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  ◆


 「貴様ァ!!私を愚弄したなァ!許せぬ!!ただでは済まさぬぞ!貴様のハラワタを生きたまま全て引き擦り出し鳥虫に食わせた上でその心臓に毒を流し込み、貴様が声を上げられる最後の一瞬まで苦しみ抜いて呑み殺してやる!」


 その瞬間、居間の四方の鈴がけたたましく鳴り響き、柱がミシミシと音を立てながら、何か物凄く太い綱のようなものに部屋ごと締め上げられていくような感覚を覚えた。

 地鳴りのような音を立てながら震える居間の真ん中で、状況が飲み込めずあたふたと周りを見渡していると、自分の腕の中でにゃおんと怯えながら鳴きかけて来たクロの存在を思い出す。ゾッとして見下ろすと、やはりそこには怖がってどうすればいいのか分からずにこちらを見上げているクロがいた。

 直後、男の声がした襖が、封印を引きちぎられたかのように勢いよくバンと開いた。

 襖の奥の果てしない漆黒の世界の真ん中で、見た事も無い大きさの白い大蛇がグルグルと蠢いている。その光景の真ん中で、巨大な牙を剥き出しにした大きな頭が真っ直ぐこちらを見つめていた。


 『許さぬ。』


 大蛇の口から漏れる声は、そのままが心臓を鷲掴みにしてくるような恐怖感だった。きっと蛇に睨まれた小鳥はこんな気分なんだろうと一瞬のうちに理解できてしまうほどに大蛇は遠巻きに見ても巨大で、それにやはり、この距離でも確信できるほどに、真球の白い目で真っ直ぐこちらを睨みつけていた。


 無意識のうちに、軽く抱いていた手がクロを撫でていた。自分のせいでクロまで危険に晒されている事に申し訳なさが押し寄せ、ゴメンと呟きながらクロの頭を撫でていた。

 そんな時だった。

 不意に黒の首に首輪のようなものが巻き付いている事に気付いて、それを恐る恐る摘まみ上げてみる。首輪だと思っていた物がすぐに解けて自分の手の中に落ちてきた。

 手の中にあるそれを見る。

 それは真っ赤なしめ縄の先に金色に輝く鈴が結ばれた、祖母のお守りと同じ形のお守りだった。

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