マジか!

 扉を開けるとちょっとばぁさんちの匂いみたいな。

 薬草、生薬、ハーブかな。


「・・・らっしゃい。何が欲しいかね」

 小さい婆さんが出て来た。

 

「んー、虫除けとかある?」

「あるよ」

 そういえば、ファンタジーなら欲しい、見たいってのあった。


「ポーションは置いてる?」

「ここは薬屋だよ。あるさ」

 そうだよね!


「ただし下級だよ。中級もあるが数はない」

 この田舎町じゃ中級以上はお高くて中々買い手がいないから置いてないんだと。

 ポーションも消費期限があるんだとか。


 そんなわけで下級の体力回復、魔力回復、五本ずつ、毒消しを三本。


 俺、多分作れるし、必要も無さげだけど、なんか欲しいじゃん。


「あと煙草が欲しいんだけど」

「はぁん?葉っぱか?葉巻か?刻みか?」

 

 葉っぱ?


 婆さんが棚から出してくれたのは、葉っぱ状の噛み煙草か、自分で巻く刻みタバコだった。


 んー、噛み煙草は俺的にはニコチン中毒末期(偏見過ぎ)だな。今はまだ早い。


「葉巻と刻みで」


 箱から出して来て見せてくれたのは、刻みが粗いのだった。

 ふむー。

 量り売りだったので百グラムにした。こっちはグラムはアムって言うらしい。

 百アムで銀貨四枚。

 巻いて吸うように乾燥した葉っぱ十枚くれた。


 葉巻は太めだった。


 葉巻が一本で金貨一枚(一万円?)だったので、一本。ちょっとビビったぜ。


「葉巻なんざ金持ちの吸うものだよ」


 だろうね。さすがに一本一万はなぁ。


「ちょっと吸ってみたかっただけ」

「そうかね」


 あれだ。二十歳になってイキがって強い酒とかカッコいいタバコを買うヤンチャな俺に酔いしれる痛いヤツ。

 まぁ人目なんかどうでも良い。


 婆さんもなんか気の毒な男を見てる目だけどな!


「じゃありがとさん」

「はいはい。またどうぞ」


 欲しいものを買えたので礼を言って店を出た。



 しかし刻み煙草。葉っぱ巻いたら葉巻じゃね?


 店出てすぐポッケから一本。


「ふー」


 今買ったやつは後でゆっくり試したい。

 宿じゃ吸えないっぽいから、どうしようかな。


 宿に戻りながら、物の値段を多少確認してみると、食料は日本円の感覚と似た感じか少し安いくらいかな?

 薬や煙草はちょっと割高だったかな。


 本屋っぽいのは無かった。紙高いのか?あ、手書きとか?


 夕方五時過ぎ、冒険者ギルド周りに人が集まってた。帰って来たのか。


 遠目で見てるとマジでアニメの世界。

 防具や盾、剣、杖を持ってるのが見える。

 女冒険者、ビキニアーマーじゃ無かった。露出は少なめ。そっかー。

 リアルは、しっかり防護出来るの着てるわな、そりゃそうだ。


 ギャルみたいな格好の美少女とかいるわけないない。


 ゴツいおっさんだけ上半身晒してる。誰得なんだ。マッチョ好きか?

 胸当てみたいなのと肩当ては付けてる。


 まぁ絡まれたら面倒だし、宿に帰ろう。


 〈小鳥の止まり木〉に戻ると、おばちゃんが出迎えてくれて、鍵を渡してくれた。


「おかえりぃ」

「ただいま」


 なんかほっこりするなぁと思ったら、奥からゴリラくらい大きなオッサンが出て来た。


「ああ、紹介しようねぇ、旦那のボルクだよー」

「ああ、そうでしたか。俺はジェイル。しばらく世話になります」

 ポカーンと見上げちゃった。ゴリラ(失礼)が〈小鳥の止まり木〉ってセンスよ!

 おばちゃんの案?持ち物??だったかも。


 おばちゃんは、エンマだって。


「ご飯は六時だから先にお湯出そうかね?」

「お湯?」

 お茶じゃないのかと思ったら、部屋で身体拭く用だって。

 風呂がないのか・・・。


「お湯お願いします」

「あいよぅ」


 木製の洗面桶一杯を運んでくれるって言うけど、女性に重いのは悪いと思って自分で運ぶと言ったら、

「あんれぇ!私を女の子扱いしてくれるのかねぇ!」

と、バンバン背中を叩かれた。

「めんこい坊やより力持ちだよぅ!でもせっかくだからお願いしようかね!」

 めっちゃご機嫌だ。


 俺、あのアンナに荷物持ちさせられてたし、普通なことだと思ってたよ。

 フライパンも重いとか頭沸いてたけどな!

 あ、なんか目から汁出そう。


 洗面桶をもらって部屋に戻った。


 ふむ。風呂が無い。

 普段シャワーだけだったけど、たまには湯船入ってたし、スーパー銭湯、サウナも行ってたから、全く入れないのは嫌だな。


 とりあえず手拭いでザッと顔と身体を拭いた。

 俺、水を贅沢に使ってたんだなぁ。

 桶一杯で全身は大変だ。


 来てた服を洗わず着るのも嫌なので、新たに夜に着るロンTと膝丈カーゴパンツ、ゴス風味で作った。

 パンツも黒のボクサー。

 ついでにグラディエーターサンダルも。


 暇な時に下着と服いっぱい作らないと。


 さて、飯が六時は早過ぎるので七時に行くことにして、スマホをイジる。 


 ステータスとか、魔法の使い方とか、目の前に出るのじゃなくて、スマホやタブレットで見れるようにしてもらったんだ。


 なので〈洗浄〉とか〈除菌〉とか〈消臭〉が出来ないかと。


 出来るっぽい。良かった。


「クリーン(洗浄)」

 無詠唱はダメっぽいので呟いたら、身体から髪、口の中まで「サァー」っと感じて、爽やかな気持ちになった。


 めっちゃ便利ー!!


 服も??新品だったから必要無かったけど、なんかふわっとした。


 そのまま、スマホをスクロールしてたら、〈ルーム〉って出て来た。


 部屋??


 タップして詳細見たら。


【一ノ瀬成の財産、マンション2LDKを無限収納内部に設置。〈ルーム〉と唱えれば入れる】


 ふぉう!!


 家まで入ってたぜ。

 株の儲けで買ったマンション。


 でも二十七階の一区画??向こうで消えてるのか?


 ま、神様がしたことだしどうにかなってるだろ。


 マジかー。

 家まで入れてくれてるなら、秘蔵の酒もマウンテンバイクもかぁ。


 あ!


 風呂あるし、トイレも使える!!!!??


 ひょーーー!!


 


 

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