第4話
第4話: トクス領の防衛戦
**タイド帝国の猛将、ガルバス・タイドの登場**
城門前で火に包まれた兵士たちが混乱する中、タイド帝国の司令官であるガルバス・タイドが、威厳を持って前線に姿を現した。彼の全身を覆う黒い鎧と、重厚な黒いマントが風になびき、周囲の兵士たちは自然と道を開ける。彼の冷徹な目が城壁をじっと見据え、その姿は圧倒的な威圧感を放っていた。
「やはり強者だな……」
サイルは城壁の上からその姿を見下ろしながら、再びAIに指示を求めた。
「ガルバス・タイドか……何か対策はあるか?」
『ガルバス・タイドは数々の戦場で勝利を収めてきた猛将です。その戦術は大胆でありながら緻密。しかし、彼の攻撃パターンには一定の傾向があります。彼は必ず、敵を圧倒する一撃を放つ前に、その陣形を崩すために陽動作戦を使います』
「つまり、まずは虚を突く動きがあるということか」
サイルは冷静に考えを巡らせた。ガルバスがどのように攻撃してくるかを理解できれば、彼を迎え撃つための準備が整えられる。
「兵士たちに伝えろ。決して敵の動きに惑わされるな。正面からの攻撃だけでなく、陽動にも十分警戒するんだ」
**ガルバスの陽動作戦**
サイルの予測通り、ガルバスはすぐに動きを見せた。タイド帝国の兵士たちが再編成されると、城の北側に少数の部隊が突然動き出し、城壁の一角を攻撃し始めた。その動きは一見、本格的な突撃に見え、城内の兵士たちも動揺を隠せない。
「北側が攻撃されています! 援軍を派遣しなければ、突破されてしまう!」
騎士団の一人が焦りながらサイルに報告した。だが、サイルは冷静に状況を見定め、すぐに指示を出した。
「北側には最小限の部隊で対処しろ。主力を南側に残しておけ。これはガルバスの陽動だ。彼が本当に狙っているのは正面の城門だ」
サイルの判断は正しかった。北側で攻撃を仕掛けている部隊は、意図的に少数の兵士だけが配置されており、彼らの目的はあくまで城内の注意を引くことにあった。もしサイルが兵を大量に北側に動かしていれば、ガルバスの狙い通りに城門が手薄になってしまうところだった。
「奴の狙いは正面からの突破だ……ガルバス、お前は手強いが、まだ俺の方が一歩先を読んでいる」
**ガルバスの一斉攻撃**
陽動作戦が失敗したことを悟ったガルバスは、次にすべての兵力を集中させ、城門への正面突破を図った。巨大な破城槌が再び持ち込まれ、タイド帝国の精鋭部隊が城門に一斉に襲いかかる。
「このままでは城門が破られる……サイル様、どういたしましょう?」
指揮官たちは焦りの表情を浮かべたが、サイルはAIと共に考え抜いた戦術を信じていた。
「もう一度油を流せ。そして、敵が城門に集中している間に左右の城壁から同時に弓兵を放て。集中攻撃を仕掛けるんだ!」
サイルの指示により、再び城門の上から油が流され、火矢が放たれた。タイド帝国の兵士たちは再び炎に包まれ、混乱が広がった。しかし、ガルバスは怯まなかった。彼自身が破城槌の前に進み出て、直々に指揮を執り、兵たちに城門を破壊させようと奮い立たせる。
「さすがだな……このままでは持たないかもしれない」
サイルの心に不安が広がり始めた。ガルバスの存在は、タイド帝国の兵士たちに絶対的な士気を与えている。サイルがどれだけ反撃を仕掛けても、敵は止まらず城門を攻め続けた。
『サイル様、城門が危険な状態です。このままでは破壊される可能性があります』
「……そうか」
サイルは一瞬、深い息をついた。このままでは、城内での決戦を避けられない。
「全員、城門を守りきれ! そして、破られた時のために城内に防御ラインを築け!」
**城門の崩壊と決戦**
ついに、ガルバスの指揮のもと、破城槌が城門を突き破った。巨大な音とともに城門が崩れ、タイド帝国の兵士たちが一斉に城内に突入してくる。
「ここで引くわけにはいかない……全員、城内に敵を入れるな!」
サイルは剣を握りしめ、騎士団の最前線に立って指揮を執った。彼自身も剣を振るい、敵兵を次々と倒していく。戦場は混乱の極みに達し、サイルの心は次第に熱くなっていった。
『サイル様、冷静さを保ってください。戦術的に優位に立つには、ここで感情に流されるべきではありません』
AIの冷静な声が響き、サイルはハッと息を整えた。前世での経験が彼に冷静さを取り戻させ、再び戦術に目を向けさせた。
「敵を城内に完全に侵入させる前に、すべてを終わらせる!」
サイルは次なる手を打つために、城内の防衛ラインを指示し、最終的な反撃の準備を始めた。城の中央に設置されたバリケードと、隠された部隊が最後の守りとなる。この戦いで、全てを決める瞬間が迫っていた。
**ガルバスとの対決が近づく**
ガルバス・タイドは自らの剣を振り、次々とトクス領の兵士たちを斬り倒しながら、サイルに近づいていた。彼の目には、敵を討つための冷たい意志が宿っている。
「俺が直接、ガルバスを止めるしかない……」
サイルは剣を握りしめ、彼の元へと歩み出した。自らがこの戦いの行方を決める覚悟を持って。
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