑丈な閂だった。
「僕は構えてます。」
佐藤巡査が引き抜いた拳銃をガッチリと両手に包み、自分の斜め後ろで身構えてくれている。
「開けます。」
観音開きの祠を両手で恐る恐る開いた。
閂の重さに対して扉の板はあまりに軽く、自分たちの荘厳な雰囲気に対してはいささか間抜けなほど簡素な作りだった。
祠の中には、”穴”があった。
「うわ。」
「なんだこれ。」
穴は、単に祠の中で土を掘った跡があるという訳ではない。祠の中身そのものが、ぽっかりと現実世界から空間をくり貫いてしまったかのように、形容しがたい虚空そのものが祠の中に広がっていたのだ。
「どう、なってるんだこれ・・・。」
「・・・行きましょう。多分、この中に鈴ねぇと蛇がいる。」
「行く・・・入る・・・?全く想像がつかない。」
祠の内側に広がる虚空に手を伸ばした。
一瞬だった。
一瞬、自分が立っていた地面がポカンと消えて、掴める物もないまま重力に任せて身体が自由落下する感覚を覚えた。
空間認識能力を喪失したのか、それとも本当に床が無くなったのかは分からなかった。何もかも分からない。
そして、分かろうとする間もなく、自分達はまた突然現れた地面に足を付けていたのだから。
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