第13話

第13話: 新王の側近としての歩み


**新王即位の準備**


王の崩御が公式に発表され、レオナード王子の即位が間近に迫っていた。王都は喪に服しつつも、新しい王を迎える準備が進められている。王子はまだ若いが、その高潔な性格と強い意志は、民衆や貴族の間で期待を集めていた。


その一方で、王宮の内部では、王位継承に関する陰謀が静かに進行していた。ロドルフ伯爵の動きが確実に不穏な方向へと向かっていることは、サイルにも感じ取れていた。


『サイル様、レオナード王子の即位を支えるためには、ただ王子を守るだけではなく、王国内の有力貴族を味方につけることが不可欠です。特に宰相や公爵の支持を得ることが重要です』


AIの分析は正確だった。王位を守るためには、国政の中心を担う宰相や、強大な影響力を持つ公爵などの有力貴族を味方に引き込まなければ、ロドルフ伯爵の陰謀を阻止するのは難しい。サイルはすぐに次の行動に移ることを決意した。


「まずは、宰相と公爵に接触する。彼らを新王側に引き込むための策を練る必要があるな」


サイルは深く考え込み、王宮内での自らの役割を果たすために、具体的な行動を計画し始めた。


**宰相との接触**


サイルはまず、宰相である**ウィリアム=クロフォード**卿に接触することに決めた。ウィリアム宰相は長年王国の政務を取り仕切ってきた実力者であり、その冷静な判断力と政治的な手腕は貴族の間でも高く評価されていた。彼の支持を得ることができれば、レオナード王子の即位を盤石なものにできる。


サイルは、王宮内の書斎で仕事をしているウィリアム宰相を訪ねた。宰相は机に山積みになった書類を整理している最中だったが、サイルに気づくと手を止め、ゆっくりと彼を見上げた。


「サイル殿、何用ですか?」


ウィリアム宰相は淡々とした声で尋ねたが、その表情は冷静かつ慎重だった。彼はすでにレオナード王子の即位に関する情報を掴んでいるはずだが、まだ態度を明確にしていなかった。


「宰相殿、レオナード王子の即位を支えるために、あなたの力をお借りしたいと思い参上しました」


サイルは率直に切り出した。ウィリアム宰相の目がわずかに細められたが、その表情に動揺はない。


「私は、国政を預かる身として常に中立の立場を保っています。しかし、今は国の未来を見据えて判断を下さなければならない時です。サイル様、あなたは王子を支える側近として、どのようにして国を導こうとしているのですか?」


宰相の問いは、サイルの覚悟を問うものだった。サイルは深呼吸し、冷静に応じた。


「私は王子を支え、王国内の安定を最優先に考えています。ロドルフ伯爵のように王国を私利私欲で操ろうとする者たちの陰謀を阻止し、王国を強固なものにするための改革を進めるつもりです。宰相殿のお力を借りることで、王国の未来を共に守りたいのです」


その言葉にウィリアム宰相は静かに頷き、少し考え込んだ後、口を開いた。


「……サイル殿、あなたの考えには一定の理があるように思います。王国の未来のため、私も協力するつもりです。だが、あなたがどれほど信頼できる人物か、今後も見極めていく必要があるでしょう」


サイルはその言葉に深く頭を下げた。ウィリアム宰相の協力を得たことは大きな前進だった。だが、彼の信頼を完全に勝ち取るためには、さらなる行動が求められるだろう。


**公爵の支援を得るために**


次にサイルが接触を試みたのは、公爵であり強大な軍事力を持つ**アルフレッド=ランカスター公爵**だった。ランカスター家は王国でも随一の軍事力を誇り、公爵の支持を得ることは、新王の統治基盤を強固にするために不可欠だった。


アルフレッド公爵は強面の人物で、かつて数々の戦争で王国を守ってきた戦士でもある。彼は力を重んじる性格で、サイルがどのようにして彼を味方につけるかが重要なポイントだった。


サイルは、公爵が兵士たちを訓練する王宮近くの演習場を訪れた。公爵は訓練を見守っている最中だったが、サイルが近づくと彼を鋭い眼光で見つめた。


「サイル殿か。若き次期トクス伯爵が、何の用だ?」


公爵の声は低く、力強さに満ちていた。サイルはその威圧感に負けることなく、まっすぐに彼に向き合った。


「公爵、私はレオナード王子を支え、この国を守るために協力を求めに来ました。あなたの軍事力と指導力は、この王国を守る上で不可欠です。どうか、力を貸していただけませんか?」


サイルは率直に訴えた。ランカスター公爵はしばらくサイルをじっと見つめていたが、やがて大きく頷いた。


「ふむ……王子を支える側近として、お前がどれほどの器かはまだわからんが、少なくとも、今のお前には誠実さが感じられる。だが、私はただ口先で決めるわけにはいかん。力で示してみせろ」


公爵はサイルに力の証明を求めた。その挑戦を受け入れることで、彼の信頼を得ることができる。


「わかりました。公爵の試練を受ける覚悟はできています」


サイルは毅然とした態度で答えた。公爵が望んでいるのは、言葉ではなく行動。サイルは自身の能力と覚悟を示すことで、彼の支援を勝ち取ることに決めた。


**新たな同盟の形成**


ウィリアム宰相とランカスター公爵という二大有力者の協力を得ることで、サイルは新王レオナード王子の側近としての立場を確固たるものにしていった。王子の即位を盤石にするためには、これからさらなる貴族たちとの交渉が必要だったが、まずは最も重要な二人の協力を取り付けることに成功した。


『サイル様、これで王子の支援体制はかなり強固なものとなりました。しかし、ロドルフ伯爵の陰謀はまだ終わっていません。次の一手に備え、引き続き警戒を強める必要があります』


「そうだな……だが、これで一歩前進できた」


サイルは深呼吸をし、今後の展開に向けた準備を始めた。レオナード王子を支えるため、彼はこれからも新たな同盟を築き、王国内の安定を守るために全力を尽くす覚悟を固めていた。


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