タバコは一人で吸いたい


 子供たちが仲良く食べてくれるのは幸い。

 貴族のシルスファンが丁寧過ぎるだけで、ディエゴやジャンたちもちゃんとお利口さんに食べてる。


 ミシェルはお椀に一杯分くらい食べてくれて満足そうに寝た。天使。

 ちなみに目は薄紫に見えた。青かも?


「ジェイルさん、ミシェルのご飯ありがとうございます。家でのような丁寧な食事が出来るなんて思いませんでした」

 シルスファンは誘拐されてから、ミシェルに出された果物をなんとか食べさそうとしていたがなかなか口に入れてくれなかったそうだ。

 まだ食事を出してくれただけマシな悪党だったけど、小さい子供には厳しいよな。


「ポルドスに着くまでは似たような食事を用意するから安心してくれ」

「はい」

 ミシェルの兄だけあってハニカミ笑顔が可愛いぞ。

「「「「「はーい!!」」」」」

 って大人の分は知らないぞ。焦げた肉でも食っとけ。


 皿を厨房に運んで、手伝うと言われたが面倒だったので追い出す。

 一気に〈洗浄〉しちゃえばすぐだし。


 子供たちには寝る前にホットミルクを出すことにした。少しだけ砂糖入れた。


「これ飲んだら寝ろよー」

「わーい」

 ぬるめのミルクですぐ飲めるようになってるからみんなグビグビ。


「あま〜い」

「おいしー」


 子供たちが嬉しそうなのを羨ましげに見るミンミとロゴスとヴァロ。

 大人は自前のワイン飲んだらいいじゃん。


 俺はミシェルにスプーンで飲ませる。

 だけどミシェルは自分もコップがいいと言うので俺が支えて飲ませた。ちょっと溢れたけど仕方なし。

「あい!」

 ちゃんと飲めたとドヤァっとされたけど可愛いだけだ。よしよし。

 シルスファンも自分の分を飲み終わったのでミシェルを渡す。



「お前ミルクなんか持ち歩いてんのか?腹こわさねぇか」

 ドットとアッシュに聞かれた。

 マジックバッグに入れておけば一週間は持つだろう?俺はさっき買ったんだけどさ。

 水もミルクも腐ってるの前提って怖い世界だ。


「ミルクは料理にも使えるし便利だぞ?」

「肉にミルクはかけねぇよ・・・」

 そんな使い方は俺もしない。


「お前らダンジョンでも肉だけなのか?」

「果物があったら採るし、蛇いたら焼く」

 ワイルドだな。

 俺には無理そうな生き方だ。


「おーい、子供ら顔洗って厠行ってから寝ろー」

 アイアン、ゴンザレスとシャートが子供たちを就寝に促す。

 もう俺はすることは無さげだ。


「俺は外で煙草吸う」

「あ。俺も俺もー」

 ランガとヤンが付いてくる。一人がいいんだが。


「なんだ?お前草吸うんか。金食いだなぁ」

「草より酒だろー」

 サントスとルーカスに言われる。

 酒とタバコは似て非なる嗜好だよ。


 

「ふぅー」

 外に出てテラスみたいになってる場所で座る。

 ビール飲みたいが、ランガとヤンが大騒ぎしそうなので我慢。


 あれ?好き勝手に生きるって決めてたのに制限が多くないか。


「あいつらはここらの調査で残るから明日からは少し静かだぞー」

「ミンミとイルナは付いてくるよー」


 子供の扱いはゴンザレスとアイアンのが上手いけど、メイの相手は女の方が良いだろうね。


「なぁー、草と酒売って〜」

 コイツらは最初からこれだなぁ。

「酒はドットたちからあとで怒られるんじゃねぇか?」

「怒られても欲しい〜」

 懲りないな。


 シガリロを十箱出したら二人仲良く五箱ずつお買い上げだ。

 酒は今日買った日本酒飲み比べセットを一本ずつ出した。容器変換しておいたので瓢箪みたいな徳利で出て来たぞ。

 面倒なので酒代は銀貨一枚って言っといた。


「おお?変わった酒だな」

「ん?嗅いだことのない匂いだ」


 俺も一本。ラベルがないから鑑定しないとどこの酒かわからん。が、今は別にどうでも良いか。


 コップに移すのが面倒なのでそのまま〈急冷〉した。


「おい、今何した!?」

「この酒は温めるか冷やすかしたほうが美味しいから」

 ランガは魔力の流れを見て驚いたらしい。


「氷魔法使えるなんてすげ〜」

「仕えてもこんな繊細なこと普通せんだろうが」


 また普通じゃなかったか。


「俺のも冷やしてくれ」

「俺も!!」


 これは吟醸酒か。俺は大吟醸より吟醸酒が好きだ。


 久しぶりの日本酒の香りと味を楽しんでるとランガとヤンが震えている。


「大きい声出すなよ。ドットたちに騒がれる」

「「ああ・・・」」


 なぜかすでに顔が真っ赤だ。そんなに弱くなかったよな?


「こんな水みたいな飲み口なのにガッと喉に来て香りが良いなんて・・・」

「ジェイルのワインよりすげー酒があるなんて」

 コイツらウオッカとか出したらどうなるんだろう??


「温めても美味しいってどんな感じだろうなぁ」

「不思議だねー」


 すでに酔っ払いの気配。


「ジェイルゥ!おかわりあるぅ!?」

「あったかいの欲しいー」 


 三百mlとかで酔うならやめておけよ。


 


_________________


〈新月の雷光〉

 ドット 

 ドレイク 

 クレイバー 

 シャート 

〈鋼鉄の拳〉

 ランガ

 ヤン

 ヴァロ


〈海の渦潮〉

 アッシュ

 サントス

 ゴンザレス

 ミンミ

 イルナ


〈水平線の彼方〉

 ルーカス

 アイアン

 ロゴス

 ギャレット



保護した子

メイ ディエゴ ジャン ユング


シルスァン・ラシャドル

ミシェル・ラシャドル

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