子供のお守りは大変


 お口が聞けない腑くんをドットがズタ袋?麻袋かな?を頭から被せて上半身隠した。ギリイケるのか?

 

 俺はオオカミを回収して、血溜まりに土を蹴り入れる。放置したら魔物が匂いに釣られてやってくるから。っても土くらいじゃ臭い消しにならんくない?

 〈浄化〉はシャートがやれないなら一般的じゃないっぽいからやめておいた。


 ヴァロは腹減った~と騒ぐけど、まずシャートたちの元に戻らないとだろ。


 腑くんは自分で歩けって言っても無理だったのでドットが縄で脚を縛って引き摺った。地面ゴツゴツだから痛いだろうね。カイワイソス。


「なぁ、ジェイル、そんな刀持ってたっけ?」

「名工の品だろう」

 さすがに鞘に仕舞ってあるから光ってないけど、その鞘も良いから気になるか。


「マジックバッグに入れてたやつ。世界一の鍛治師が作ってくれた」

「「世界一ィ!?」」

 この世界のレベル知らんけど。この世界の鍛治の神様だから、嘘にはならんよな。


「プスケル・ドンに頼んだのか?金持ち過ぎねぇか」

「まさか特殊鉱石・・・」

 プスケルドン?恐竜みたいな名前だな。

 この世界一って言われてるのはプスケルドンと言うのか。いつか刀を見せに行かされそうな相手。


「プスケルドンを知らないけど、俺の武器のことはどうでも良いだろー」

「・・・感覚が違い過ぎるぞ」

 ぶー。「ほらよ」って感じで渡されたんだぞ。


 腑くんのせいでゆっくり歩くから遠慮なくタバコを吸う。


「お前、草吸いは金食い虫だぞ」

 ドットが言うけど、酒飲みとそう変わらんのよ。一晩中飲むのとタバコだったら酒のが高いだろ。

 俺は酒も好きだが酒は数杯で良いんだ。


「煙草はお前らが思うほど金掛かってないんだ」

 勝手に金貨出してくるのが変。

 ま、日本だと値上げがムカつくけど外国のがまだ高いんだよな。


 やっとシャートたちのいる場所に着いたと思ったら「ぎゃーん」と声が。

 子供の泣き声かと思えば、シャートが泣いてた。

 腑くんを木の裏に置いて子供たちに見えないようにしてから近付くとシャートがジャンとユングに馬にされてた。

 骨折れたり打撲してるはずなのに元気だな。


「あー、ジェイル!!遅いよ!変わってー」

 ヤダし。

 甥っ子姪っ子、ツレの子と今まで俺がどんなに苦労したことか。


 可愛いなぁって思う時期はあっという間に過ぎ去って、戦隊ごっこでキックされて馬乗りされて、酷い目にあってるのに、

「あらら、おじちゃんが大好きなのねー。遊んでもらえて良かったねー」

で済まされちゃうんだぞ。


 女の子なんかおままごとで暴力なしってホッとしたのに、

「うちのムスコはかいしょなしなのよ。彼女なんていたのとなーいのー、おほほ」

とか、絶対に親たちの言葉を聞いてて、俺の精神を抉ってくるぞ。

 子守り怖いんだぞ!!!


「このおじさん達だぁれ?」

 ちょっと警戒した顔のメイがドットとヴァロを見て首を傾げる。

 ドットはおじさんに慣れてるみたいだけど、ヴァロがガーンと落ち込んだ。

「シャートとジェイルの仲間だよ?」

 

「シャートちゃんの仲間!!」

「「シャートちゃん!?」」

 うん。図々しいよね。


「なんで俺がおじさんでお前がシャートちゃんなんだよ!」

 ヴァロ、気にしすぎだよ。ぶっちゃけ十歳未満の子供にしてみれば、俺もおじさんだぜ。


 人好きのするヴァロはあっさり馬の仲間にされてる。


 ドットがまだ意識が戻ってない貴族らしき子を確認した。


「依頼の子供に間違いないだろう」

 はぁ。王都行き確定だよ。ポルドスで誰か変わってくれないかな。


「魔道具で長時間結界張ってたらしいよ」

「そうか。他の子も守ってくれるとは将来頼もしいな」

 良い領主になってくれるってやつ?


 腕に抱かれている幼児が全く起きてないんだけど、大丈夫かな。水分とか。トイレとか生理現象もあるじゃん。


「ちびだけ起こすか」

 ドットが幼児を抱き上げようとしたら、男の子の目が開いた。


「・・・」

「悪りぃ。起こしたな?お前さんは身体大丈夫か?」

 ドットが声をかけると、男の子は目をパチパチさせてから周りを見る。


「助かったんですね・・・」

 おお、整った顔に品のある雰囲気。声も穏やかで、育ちの良さがわかる。


 男の子は、シルスァン・ラシャドル十一歳で、幼児が、ミシェル・ラシャドル三歳だそう。


「怪我は無さそうだが歩けるか?」

「・・・はい」

 男の子は自力で起き上がろうとして少しよろけた。

 ドットが手を貸して他の子供たちの近くに座らせる。


「お兄ちゃん!!良かった」

「助けてくれてありがと!」

「うぇぇ・・・」

「良かったよぉ~」


 子供たちがシャートとヴァロを蹴り避けて男の子を囲む。

 怖い思いをした中、一緒にいて守ってくれた男の子をみんな心配していたんだな。


「痛い思いさせてごめん」

 男の子は怪我をしている子供達を撫でて謝る。自分も相当怖い思いしただろうに良い子だな。


「ふぇぇ・・・」


 みんなの声で起きたのか幼児が泣き出した。





_________________



現場直行、調査組

ドット シャート ヴァロ ジェイル


馬車組 御者二人

ランガ ヤン ドレイク クレイバー



保護した子

メイ ディエゴ ジャン ユング


シルスァン・ラシャドル

ミシェル・ラシャドル



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