爆睡の後、仕込み

 俺は、ブランの仲間については、囮にされたのと保護時に近辺に気配が無かった事くらいしか情報は持ってない。


 調書みたいなのを書くのにもう一回話した後は、ブランが普段から受けていた仕打ちとか〈屋根裏の小人〉の評判とかを横で聞いていた。


 冒険者って言うのは良い奴らか悪い奴らの両極端なのかってくらい胸糞悪い話だった。

 給金ケチって小間使いどころか奴隷じゃんってくらいの。

 戦闘スキルがあるか無いかは重要かもしれないけれど、罠張った、りドロップ品拾ってくれたり、細やかな部分で気を配って、荷物の手入れや管理もって、めっちゃ有能だよな。

 縁の下の力持ちを大事にしないなんてバカだ。


 三年でCランクになれたって、それなりに強さはあったようだけど、ブランがコツコツやった掃除や配達のポイントや護衛依頼で依頼者を気遣って道中のケアしたことなどの評価があってこそのランクアップだったって。

 総合評価ってやつだ。

 もちろん戦闘レベルもそれなりにないと上がれないけれど。


 今回は数の暴力とリーダーが休憩を取らせず進んだって事情で連携もガタガタだったんだと。

 どうもリーダーが違法賭博で借金が出来てて早急に資金を作る必要があったらしい。

 ギルマスと秘書が目をクワっとさせたよ。


 ブラン、そんな奴らからとっとと逃げてもよかっただろうって思うけど、幼馴染の関係だと自分だけで故郷には戻るに戻れないか。


 途中で〈水平線の彼方〉と〈海の渦潮〉を呼んで(深夜だぞ)、賭博の胴元をしょっぴいてこいって。

 深夜の方が客もろともイケるわなぁ。

 後ろ暗い連中ってなぜ真夜中に動くのか。


「潰しても潰しても虱のように湧いてくる」

 

 領主にも一報を出したので朝一番にやってくるだろうって。

 なんか誘拐とか賭博とか物騒な街だな。


 そして、ブランの仲間だったリーダー・ポンチと彼女のサンは一命は取り留めたけれど、やっぱり罪人なので牢屋に入って刑が確定したら何かしらお金になるように処されるんだと聞いた。


「ブランの給金と慰謝料は賭博の胴元からふんだくるからな」

 給金巻き上げは胴元関係無いけれど、賭博場を開いて借金を負わせた挙句の今回の事件?なのでってことらしい。

 財産没収の上、生涯労役か出身地によっては死刑も有り得るんだって。


 死んだ仲間の遺族への賠償は無し、仲間たちがリーダと一緒にブランの給金を巻き上げてたこと、囮にしたことで逆にブランに死んだ二人の遺族が金を払う立場らしい。

 ブランはそれは要らないと断った。


 仲間の家族もブランの両親たちが住んでる村の住民なので、ブランがお金を貰えば、その村では住みにくくなってしまう。


「それでな、ブランよ。犯罪者でも可愛い子供が逮捕されて、死亡して、村に帰って来ないのにブランだけ戻ってもブランも家族も嫌な思いをするだろう?」

 ギルマスがブランに落ち着くまでポルドスでギルドの手伝いをしないかと誘った。

 家族が望むならポルドスに呼べば良いだろうって。

 アフターケア万全だ。


「うう、先祖代々の畑があるでやんす」

「・・・だがその土地の持ち主は領主だろう」

 おおぅ、何十年以上も管理してても小作人のままなのかい。切ないな。


「手紙を出してみるでやんす」

「俺も一筆入れてやろう」


 どのみち、ブランはリーダーの刑が確定するまで移動できないようで、ギルド預かりになった。人懐こいし気が利くので可愛がられるだろう。


 朝日が出てからやっと解放された。

「飯食うかー」

「俺はもう寝たい」

「お、若さが足りんぞ」

 身体が若返ってても精神がジジイなんだ。寝ないと身体がもたないと脳にインプットしてあるんだ。

 もう朝だけど。


「夕飯まで誰も来ないで」

「おー、ちゃんと寝ろよー」


 そんなわけで宿に戻って、〈ルーム〉に入って、服を廊下に脱ぎ捨ててベッドで寝た。

 タバコも吸う気力がなかったぞ。



 四時間くらいで目が覚めた。頭スッキリ。

 これが若さと言うものか。


 タバコを咥えて、脱ぎ散らかした下着とシャツを洗濯機に入れる。

 ゴス服は〈洗浄〉魔法で済ませた。魔法で作ったからお手入れが難しいとかもないんだけど、なんとなく洗濯機はダメ。


 シャワーを浴びて、コーヒーとサンドイッチを食べてから、道中の食事の仕込みをすることに。


 物凄い量の海老の殻と背わたの処理、大きなエビのハサミはかち割って中身を出した。

 殻のまま焼くのも美味そうだけど、大きさがな。

 カニはほとんど大きな脚でぶった斬って中身を出して斜めに切っていく。やっぱりどう見ても高級カニカマになる。


 天ぷらとフライ、ボイルとって分けて。


 魚介パスタも作りたいとパスタ麺をスマホ選んでたんだけど、この世界だと似てるのはファルファッレとニョッキだ。

 

 まぁ具沢山スープにニョッキで良いか?

 ルームで一人で食べる時はスパゲッティで良いか。


 そう言うわけでいろんな魚と貝、タコ、こっそりクラーケンなイカ、魚介スープを仕込んで、パスタには後入れで使うことに。


 エビグラタン、カニグラタン、エビマヨ、カニ玉と思いつく限りのエビカニ料理を仕込んで無限収納に入れた。


 イカリングやタコ足の唐揚げもしたかったんだけど、デカすぎて全部スライス状態だよ。


 ピザに乗っけるようの切り分けと、新鮮素材なのでカルパッチョ用に薄切りにして、ドレッシングかけるだけのも用意した。


 ドラゴン肉は少し味見したら、美味しかった。例える対象が思い浮かばないけど、高級和牛のような霜降り感はゼロだ。濃厚な肉!!筋肉質だからかな?

 ワニ肉は淡白で歯応えたっぷりなカエルや鶏肉に近いけれど、ぷりぷり感が凄かった。


 ドラゴン肉は出すと多分怒られそうなのでこっそり食べよう。これは仕方なし。


 料理作りにひとまず満足。


 ピザ生地だけは山盛りいるのでフードプロセッサを使いつつ。


 スマホでタバコや酒、王都までに必要そうな物を色々ポチった。


 ピコピコン♪


 うん。わかってた。見てるって。

 欲しがるってなんとなく分かってたよ。


 仕込み状態のをそのまま送ったよ。

 揚げるだけ、焼くだけ、出来るよな??



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