散歩
ドリアスとシャルマにポルドスを出ることを伝えた。見てるから知ってるだろうけど。
「次はメルティアかな」
オランド領は愛と激情の女神メルティアの教会があるらしい。
「もう会ってるから挨拶?要らなくない?」
「ダメだよー、みんな平等に扱ってよ」
平等・・・最高神がいるから平等ではなくないか?
「どこも信心とお布施足りてないからちゃんと覗いてきてよ」
神様なのに世知辛いな。
「生臭坊主がボロ儲け出来るんじゃないのか」
新興宗教の教祖とかテレビに出てた坊さんが高級車乗り回したり、大豪邸に住んでたりあるじゃん。
アニメでも酒池肉林の大神官とさ。
フィクションの世界って元ネタになった現実がわりとある。むしろ現実の方がエグいと思うんだ。
「なぁにそれ。神殿は誰かが特別儲かるって仕組みじゃないよ」
「あー、でも神の威光を使って信者から全財産奪ってる教団があったような」
「それってアルムヘイム聖王国?三百年前に滅んだでしょ」
おっと自称、永遠の少年が三百年前とか言っちゃってる。
「たまに神罰を受ける愚か者が出るけど〜、この国の神官はちゃんとしてる方だよ」
この国の、してる方、と、ちょっと引っかかるけど深く考えるのはやめておこう。
「それより神官が神の御力がどうとか言うから、神官に気付かれないようにしてくれよ」
毎回泣かれるのが嫌だ。
「あー、ちゃんと僕たちの言葉を聞ける子がいないと困るから、みんなそれなりには気付いちゃうね!〈隠者〉の指輪レベルMAXにしてね」
指輪が高性能すぎる。
「神の降臨とか御力が満ちたとか騒がれるのは良いのか」
毎回大騒ぎになるぞ。
「あ、それはちょっとダメかも!オランドに着くまでに何か考えるね」
一応、メルティアには会いに行く約束をして神殿を出た。
今回は神官に見つからずに済んでホッとしたぞ。
月の位置が変わってて、凪いだ海を眺めながら、咥えタバコで散歩再開だ。
酒場の方と夜の漁をしてるあたりはそれなりに騒がしいけれど、他は静かだ。
海沿いをバイクで走りたいと思っていたけれど、バイクのエンジンなんかかけたら、すごい響きそうだなぁと。
バイクは難しい気がしている。
ティアランシアにお願いして持たせてもらったものの、まだ現物を確認していない。
近場に人の気配が無いのでちょっとだけ見てみようと無限収納から出してみた。
わぉ!限定解除な大型バイクではないかね。
バイカー憧れのハーレー・・・。長距離移動を想定してくれたかな。
俺ね、もちろんこれ好きだよ。
でも想像してたのは、カワサキかホンダのライダー仕様な感じでさ。ナナハンより小さいくらいので。
それか、アニメのリストラ間近のおじさんヒーローあたりの。
それこそ、創造魔法で自分で作れってキレられるな。
うぅむ。完全に爆音だなぁ。
この世界にないものを使う時は、世を偲ばないとだから静音仕様にしないとねぇ。
魔法で音消ししちゃえば良いのかな。
全く音がしないのも寂しいけど、妥協は大事。
王都行き護衛依頼が完了するまで、しばらくは乗れそうにないから、その間に何か対処法を考えよう。
海と夜空に月光をバックにめっちゃ映える俺のバイク。良いねぇ。
しばらく眺めてから収納に戻した。
生きているうちに北海道をバイクで一周とかやっておくべきだったな。
後から色々思うんだ。人生ってそんな物。
今は、せっかくイケメンでチートなんだから色々体験しないと!!って思ってる。
いざ何でも出来るとなると何も浮かばないのはなぜなんだぜ。ほんとなぜ。
街中に戻って、屋台をちょっと覗いた。
魚の串焼きや貝を魚介スープ?ごった煮や、エビの殻剥いちゃって直火焼き、まぁなんだ、大雑把な食べ物が多い。
なぜフルーツと一緒に焼いちゃうんだろうな魚の炒め物は気になったので買ってみた。
んー?海外のどこかの食べ物にありそうな味だ。フルーツと思ってたのは芋系のものだった。最後に果汁ブシャーっと潰して入れてたのでどっちにしてもフルーツ風味。
悪くはないけど、何かスパイス入ってたらもっと美味しくなりそう。
もう少しポルドスにいられたらまた釣りに出たり、楽しめたのにねー。
酒場からはオッサンの笑い声が響いて、奥の建物からは艶っぽいお姉さんの呼び込みの声が響く。
ドットたちが好きなお店は奥なんだ。
宿に戻ろうと思ったら、半裸のオッサンが「海まで走れー」「俺のが早いぞー」っと追いかけっこで通り過ぎていった。
酔っ払いはなぜ走り出すんだ?
そう言えば、昔信号待ちで美人のお姉さんが下着姿で電柱に巻き付いていたなぁ。
酒は美味いけど、理性がどっかいっちゃうのは困るよね。
夜の街の酔っぱらいはどこも同じだなぁ。
宿に着いて、部屋の鍵を閉めてから、〈ルーム〉に入る。
風呂を準備して、髪の毛を元に戻してからシャワーでガシガシっと髪と身体を洗った。
久しぶりに金髪に戻した。
すでに白髪の方が長くなって来てるけど、やっぱこの体になって最初に見た姿の方が落ち着くな。
日本人の俺には戻りたくないぞ。イケメンはともかくオッさん戻っちゃうからな。
湯船には温泉の素を入れてる。
若返っても、疲労回復って言葉には弱いんだ。
ゆっくり寛いで風呂を出て、キンキンのビールを飲んでから、チーズと生ハム、ワインを楽しむ。
当分ゆっくり出来なくなるから、今のうちにと太めの葉巻をポチって、じっくり吸った。
あー、しみるぅ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます