海ダンジョン 6
十階層は、南国風の森で、ゴブリン、オーク、コングって二本足勢揃いだった。
俺的には大はずれなんだが、ドロップ品が武器や果物、肉、下級ポーション(傷回復、毒消、MP回復)って、まぁまぁ使えるものが落ちるので金にはなるかな。
「ヒィー、お助けぇ」
ブランは逃げるのと隠れるのはとてもうまい。ついでにぽこっと穴を作っていくので追いかけたゴブリンとかがコケッとなるので俺はそれを肩から袈裟斬り。
オークはちょっとパワーがあるのでブンッと拳が飛ぶと風圧がくるけど、まぁなんとかやれた。
天河は魔法付与しなくても切れ味が良い。
光らせなければ、パッと見、綺麗な刀で済むかな?ドットたちなら「お前よぅ」って言うだろうけど、ブランは「良さそうな剣でやんすね」ってだけで済んでる。
二本足はやっぱり精神的にやりにくいので、この階層も最短ルートで進む。
途中でリンゴや柿みたいなのを見つけたので余裕がある時だけブランが収穫。
そうして着いたボス部屋の前。
マップの情報だとオークキングか。
「ブランは逃げ回れるのか?」
「はいでやんす。張り切って逃げ回るでやすよ!」
頑張る方向が違うと思うぞ。
ボス部屋の扉を開けるとただのだだっ広い洞窟にデカいオークがあぐらかいて座ってた。
効果音的にはズォォオンでいいか。
「・・・!!ブォオォー!!!」
遊園地のお化け屋敷で待機していたお化け感。
あ、しまった、客だ!脅かさないと!みたいな動きに見えた。中の人いるのか?イリュージョンを開けてやろうか?
「ブルァー!」
いっちょ揉んでやるパーンチ!ですかね?
大柄で上から下にブンブン当てようとするから隙だらけ。
めっちゃ萎える。
とは言え、キングなのだ。地面は割れたり抉れたりしている。
頑丈な拳ですな。
「ほいっ」
切れ味の良い俺の刀でも若干抵抗を感じつつも、オークキングの右腕は落ちた。
俺の筋力と刀の扱いがまだ未熟って事か。
せっかくの最強の刀、やはり居合のようにザンッと斬れないとな。
「グフォオオオオオオ!!!」
めっちゃキレた。片腕をブンブン振って、足も蹴りを飛ばしてくる。
ブランは隅っこで風圧に当たらない場所にちょこまか動いてる。
オークは首を落とすか、胃のあたりの魔石を割るかだ。魔石は欲しいけど、ダンジョンの中だと消えちゃうからドロップが良い物だと良いね。
ブランの前だから魔法を好き勝手使えないのはちょっと面倒だ。
仕方ないなので隙を見て跳躍して、オークキングの魔石を狙う。突きになっちゃうけど、まぁヴェールがいろんな素材混ぜた強度のある刀なのでイケるでしょ。
オークキングの背中に刀を突き入れて、刃を一気に進める。
俺の意思を汲み取ってくれるような感覚でスゥッと刃が魔石を砕いた。
「ブォッォォォオオオ・・・」
俺が背に乗ったままの状態でオークキングが崩れて消えた。
「危ね」
俺は地面にシュタッと降りた。
「10.0」
ガランガラン。
お、ドロップ品が落ちた。
「わぁ、剣でやんすね!あと宝箱!!」
ブランが飛び上がって俺に抱きついてきた。
「オークキングをあんなにあっさり倒すなんてすごいでやんす」
チートだからな。武器のおかげ。
剣はそこそこの値がつきそうな片手剣。宝箱は、宝石だった。
ボス部屋はとっとと出て、セーフゾーンで休憩。
ブランに分け前をって言うと戦ってないからって遠慮された。
「でも今回赤字で蓄えもそんなにないんだろう?」
身一つで帰るとか言ってたし。
「八階までのドロップ品は少しあるでやんすよ」
仲間が放棄したと見做されるから総取りでやんすと笑う。
その仲間なんだが、ゴブリンで逃げて八階九階って無傷じゃねぇと思うんだよな。
俺のMAPの探知でソイツららしき反応が無かった。
五階まで戻るにしても、一日一階層しか進めずに装備品がほぼないって詰んでる。
俺はブランと話しつつ、手紙を書く。ブランは俺が預かっていた荷物を帰るために縛り上げて背負うための工夫をしている。
手紙はダンジョンの受付宛に、途中で仲間に囮にされたブランを拾った事。状況から見るに八階層で全滅か、七階層くらいのセーフゾーンで動けなくなってるかって予想をしている事。
もう一通はギルマス・アントス宛で、ブランを仲間たちが囮にした事、状況的にゴブリンに殺される寸前だったので嘘では無いだろうと言う事、万が一、仲間が生きて戻っていたらそれなりの処罰を求めると書いた。
ブランが疑われたり、仲間が運良く生きて戻って、ブランに何かしら損がないように保険だ。
「まぁせっかく面白い縁になったし、宝石は半分持っていけ。彼女に何か作ってやれば良いだろう」
女は宝石好きじゃん(偏見)。
「お世話になったのに・・・」
「あ、街に戻るよな?」
「へぇ」
「じゃ、この船酔いの実と発光くらげきのこをギルマスと〈新月の雷光〉に宛で届けてくれるか。ギルドの受付に言えば預かってくれる」
どうせなら早いほうがいいもんな。
「ふえぇえ、ししししん月のララライこう・・・」
何故かめっちゃ驚いている。有名人か?
Bランクだし、有名で当たり前か。
「んでこっちの手紙はダンジョンの受付に、こっちはギルドでギルマス宛な」
まだポカーンとしている。
「で、これは配達の依頼金として持っていけ。良いな?」
受け取れないとか言うから、依頼金だと言い張って渡した。
ついでに九階、十階層のドロップ品も半分こだ。
俺はまだ先で稼ぐし。
「ジェイルさん、ありがとうでやんす」
「泣くなよ」
仲間に裏切られた後だし心細いだろうけど、悪縁はスパンと捨てていけば良い。
「いつかわっちの里にも遊びに来てくれでやんす。お礼がしたいでやすよ」
ブランはドランの街近くのポポルの村出身らしい。
「ドランはいつか立ち寄る予定だからその時に寄るよ」
一周の最終コーナーだからかなり先だけど。
「絶対でやんすよ!!」
そんなわけで、転移ゲートで背負った荷物と手荷物でほとんど見えなくなったブランを見送った。
「急に静かになったなぁ」
小動物ちっくなブランの前では控えていたタバコに火を付けた。
「ふー」
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