19

  ◆


 「ほら早く!湯冷めしちゃう!」

 「あのさぁ、いつの間に一緒に」

 「ほら早く!」

 「もう。それ僕の布団なんだけど。」

 「・・・いやだ?」

 「ちょっとスペース開けて。」

 「うん。」

 わざわざシングルサイズの布団になんで2人で寝なきゃいけないのか。絶対に夜のうちに奪い合いになるだけなのに。

 「寝相で蹴飛ばさないでね。」

 「そっちこそ。」

 カーテンを閉め忘れたせいで月明かりが部屋に射しこんでくる。布団に落ちた白い影を中に送り込むように掛け布団を少し持ち上げると、明かりの無い部屋の中よりもさらに深い闇の中で、ゴソゴソと蠢いている身体の感触が腹の辺りを押している。


 「そういえば、鈴ねぇって普段どこで寝てるの?」

 「ん?・・・あぁ、それは、えっと・・・色々。」

 「色々・・・か。クロと一緒に寝てる?」

 「ううん。」

 「そうなんだ。」

 「でも、良い場所が見つかったかもしれない。」

 「毎日これは暑苦しくて嫌だよ。」

 「でも、人肌の温かみって気持ち良くない?」

 「それは、そうとも言えるけど、だって今夏だぜ?」

 「まぁ、そっか。」

 窓枠の中にすら満天の星。視線を戻せば目の前には輝く2つの星。

 「鈴ねぇの目が光って見える。」

 「月明かりを反射してるからかも。」

 「うん。」

 「もう寝る?」

 「もう寝る。なんか凄い疲れてる。」

 「・・・おやすみ、翔ちゃん。」

 「うん。おやすみ、鈴ねえ。」

 目を閉じると、体にしがみついている鈴ねぇの感触がより一層実感を増していく。なんだか今日はずっと鈴ねぇとくっ付いている。鬱陶しいけど、心地よくもある。だって、ずっとこうしていたかっ


  ◆


 「翔ちゃんまだ起きてる?」

 「・・・嘘ついてない?」

 「・・・ホントに寝てる?」

 「・・・翔太。」


 「おやすみ。」

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