まったりは出来ない

 夕食の時間になったので食堂に向かう。


 食材いっぱいいじってたので食欲はイマイチ無いけど、食べると言った以上は出て行かないと。


「おー、起きたかー」

「夜寝れんく無いか」

 すでにエールでご機嫌なドットたちがこっちこっちと呼ぶ。


「夜もちゃんと寝る」

 と言うか〈ルーム〉でくつろぐ。

「若いのに枯れてんなぁ」

 心がジジィなのさ。

「この後オネエチャンとこ行こうぜ、海の女は包容力があるぞ」

 クレイバーとドレイクは大人のお店に行きたいらしい。

 詳しくは聞かないけど、セクキャバっぽい。娼館に直接行かないのは、駆け引きして致すまでの過程を楽しみたいクチか?

 

「俺は行かない」

 どうせ行くなら猫カフェか犬カフェでもふもふ・・・あ!獣人の女性がいるのか!!!

 でもさすがに女性をもふもふしちゃいかんな。

 血迷うところだった。


 夕食は白身魚の蒸し焼きだった。ムニエルではなく、ポワレやソテーのような油を使ったものでもない。

 実にあっさりな味だ。海鮮スープは出汁がよく出てるのスープと魚と交互に口に入れた。

 素材が新鮮で美味しいから素のままでイケるんだけど、柑橘ソースやワサビ醤油が欲しいってなる。


 ドットたちは肉も頼んでいた。後十年もしたら胃がもたれるんだぜ。へっ。


「そう言えば、賭博のやつなー、結構な数の貴族が捕まったぞ」

 もしかして誘拐も借金返済のためとかか。他人を使って金作ろうとかクズの所業だな。


「リューラス侯爵が激怒してた」

 そりゃ自分の領地で他所の貴族が犯罪に加担してたら怒る。  

 ドランとポルドスは海外に飛びやすいのが悪党に利用されやすい原因らしい。

 その分強化もしてるのにイタチごっこなんだとか。

 ドランのギルマスもポルドスのギルマスもわりと苛烈だと噂を流してもこの状態だって。

 大変だな。


「で、貴族の犯罪者は王都に連行しなければなんだよ」

 あ、嫌な予感がする。

「俺たちが連れて行くしかねぇんだなぁ」

 デスヨネー。


 そんなわけで、リューラス侯爵とラシャドル家のシルスファンとミシェルにその護衛、騎士隊と犯罪者御一行での王都行きになるそうだ。


「俺いなくてもよくないか?」

 護衛対象が増えて、さらに人手も増えたじゃん。これ幸いと逃げたい。

「俺たちがよくないかなー?」

「俺ジェイルと離れたくないよー」

 ドットとシャートがニヤッと俺の肩を叩く。

「おぼっちゃまとおじょうちゃまに気に入られてるし、がんばろー」


 はぁ、どんどんめんどくさいじゃん。


「まぁ俺ちゃ子供の護衛でゆっくり、リューラス侯爵たちは特急だから次の街でお別れだ」

 ポルドスからオランドまでが、わりと危険なので〈新月の雷光〉がついてて欲しいと言ったところらしい。


 ランガたちに残ってて貰えば良かったのにって、カナンが手薄になるのか。


 ミシェルの体調が落ち着いたので明後日出発で調整しているらしい。

 賭博参加者な貴族たちをずっと留めておくのもめんどくさそうだし、国王に報告もいれないとだしで、超特急で調書を取ってるからギルドは大忙しだと。


 違法じゃない賭博もあるらしいけど、税金取られるし、レートが低いから、儲けを求めて違法に走るんだと。

 儲けが大きいって、負けも大きいってことだぞ。

 賭け事は「九割は引き出せない貯金になると思え」って、おじいちゃんが言っていた。

 あ、「おばあちゃんが言っていた」って言いたいところだったが、おじいちゃんなのさ。

 

 ポルドスでの出来事なので〈水平線の彼方〉や〈海の渦潮〉、ポルドス所属のパーティは、めっちゃ働かされてるそうだが、ドットたちはお手伝い程度でいいんだそう。

 俺も特に言われてないから良いんだよな?


「王都行きで拘束が長いのわかってるからちゃんと休みなんだよ」

 俺たちはゆっくりで良いのかとほんのり聞いてみた。

 冒険者ギルドはホワイトな組合ですな。


 ドットたちはまだまだ飲むらしいので、俺は散歩に出た。

 ほっといたら明け方まで飲むだろうから。


 ぼんやり海と夜空を眺めつつ、海沿いを歩いた。

 星がよく見えて、半分になった月が海面に映って綺麗だ。


「ヨッサソー!ヘイッサッサー」


 ・・・この世界にも砂浜で特訓するマッチョがいるのか。

 木材をたくさん組み上げたらしいオモリを引いて走ってる男。

 むさ苦しい案件なので、そっと気配を消して逃げた。


 気が付けば、神殿の近くに出ちゃった。


「ついでに寄っておくか」

 

 あ、神の御力とか出したらキレるよ。神父が号泣とかもうお腹いっぱいだ。


 二十四時間ウェルカムなので遠慮なく入って、お布施入れを探す。前回忘れてたので二回分な。

 なんか台もあるので供物を欲しているのかとダンジョンの果物を置いてみた。

 

「来たぞ」

 祭壇を見上げて声をかけるとスゥッと白い空間に移った。


「うわーん!ジェイルー、フライって爆発するのー」

 ドリアスが泣きながら抱きついて来た。

「なぜ爆発するんだ」

「油の中にこうペイッと入れただけだよ」

 シャルマも爆発させたのか?


 結局調理は側仕えがやってくれたらしい。

「なぜ自分でやろうと思った」

 神なのだから、お付きの者がいるじゃないか。

「えー、やってみたかったから」

「ジェイルが簡単そうにやるからー」


 他の神たちは最初から側仕えに任せたそうだ。普通はそうするよな。うん。


「オーズは奥さんたちがやってくれたって」


 揚げたり焼いたりしつつ、アーンと食べさせるジャスチャーまで付けて説明してくれる。

 ハーレム持ってるやつは次元が違いすぎるから。


「・・・嫁貰えば良いんじゃないか?」

 俺もいないけれど。


「「僕たちは永遠の美少年なのー」」

 

 うるさいよ。


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女神に可哀想と憐れまれてチート貰ったので好きに生きてみる 紫楼 @sirouf

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