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玄関に入ろうという時に、鈴ねぇがパッと自分から離れた。流石に家族の前でイチャイチャするのは恥ずかしかったようで、玄関から入らずに庭の方から回って行ってしまった。昔から少し不思議で気まぐれな行動をとる事も多い人だとは思っていたが、彼女の正体が神様なのだと分かった今となっては、もう気にもならない事だった。それどころか、今は少し、そうした事にも胸を張れるような気がする。
玄関をくぐって「ただいま」と廊下に声をかけたけれど、相変わらずの広さのこの家の中はイヤにシンとした静けさが漂っている。
「なんか帰って来てから素っ気なくないか?」
確かにそこそこ広い家だし、風呂に入ったり昼寝をしたりしているのかもしれないと思うことにして、そのまま部屋に上がる。とはいえ、そそくさと部屋に上がるのは他でもない自分の為だ。流石に連日の夏の暑さには身体が堪えるようで、なんだか頭がフラフラしたり、凄くお腹が空いたりする感覚が増えてきた。
部屋に入るや否や、疲労で重くなった身体が意思など無視してベッドに倒れ込んだ。
「ちょっと暴れすぎたかなぁ・・・。夕食は・・・。まぁいいや・・・。」
最早岩のように重たくなった瞼が勝手に落ちていく。切れ間の視界に見えるのは、冷たい青色の影を補色に晒す平たい雲と、いい加減山の向こうに隠れようとする太陽の残す茜色と夜の紺が見せるグラデーションの空だった。
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