第12話

第12話: 王の最期と選択


**王の寝室へと急ぐ**


サイルは、王の寝室へ向かうために宮廷の廊下を急いでいた。王の容態が急変したとの知らせに、王都は一気に緊張感に包まれていた。王が亡くなれば、王国全体に波紋が広がり、次なる王位継承を巡って混乱が起きるのは確実だった。


『サイル様、王の崩御が近い今、ロドルフ伯爵が王位継承を巡って動き始める可能性が極めて高いです。彼が推す「傀儡候補」の詳細が不明なうちに、私たちも動く準備をする必要があります』


「わかっている。まずは、王の最期に立ち会い、状況を見極める。それが今の最優先だ」


サイルはAIの冷静な分析を聞きながら、王の寝室に急いだ。王が最後に誰を後継者に選ぶのか、それがこの先の王国の運命を大きく左右する。王位継承を巡る陰謀が渦巻く中、サイルにとって王の最期の言葉が重要な手掛かりとなる可能性があった。


**王の寝室にて**


王の寝室に辿り着くと、そこにはすでに多くの貴族や王族が集まっていた。部屋の中央には、病床に伏す王が静かに横たわり、その側には王の息子である**レオナード王子**が立っていた。彼の目には深い悲しみが宿っていたが、同時に未来を見据えた決意が感じられた。


「レオナード王子……」


サイルは王子に一礼し、王の方へと視線を移した。王は顔に疲労を浮かべながらも、かすかに目を開け、周囲に集まった人々を見回していた。


「……我が時が近いことは、わかっている」


王のかすれた声が部屋に響いた。彼の体は衰弱しているが、その目にはまだ王としての責任が宿っている。サイルはその言葉に耳を傾けながら、王の最期の瞬間に何が起こるのかを見守っていた。


「この王国を……守り、導く者が、私の後に続くことを願っている」


王はそう言って、息子であるレオナード王子に目を向けた。王子はその視線を真っ直ぐに受け止め、父の意思を引き継ぐ覚悟が滲んでいた。


『サイル様、王は明確にレオナード王子を次の王として選ぶ意向を示しています。これで、ロドルフ伯爵が推す傀儡候補の計画に大きな障害が生じるでしょう』


サイルはAIの分析に耳を傾けながら、王子の立場に注目した。レオナード王子が次の王に選ばれることで、少なくとも血筋的には正統な王位継承が進む。しかし、ロドルフ伯爵がこのまま大人しく引き下がるとは考えにくい。


「レオナード王子、どうか王国の未来をお守りください」


サイルは王子に対して静かに頭を下げ、王の最期の時が迫るのを見守った。部屋には深い静寂が流れ、誰もが王の崩御を目前に感じていた。


**王の最期の言葉**


王は弱々しくも、もう一度口を開いた。


「レオナード……この国を頼むぞ。お前が、次の王として……民を守り、導いていけ……」


その言葉が、王としての最期の命令であり、父として息子に託す遺言でもあった。王子は深く頭を下げ、父の意思を受け止めた。


「父上……必ず、この国を守り抜いてみせます」


その瞬間、王は静かに目を閉じ、息を引き取った。部屋には深い悲しみと重々しい空気が漂い、全ての者が王の最期を敬意を持って見守った。


サイルもまた、その崩御の瞬間を見届け、王の意思がレオナード王子に引き継がれたことを確認した。しかし、同時にこれが新たな権力争いの始まりであることも、誰もが感じ取っていた。


**ロドルフ伯爵の動き**


王の死が確認され、貴族たちは静かにその場を去ろうとしていた。しかし、ロドルフ伯爵は一瞬も目を離さずにサイルを見据えていた。彼の目には冷たい野心が宿っており、次の行動を計画していることは明らかだった。


『サイル様、ロドルフ伯爵がすぐに動き出すことは確実です。彼が推していた傀儡候補がレオナード王子に取って代わるために、何らかの策略を仕掛けてくるでしょう』


「そうだな。だが、今は王の死後、国がどう動くかが重要だ。まずはレオナード王子を支えることが優先だ」


サイルは静かにAIに応じながら、ロドルフ伯爵の動向に警戒を強めた。王位は正当な継承者であるレオナード王子に移ることが決まったものの、伯爵がそれを認めるとは考えにくい。彼が次に何を企んでいるのか、慎重に見極める必要がある。


**新王即位の発表**


翌日、王の崩御が公式に発表され、レオナード王子が新たな王として即位することが国中に伝えられた。王都は一時的に喪に服し、国全体が深い悲しみに包まれたが、同時に次なる王国の未来への希望も生まれていた。


しかし、サイルはその裏に潜む不穏な動きを察していた。ロドルフ伯爵が新王の即位を黙って見過ごすはずがない。彼が推す傀儡候補がどのようにしてレオナード王子に取って代わるのか、その計画が動き出すのは時間の問題だった。


『サイル様、これからレオナード王子を支えるために、彼の側近として行動を共にするのが賢明です。王国の内部での陰謀に対処するには、あなたの力が必要です』


AIの提案にサイルは頷き、王子に対して忠誠を誓うための準備を整えた。王位を巡る争いが本格化する前に、王子を守り、彼に正当な力を与える必要がある。


「王子を支え、この国を守り抜く。それが、今の俺の役目だ」


サイルは静かに呟き、ロドルフ伯爵の動きを監視するために次なる行動を決意した。王国が新しい時代を迎える中、サイルもまた、その運命に深く関わる覚悟を固めていた。


**新たな闘いの始まり**


王の死とともに、王位継承を巡る権力争いはさらに激化するだろう。レオナード王子が王位を継いだことは事実だが、その地位が安泰であるとは言えない。サイルはAIの助けを借りて、王子を守り抜くための策略を練り、王国を支える準備を始めた。


「王の意思を継ぎ、この国を守るために、すべての力を使う時が来た」


サイルは新王即位の儀式が行われる宮廷を見つめながら、これから始まる闘いに向けた覚悟を再び固めた。彼にはAIという強力な味方がいる。そして、その力を駆使し、王国の未来を守り抜く決意を胸に秘めていた。


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