初採取で町の外へ

 若干、寝不足。

 〈ルーム〉に入って朝シャンと洗顔、歯磨きして、コーヒー。


 〈洗浄〉で済んじゃうんだけど、なんかルーティン?


 着替えはゴス風味で、ダメージ加工無し。

 エンマさんにほっこり布で縫われそうだから。


 刀を出して、剣帯がないと思い至って慌てて作る。 短銃と小型ナイフも装備出来るようにした。


 ちなみに銃は女神さまがライフル、リボルバー、散弾銃だけくれて、他は勝手に作れって。

 玉はこの世界にない物がこぼれ落ちてたり逃げた魔獣の体内に残ったりが困るから、魔力を込めて撃てって。

 土、水、風、火、雷、氷、どれでもやり易いので。


 威力出るかな。


 刀を無限収納から出して装備しようと思ったら、なんか作った時より重い??


 ピコン。

 

 スマホから何かお知らせが?


 画面にメールのアイコンが。


 アプリ勝手に増えていくスタイル??


 開くと何通か来てる。


 差出人に、ヴェールって。


 タイトルは「お礼」


 昨日、酒とおつまみ送ったから??


 開くと、


 ============

 

 一ノ瀬成 殿


 この度は、恐ろしく美味な酒と濃厚な『焼き鳥』『帆立のヒモ』などをありがとう。


 我らの世界には無いはじめて尽くしの甘美な美酒に気分が良くなって、成殿の作った刀の刀身に手を加えてしまった。

 切れ味と耐久度は上がっておるので存分に魔獣をぶった斬って欲しい。


 次に何か送ってくれる時は、泡盛というのを入れて欲しい。


               

            ヴェール


 ============


 あ、はい。泡盛美味いです。


 恐る恐る、刀を抜いてみる。

 俺が作った時とは段違いの輝き。


 そっと触れても指が落ちそう。


 なるほどー。鍛治の神様はすごい。


 これ御神刀じゃないか?ヤバ。


 深く考えるのはやめよう。

 泡盛いっぱい献上しよう。


 最後に髪を軽く纏めて、姿見でチェック。


 うはー。自分の好みの顔になれるって良いな!!

 人生楽しいぞ。


 〈ルーム〉を出て、部屋に置いている荷物は無限収納に入れる。大荷物(偽装)カバンだけ壁に寄せて置いておく。

 食堂に行くと昨日のお兄さんたちが。


「おっす!」

「起きれたかー?!」


 昨日(いや今日だが)より小綺麗な姿になってる。ヒゲ剃ったり着替えたりか。


 ちなみに〈新月の雷光〉は大男の拳士ドット、老け顔剣士ドレイク、おちゃらけ盾士クレイバー、呑兵衛魔法師シャートの四人のBランクチーム。


 やたら構ってくるのがドットとクレイバー。


 〈小鳥の止まり木〉のボルクさんは、彼らの師匠の元仲間で大剣を振り回してたんだって。


「俺たちは今日は西の森だが坊やはどこ行くんだ?」

 俺は昨日の門番に銀貨五枚返還してもらってから、そのまま採取に行く。


 依頼の薬草は、東西どこの森も生えてるから。


「東の森~。俺は薬草採取だ」

「ほー!一人か?オジサンが着いてっちゃろか?」

「いらないよ」

 クレイバーが自分でオジサン言っちゃう。多分三十代。元の俺より若いって。

「おいおい、クレイバー!俺たちの依頼があるだろうが」


 エンマさんが俺の分の朝ご飯を運んできた。


「おはよう、坊や」

 俺、坊やで定着??やだよ。


 朝ご飯、鳥に濃いめのソースに野菜ぎっしりキッシュ?だった。

 朝なのにしっかりしたご飯だ。


「こうでもしないとみんな野菜食べんとね」

 思いやりと優しさが詰まってるのね。


「じゃ行ってきまーす!」

「行ってくる」

 俺がキッシュを食べてる横でドットたちが出ていった。


「ごちそうさまでした」


 独り身長いと人に用意してもらう食事のありがたみは身に染みてるからな。

 

「うふふ、その手を合わせるのは故郷の習わしかね?」

「そう、恵みをくれる神様と食材を生産してくれた人と食事を作ってくれた人に感謝する気持ちで」

「まぁまぁ!」

 

 外国でも食事の前にアーメンとか言うから当たり前のことだと思うけど、この世界ではないのかな。


「自分のうちではマーマか食事担当が「どうぞ」と声をかけるくらいね」


 食事を出す側が声を出すのか。

 ってマーマって海を泳ぐ金髪少年が思い浮かぶ年代の俺。


「良い習慣ね」


 エンマさんに鍵を返して、「いってきます」と外に出た。


 朝だと結構人が歩いてるな。


 屋台はみんなやってない。この町ではお昼は基本的に食べないで、小腹が空いたら屋台で買うらしい。


 パン屋を見つけて、昨日のソーセージ食べるの忘れてたのを思い出して、挟んで食べようと思い至った。


 んー、ハードパンだ。ノーマルと干し葡萄とスパイスの三種類。

 一個ずつ買った。

 

 なんとなく恐々接客されたのは、この格好のせいか。

 ファッションを優先するのって大変なんだな。


 だが俺は負けないぞ。

 着たい服を着るんだ。


 ドクロのビョウもチェーンも使ってないシンプルめなのにね。


 こっそり無限収納に閉まって、リトルシガーに火をつけた。

 ん、味が濃ゆい。いい匂い。


 もう人目は知らんと門に行くと昨日のワイドさんがいた。


「お!昨日のまっさらくん!身分証出来たか?」


 大きい声で言わないで。

 慌ててギルドタグを渡したよ。


「俺はジェイルっていうんだ」

「おう!ほら銀貨五枚な」


 デリカシー無さ男め。


「外出るのか?気を付けてなー」


 俺より若い連中もワラワラ出ていく。遠巻きに。


 入場待ちは少ないけど、朝だからか。


 スマホのMAP見るとこの辺の地図と目的の薬草がありそうなポイントが出る。超親切。


 〈転移〉は自分で座標マーク付けないと出来ないみたいで今のところどこにも行けない。


 東門の昨日いたあたりでマーク付けた。

 宿にも付けるべきだったか。


 バイク出すほどじゃないので少し歩いて森の入り口。


 常設の新人用依頼だけあって、優しめだ。

 すぐに見つかった。



 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る