海ダンジョン 5

 階段にある部屋、セーフゾーンで休憩。

 十階層でやるよりはと、ブランはボロボロになった荷物の入れ替えをする。

 と言っても替えのリュックはないから獲物やドロップ品入れる麻袋みたいなのを使ってる。

 何か作っても良かったんだけどやり過ぎるのはなっと様子見。


 野営道具やらはほとんどが直せない状態で半泣きだ。仲間の分なら捨ててやれば良いんでないか。

 その中で今回のダンジョンで得たらしいドロップ品をさっきのポーション代や十階層までの護衛代として出して来た。


「全然足りないでやんすが今出せるのはこれが精一杯でやんす」

「気にするな。十階層まではついでだ。ポーション代だけもらうな」

 何も貰わないのは気にしそうだから、ドロップ品の牙を一個貰った。

「・・・ありがとでやんすよー」


 着替えと鍋とか一部の金物と火打石くらいしか残って無かったようだ。


「仲間は何も持ってないのか?」

「武器と防具とワインくらいでやんすかね」

 ほとんどブランに持たせていたのか。荷物持ちってそんなもん?

 ドットたちもランガたちもそれぞれ容量の差はあれどマジックバッグは持ってたので荷物はそれぞれって感じだった。


 ブランの腰にはワインの皮袋を付けてるが破れてる。

「やる」

 俺はマジッグバッグから取り出したテイで、ギルドで買ったワイン入り皮袋を渡す。

 飲みたくないって言うと悪いけど、コーヒやビール飲んじゃうからな。


「えええ〜、命の水でやんすよ」

「俺、まだ持ってるし?」

 腰のマジッグバッグを指差して見せる。

「キィーーー!!お金持ちでやんす!」

 お金持ちに何かされたのか?地団駄を踏んでる。

「ありがたくいただくでやんす」

 必要なものは甘えておけば良いよ。


 そんなわけでいざ九階層。

 ・・・草?大草原みたいな。


「これはとんでもねぇハズレ階でやんす!」

 ん?

「食えない植物はただの雑草でやんす!」

 んー・・・、青々としてるけど稲だと思うんだ。実をつけてないから草と言われると草。


 俺的には育っている状態で見つけたかった。

 周りを見渡しても青色しかない。泣ける。

 だが見つけたとして稲刈りする気力が・・・あ、おれコンバイン持ってるんだった☆いつかぼっちの時に黄金色の稲穂見つけたら、この大田園を全部刈り取ってやるぜ。

 生きているんだぁ♫って大声で歌真似してやる。


 今は時期じゃないから諦めるしかないので十階層行きの階段まで走り抜けることに。


 途中で可愛くない顔の狐とイボカエルにワイルドボアに遭遇した。

 ブランは戦闘力はゼロだけど罠を作るのは得意だった。草結んだり、落とし穴作ったり。

 まぁ襲ってくる勢いのが早いんだけど、小さい身体でちょこまか可愛い作業してるの和む。

 能力を見るに農家に婿入りが一番良さげだと思うが冒険者がしたいのなら仕方ないよな。


 イボガエルのドロップ品は軟膏と皮。カエルの皮は水を弾くので雨靴とかに使えるらしい。

 ボアは肉を落としてくれた。


「大当たりでやんす!!」

 地上で狩れば普通に肉も皮も牙も全取りなのにって思えば、質が良いんだって。


 特に問題はなく、十階層に出る階段を見つけた。

「ブラン、体力は持ちそうか?」

「まだまだ行けるでやんす」

 

 元気と言ってもまずは腹ごしらえとイノシシ肉を焼いて食うことに。

 ブランはほとんど装備品が無いので、俺が魔道コンロと鉄板を出した。


「良いモノ使ってるやんすねぇ」

 そうか?とりあえず自分で作る用の見本で買ったやつだよ。


 ブランは消し炭は作らないようで俺が肉を切って塩を掛けて渡すと器用に焼いた。


「この前何もかも焦がして、貝を爆発させた奴がいるんだよ」

「あー、わっちの仲間も火の調整が下手でやんしたよ。どうしてそうなるのか見ててもわからないでやんす」

「なー」

 なんでじっくりコトコトやれないんだろ。


「ハフ、こんなまったりしてる食事は久々でやんすよ」

「なんだ。ゆっくり食べれないのか?」

「ダンジョンに入って一週間、干し肉と採れた木の実でパパッと食べて移動しないと安全な寝床が探せないでやすからねぇ」


 ン?一週間??八階層で出会ったから一日で一階層ちょいずつって感じ?

 

「ジェイルさん、付与魔法使ってるので足速いし、道順もパッパ決めちゃってすぐ階段見つけちゃうでやすからびっくりでやんすよ」

 あちゃー。俺の方がびっくりだよ。

 そっかー、マップ買ってるしMAPで確認もしてたし、ブランをとっととゲートに案内したかったから寄り道してなかったよ。

 普通は一日一階層か。三日しかいられないから気が焦っちゃってさー。


「わっちはダンジョンでたら実家に帰って家を継ぐことにするでやんす。冒険者向いてなかったでやんすね」

 ギャァ!若い子の夢を潰してしまった!

「あ、ジェイルさんとの格の違いとかでは無いでやすよ。仲間に裏切られたし、荷物持ちのわっちでは新しくどこか入れてもらうのも難儀するでやすから」


 そっか。ランクが上がってマジックバッグが買えるようになると余計に仕事が無くなるなぁ。


「まぁ、両親のそばにいられるならいた方が良いかもな」

 俺は兄貴や姉貴が地元に残ってるし心配ないからって思ってたら、まさかの先に死んじゃうって言う親不孝しちゃったしな。


「でやすかねぇ。彼女待たせてるしお土産持って帰りたかったでやすが身一つで帰ることになっちゃいやしたね」


 ギャフン!!


 彼女を待たせてるだと!?


 俺に一生言えないセリフが出て来たぞ。


 可愛い見た目が小憎たらしくなってしまったじゃないか。


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