第5話
第5話: 猛将との対峙
**城内、最終防衛ライン**
タイド帝国の兵士たちが城門を突破し、トクス領の城内に侵入してきた。サイルの指揮下で立てこもるトクス領の兵士たちは、城の中心に設置されたバリケードを背にして最終防衛戦を展開していた。だが、敵の数は依然として圧倒的。兵士たちの顔には次第に疲労の色が浮かび始めていた。
「サイル様、このままでは持ちません! 敵が数で押し切ろうとしています!」
騎士団長アルバートが叫び声を上げる。サイルもまた、剣を振り続けて敵兵を倒していたが、全体の劣勢は覆らない。
「……ガルバスがまだ動いていない」
サイルは周囲を見渡し、ガルバス・タイドの姿を探した。敵軍の最前線にはいないが、彼の気配は着実にこちらへと近づいている。それは圧倒的な戦意とともに、城内に緊張感を広げていた。
『サイル様、ガルバス・タイドは既に戦闘に参加しています。彼が前線に立つことで、タイド帝国の兵士たちの士気が一気に上がり、攻撃のペースが激化しています』
AIの報告を受け、サイルは再び剣を握り直した。ガルバスとの直接対決を避けることはできない。彼を討ち取らなければ、この戦争は終わらないのだ。
「アルバート、残りの兵士たちを防衛ラインの強化に回せ。俺はガルバスを止めに行く」
「サイル様、危険すぎます! お一人で行くのは……!」
「これ以上、城内での被害を広げるわけにはいかない。俺が彼を直接止めるしかないんだ」
サイルは覚悟を決め、前へと進み出た。騎士たちは戸惑いながらも、その決意に気圧され、後ろから彼を見守るしかなかった。
**ガルバスとの対決**
ついにサイルは、城内の広場でガルバス・タイドと対峙した。ガルバスは城内で散らばる兵士たちを軽々と斬り伏せ、血に染まった剣を振りかぶっていた。彼の目には冷酷な光が宿っている。
「若きトクス領主よ、お前がこの城を守るつもりか?」
ガルバスは静かに問いかけた。その声には挑発的な余裕があり、彼がこれまで戦場で無数の敵を屠ってきた自信が滲んでいた。
「そうだ。俺がこの城を守る。そして、お前をここで倒す」
サイルは剣を構え、ガルバスの視線に応えた。だが、その体は確かに緊張していた。ガルバス・タイドはタイド帝国の猛将、数々の戦で勝利を収めてきた男だ。単なる力では到底敵わないだろう。
『サイル様、冷静に戦術を立ててください。ガルバスは圧倒的な力で攻撃してきますが、その動きは重いです。回避を優先し、隙を見つけて反撃するのが最適です』
「わかっている、力で挑んでは勝てない……」
ガルバスは剣を振りかざすと、豪快な一撃を放った。サイルはその重々しい剣の軌道を読み、咄嗟に後方へと飛び退いた。ガルバスの剣は地面に激突し、石畳を粉々に砕く。
「お前のような小僧に、何ができる!」
ガルバスは激しい攻撃を繰り出し続けた。その剣さばきは鋭く、力強い。だが、AIの指示を受けて冷静に対処するサイルは、その攻撃を巧みにかわし続けた。
「サイル様、ガルバスの体力に依存した攻撃は持続できません。彼が疲弊するまで防御と回避に徹し、その瞬間に反撃を!」
サイルはAIの助言通り、ガルバスの攻撃をひたすら避け続けた。彼の一撃一撃は強烈だが、その分動きが大きく、次第にその疲れが見え始める。
「ふん、逃げ回るだけか……」
ガルバスが苛立ち始めた瞬間、サイルは彼の隙を見逃さなかった。ガルバスの剣が地面に再び叩きつけられたその瞬間、サイルは素早く間合いに入り、相手の脇腹を狙って一撃を放った。
「くっ……!」
ガルバスはわずかにバランスを崩し、痛みで顔を歪めたが、すぐに体勢を立て直し反撃してきた。サイルは即座に後退し、再び距離を取った。
「効いたか……?」
「面白い……だが、それで俺を倒せると思うなよ!」
ガルバスは怒りに燃える目でサイルを睨み、再び剣を構えた。だが、彼の体力は確実に消耗し始めている。サイルはそれを感じ取り、再びAIに確認を求めた。
「まだだ……もう少しで彼の動きが鈍くなる」
『その通りです、サイル様。次の大技に備えてください。彼が全力を振り絞って攻撃を仕掛けてくる際、決定的な隙が生まれます』
「勝負はその瞬間か……」
サイルは集中力を高め、ガルバスの次の動きを待った。ガルバスが次に何をしてくるか、そのすべてが予測されていた。最後の一撃を放とうとしていることが、わかる。
「死ね!」
ガルバスが叫び、全力で剣を振りかぶった。その動きは今まで以上に速く、力強い。だが、その大きな一撃は確実に隙を生むものだった。
「今だ!」
サイルはガルバスの剣をぎりぎりでかわし、その隙をついて再び脇腹に素早い一撃を叩き込んだ。ガルバスは呻き声を上げてよろめき、ついに片膝をついた。
「貴様……!」
ガルバスは悔しげにサイルを睨みつけたが、体力は尽きかけていた。
「これで終わりだ、ガルバス・タイド。トクス領はお前の手には渡らない」
サイルは剣を振り上げ、ガルバスにとどめを刺そうとした――その瞬間。
「サイル様!」
騎士団長のアルバートが、遠くからサイルに声をかけた。息を切らしながら駆け寄ってきた彼の表情には、安堵とともに、急報を伝える緊張があった。
「どうした、アルバート?」
「王都から……ついに援軍が到着しました! 我々の勝利です!」
その言葉に、サイルはようやく肩の力を抜いた。ガルバスは敗北を悟り、倒れ込むようにその場に崩れ落ちた。
「……そうか、ついに」
**戦いの終息**
援軍の到着と共に、タイド帝国の兵士たちは撤退を開始した。ガルバス・タイドが倒れたことで、彼らの士気は大きく崩れ、トクス領の城は無事守られた。
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