料理完成

 

 食材はみんなが出してくれたものの、ほぼ肉と堅パンだ。

 ポルドスから来たなら魚くれっての。

 野菜がほぼないのでスマホで買い足し。

 ・・・ミンミとイルナは肉だけのスープを作ろうとして爆発させたのか?

 残骸の掃除は俺が〈洗浄〉で済ませたけど、何がどうなってこうなったって原因は謎のままだ。

 魔法でも使ったのか?


 鍋類、食器類は宿のを借りる。

 数はそれなりなのでみんな分は足りて良かった。


 堅パンはマジで堅い。歯茎が抉れる。

 パン屋で買うハードパンの五倍は堅いと思う。

 そんな堅いものを子供に出せるかって思ってオニオングラタンスープもどき。

 かなり薄味で作った。俺的には超物足りないけど、濃い味になれると他の食事が美味しく無くなるから。


 肉は薄切りと厚切りに分けた。

 玉ねぎを軽く炒めて、一緒に塩味で焼いた。

 十歳前後の子供って何が好きだっけと考えた結果肉をみじん切りしてミートボールを作った。

 両方にグレイピーソースもどきをかけた。


 ミシェルってそういえば誘拐されてからまともな食事してないんだよな。

 子供たちには干し肉と堅パン、果物は一応数回出してたらしいけど、ミシェル派果物だけか?


 固形物は少ない方がいいかと芋をマッシュしてみじん切りした野菜を茹でてスープで溶かしてみた。

 再びスマホでこそっと粉ミルクを買って混ぜてみる。栄養混ぜた方が良いかなって?


 粉ミルク見てて、赤ちゃんじゃないけど弱ってるなら離乳食のパックを買えば良かったんだと気が付いて数食分仕入れてみた。


 大人たちは、ガッツリ食うだろうから、堅パンも油とガーリックペーストつけて焼いて、チーズと肉を乗せてもう一回焼く。

 子供用は俺が仕込んだピタパン生地にチーズとハムを乗せるだけにしてみた。


 米が出せたら一番なんだけど、今のところ見てないので断念。


 人参と芋、カボチャをソテーしておしまい。

 肉を焼くだけなんだからこれで十分だろう。


 出来上がった皿を運んでもらうかと扉を開けたら、マッチョと女子二人が雪崩落ちて来た。

 ランガ、クレイバーと〈海の渦潮〉のアッシュとミンミ、イルナ、〈水平線の彼方〉のロゴスとギャレットだっけ?


「・・・何やってんだ?!」

「良い匂いがするから」

 子供たちは大人しく待ってたのに??


「ハァ、良いけど。皿運んでくれ」

「「わかったー!!」」


 カナン組は三十代でポルドス組は二十代だと思うんだけど、どっちも落ち着きがねぇな。

 雪崩れてなかったドットたちも運ぶのを手伝ってくれて、みんなでいただきますだ。俺しか言わないけど。

「どうぞ」

 だっけ。

 マンマがお食べって言うのが合図ってエンマさんが言ってた。


 ヴァロとシャート、ゴンザレスとアイアンが子供たちを膝に抱えて食べさせてあげてる中、ミンミとイルナがガツガツ。


「やったー!!」

「焦げてない肉〜!」


 女手ってなんだっけ。今時は男とか女とか関係ないか。女が母性を求められるなら、男も父性でお世話して良いんだ。

 でもアイアンとゴンザレスはかなりマッチョ系男子だ。ギャップが面白い。

 

「うまぁあい!!」

「神のご飯!!」

 かなり手抜きで喜ばれると切ない。

「その丸いの美味しそう!!」


 それは子供たち用だ。


「おい!子供優先だぞ!」

 ドットとサントスがちゃんと言ってくれた。


「これ、ミシェル用な。俺が食べさせるから先に自分の分食べな」

 シルスファンは少し迷ったみたいだけど、こくんと頷いて俺にミシェルを渡してくれたけど、近くからは離れなかった。


 さて。ミシェルの様子を見るとやっぱ少し衰弱気味だ。お兄ちゃんが必死に守ったんだろうな。お兄ちゃんも結構窶れてるのか。


「ほい、あーん」

 俺は姪っ子甥っ子のお世話もした事がある。嫌がられ蹴られパンチも喰らったし、ゲェっと顔の掛けられたこともあれば、おむつ替えの瞬間もう一回くらうこともあったぞ。

 何があっても動揺しないぜ!


 ちょっとミルクくさいトロトロ芋のペーストをスプーンに乗せて口に添えると、アムアムと口が動いて、味を確認したのかおかわりのパカ~。


 なんだこれ!!天使がおる!!


 にっこり笑って俺の指をにぎにぎしておかわりのパカ~。


 うちの姪っ子甥っ子は悪魔の様に食べ物が入ったままのお口に自分の手を突っ込んでから平手とかだったのに!


「おいしーか?」

「あいっ!」

 おお!出会ってから始めて意思の疎通が。

 ずっと静かだったけど、空気を読んでたのかな?賢いな。


「・・・良かった・・・」

 シルスファンがミシェルの様子を見て泣き出した。

 不安だっただろうな。生きて帰れるか、ミシェルを守り切れるか。子供たちのことも。

 全員は守れなかったことも色々抱えてるんだろう。


 メイたちが、シルスファンにピタパンとスープを運んできた。


「お兄ちゃん!一緒に食べよう!!」

「もう安心だね」

 シルスファンを囲んで話しかける子供たち。


 大人たちが能天気過ぎたぞ。


 



_________________


〈新月の雷光〉

 ドット 

 ドレイク 

 クレイバー 

 シャート 

〈鋼鉄の拳〉

 ランガ

 ヤン

 ヴァロ


〈海の渦潮〉

 アッシュ

 サントス

 ゴンザレス

 ミンミ

 イルナ


〈水平線の彼方〉

 ルーカス

 アイアン

 ロゴス

 ギャレット



保護した子

メイ ディエゴ ジャン ユング


シルスァン・ラシャドル

ミシェル・ラシャドル

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る