第2話
第2話: 危機の訪れ2
**トクス領の城内**
森での奇襲作戦を成功させたサイルは、城に戻ってきた。迎撃部隊が無事に撤退できたことで、敵の進軍は遅れ、ほんの少しだが領内に安堵の空気が広がっていた。しかし、次なる侵攻に備える時間は長くはない。
「サイル様、先ほどの迎撃作戦、見事でした!」
指揮官の一人が駆け寄り、息を切らしながらサイルに報告する。奇襲で燃え上がる森の中で敵は混乱し、その陣形を崩したとのことだった。
「まだ安心はできない。敵は進軍を続けているはずだ。防衛ラインを強化する準備は整っているか?」
「はい、各防衛拠点に兵を再配置しておりますが、敵の数は依然として多く、正面からの戦闘は厳しい状況です……」
サイルは小さく頷き、作戦会議室に向かった。そこでは、再びAIからの報告が届いていた。
『サイル様、敵軍は現在森を通過中ですが、混乱が続いています。このまま次の戦略を取れば、さらなる時間を稼げます』
「次はどんな手を打つべきだ?」
『城の南東には小規模な丘陵地帯が広がっています。そこに伏兵を配置し、敵が森を抜けたタイミングで再度攻撃を仕掛けることで、彼らをさらに混乱させることができます。』
「伏兵を……だが、残る兵力は限られている。もし敵が直接城壁を攻めてきたら、迎撃が間に合わないかもしれないぞ」
サイルの言葉に、AIはすぐさま反応する。
『伏兵に必要な人数は最小限で問題ありません。敵の主力が分散している状況では、小規模な攻撃でも十分な効果を発揮するでしょう』
サイルはその提案を吟味した後、決断した。
「よし、丘陵地帯に伏兵を配置しよう。城内の防衛を厚くするために、最小限の兵力で構わない。時間を稼ぐことが最優先だ」
**丘陵地での伏兵作戦**
サイルの指示を受けた騎士たちは、速やかに丘陵地帯へ向かい、待ち伏せの準備を整えた。サイルは城壁に立ち、遠くに見える森を見つめながら次の展開を静かに待っていた。
「レイモンド、状況はどうだ?」
「サイル様、敵軍はまだ森の中で混乱しています。しかし、数時間後には完全に再編成されて進軍を再開するでしょう」
「そうか……AI、伏兵のタイミングを教えてくれ」
『敵軍が森を抜け出すまで、あと30分程度と推定されます。伏兵部隊は準備完了。敵が森を抜けた瞬間を見計らって攻撃を仕掛ける準備を進めています』
サイルは頷き、城内の兵たちにさらなる指示を出した。城壁の防衛を固め、敵が到達するまでに可能な限りの準備を整えようとしていた。
そして、30分後――
「今だ!」
サイルが遠くの丘陵地帯に目を凝らすと、伏兵部隊が一斉に動き出した。高台から放たれた矢が敵軍に降り注ぎ、突然の攻撃に再び敵は混乱した。森を抜けて再編成を整えようとしていた彼らは、思わぬ攻撃に足止めを食らい、再び進軍が遅れた。
「作戦成功です! サイル様、敵軍の進軍がさらに遅れています」
レイモンドが興奮気味に報告する。サイルは冷静に彼を見つめ、次の行動を考えた。
「敵がここに到達するまでに、城壁をさらに強化しろ。そして、兵士たちにもう一度準備をさせておけ。ここからが本番だ」
サイルの指示に、城内は再び緊張感が漂った。防衛作戦が功を奏し、時間は稼げたものの、敵の主力はまだ健在だ。いよいよ城を守るための正面対決が迫っている。
**決戦の準備**
夜が明け、朝焼けが城壁を照らすころ、ついに敵軍がトクス領の城に迫ってきた。騎士たちが城壁に集結し、兵士たちは武器を手に最終決戦に備えていた。サイルもまた、戦場に立つ覚悟を決めていた。
「サイル様、ここまで進軍を遅らせたとはいえ、敵の数は依然として圧倒的です。これが正念場となるでしょう」
アルバートが重々しい口調で告げる。
「わかっている。だが、ここで負けるわけにはいかない。父上が帰ってくるまで、何としてでもこの城を守り抜くんだ」
サイルの言葉に、周囲の兵士たちは頷き、士気を高めた。戦局は絶望的に見えるが、サイルにはまだ策があった。AIの助けを借りながら、最後の一手を考え続けていたのだ。
『サイル様、敵軍は城門に到達しました。ここからが最も厳しい局面です。守りの体制を強化し、敵の侵入を防ぐための防御策を整える必要があります』
「そうだな……今が勝負の時だ」
サイルはAIの声に耳を傾けながら、最終的な戦術を練り上げた。この戦いで得られた時間が、彼と領民の命運を分ける。
そして、ついに――
「敵軍が城門に到達しました!」
兵士の叫び声が響き、激しい戦いが始まろうとしていた。
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