ルームでまったり

 解放されたのは深夜二時。

 半分くらい食堂で雑魚寝してた。


 彼ら〈新月の雷光〉は〈小鳥の止まり木〉を定宿にしてるらしい。

 なんか、見た目ゴツくて無精髭で汗臭そう(偏見)なお兄さんたちが、ほっこりお宿にーって思ったけど、そもそも旅行者は商人くらいで、たまに女冒険者チームとか来るかなって程度な田舎だから、新しいお客が珍しい。

 宿にはヤンチャな冒険者が泊まってるのが普通だって。

 料理もガッツリ系だったし、納得。


 俺は部屋に戻ると〈洗浄〉をかけた。

 口の中までスッキリで、酒の匂いも消えちゃうな。これタバコの味と香りも消えるじゃん。


 部屋で酒もタバコも好きにして良いらしいけど、やっぱ気になるからさ。


「〈ルーム〉」


 パッと視界が切り替わって、俺は自宅の部屋に。


「おー!」


 モノクロで統一した俺の部屋!


 スーツと靴下、雑誌と新聞が散らばってるのはご愛嬌。

 本当に丸ごとだ。


 無限収納の中って窓の外はどうなってるんだと窓辺に行ってみた。

遮光カーテン開けたらさ、真っ暗。

 どうもシャッター?そんな感じで塞がってる。


 景色も考慮して、大窓の部屋なのにな。

 まぁ、無限収納=亜空間だとして、窓の外見れたところで何も無いか、俺が仕舞った物が浮いてるだけかも知れん。


 次に電気がどうなってるのか?

 

 コンセントも電化製品のコードも無かった。ついでにブレーカーのケースも。


 でも空調もライトも着いてる。


「すげー」


 冷蔵庫もコーヒーメーカーも大丈夫!


 思わず冷蔵庫開けたら、ハムやチーズ、ビール、牛乳、チューブの中華調味料、醤油のボトル、卵とおかんから送られた味噌と煮物、牛肉とか入れてたのが、使いかけで入ってる。


 冷凍庫はロックアイスとアイスクリーム、冷凍パスタとドリア、枝豆とか。


 野菜室には玉ねぎ、きゅうり、レタス、りんご、葡萄。


 そこそこ買い出しした後だった。ヤッホイ。

 これ使ったら終わりだよなぁ。まぁこれだけでもマシか。


 棚にはチンするご飯とカップ麺、カップ焼きそば、即席味噌汁。お茶漬けの素。

 コーヒー豆、紅茶缶。頂き物の缶詰とか。


 缶ビール三箱とブランデー、日本酒とワインクーラーのワインとまぁまぁ酒もある。


 

 さて!タバコ吸おう。ブランデーもちょっと良い物飲んじゃお。


 この部屋は禁煙って言うか、吸い始めるとやめれなくなって、会社とかでイライラしそうだから完全にタバコをやめてたけど、もう解禁!


 部屋にも〈洗浄〉使えるから臭いとヤニの心配無し。物は片付かないけどね!


 ご機嫌だね!


 アイスペルとおつまみをテーブルに並べて。


「あ、灰皿とシガーカッターがない」

 

 携帯灰皿があるのでとりあえず、ポッケから出して一本。

 

 ブランデーグラスに氷入れて、ブランデーを注ぐ。


「クゥー」


 うぉー。なぜ女にうつつを抜かしたんだ。

 一人でこんな時間を持てれば十分だったろ。


「あ、買い物」


 タバコは人前では葉巻はやばいと判断した。

 一本一万な高級品だから。

 なので、普通のを。見た目的にはリトルシガーのが無難かも?

 ほら薬屋で自分で葉っぱ巻くの買ったじゃん。

 

 リトルシガーも結構種類があるな。

 ワイン風味のとカカオにしてみるか。


 ワンカートンずつって言うか女神さまにもだからツーカートンか。


 灰皿とシガーカッター、シガーケースとマッチとライターも売ってたから買う。


 後は酒。部屋にある分は気ままに飲むとして。


 テキトーにぽちぽち。

 ぶっちゃけ普段は飲めればなんでも良い。


 ツマミは缶詰と燻製を見つけたので辛そうなのをポチッとな。


 ティアランシアとヴェールの分を振り分けて、プレゼントボックスに送った。


 俺まだこの世界でタバコのボッタクリしただけで稼いでない。

 今のところ余裕だけど、この神様たちの人数分貢ぐならちゃんと増やさないとだな。



 さて、明日の採取に入りそうなスコップとクワとハサミを創造魔法で。

 

 ついでに動きやすそうな服をゴス風味で。

 リュックはやっぱあった方がいいか?

 

「あ、剣・・・」

 鍛冶屋で買うべきだったか。

 剣持ってないの笑われたし。


 剣って言うか刀の方が馴染みがあるよな。修学旅行の木刀みたいな。


 あんまり長いのは邪魔だし。いざとなったら銃使うつもりだし。


 まんま日本刀は目立ちそうだから少し装飾を洋風にして。


「ん、こんなもんか。創造魔法で作ったから鈍らかも?」

 

 鍛治までやれないな。


 

 薬屋で買った刻み煙草を出して葉っぱで巻いてみた。

 葉っぱは薄く乾燥させてある。


 フィルター無しだと細かいの口に入りそうだな。

 慎重に巻いて、なんとか吸ってみる。


「・・・ぶほ」

 原初?鼻が荒々しい匂いで痛い。野生だ。

 吸ったことないけど麻薬みたい。ちょっとクラっときた。


 〈鑑定〉にはヤバいこと書いてない、ただの煙草だけど。

 吸いやすく加工されてる地球のタバコ、ありがとう。


 お高い葉巻は明日にしよう。

 


 よし。このまま部屋で寝たいけど、向こうの部屋覗かれたらヤバいし、向こうで寝よう。


 目覚ましは、マナーモードでバイブ。

 数時間しか寝れんが良いか。


 あ、トイレ行っておこう。


 宿のトイレは板に穴空いてる汲み取りタイプだった。尻拭きはゴワゴワなハギレ。

 用を足したらバケツの草と砂をかける。


 俺、カルチャーショックだった。


 俺を坊ちゃん認定したお兄さんたちが、「便所がなんだってぇ?坊や!野糞はどうしてたんだ。冒険者は外ばっかだろぉ」って。


 絶対〈ルーム〉でやるよ。



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