ギルド登録をして宿を取る

 昼も超えた時間。

 ギルドは閑散としていて、俺はランガに受付まで案内された。


「よぅ!プティちゃん、このオニイチャンをご新規登録してしてやってくれ」

 ランガが呼んだプティちゃんは、なんて言うかウサギだった。

 二足歩行で可愛いワンピース着た茶色いウサギ。


「こらぁ!おっさん!イジメしてないでしょうね!」

「いじめてねぇよ!」


 ランガたちは「またな」って帰って行った。報告に来たとかじゃ無かったのか?



 受付のウサギさん、話すとマズルとヒゲがもひもひしててかわいい。


「あら?獣人を見るの初めて?」

「・・・多分」

「そうなのねぇ。私はプティ、登録はこれに・・・自分でかける?」


 はぅ、手がふくふくしている。


「かける」


 俺は必要事項を書き込んでいく。


 名前、出身地、年齢、ジョブ・・・。


 出身地・・・フナバシ・・・ってダメか。


 ジョブ。猟師じゃねぇな。魔法?


 うんうんと唸ってたら、プティちゃんが、


「ジェイルくん、得意な武器で良いのよ」


 あ、何が得意かわからないけど、銃がダメなことは分かる。


 剣って書いとこ。


「フニャビャッシー?どこかしら。遠く?」

 なんか梨の妖精が飛んでった気がする。


「ソウデスネ。とても遠くてかなり田舎カナ?」

 ここよりは都会だけど、田舎って言っておいた方が良いよね。この世界には存在しないし。


「剣が使えるのね。剣持ってないわね?」

 クスクスっと言われて。


「あ、今は短剣しかないか」

「短剣・・・」

 短剣使いっているよね?


「うん、嘘はないし良いかな。これに血を一滴くださいな」

 あ、痛いヤツ。


 タグと針を出してくれたので大人しく指を刺して登録完了。


「スキルや情報は人に見せちゃダメよ」

「はい」

「まずはFランクから。一カ月仕事せずギルドに顔出さないと登録解除になるから気を付けて」


 おおー。冒険者になったどー。


「他に質問とかある?」

「んー、良い宿を教えてほしい」


 ギルドの近くの〈小鳥の止まり木〉ってかわいい名前の宿を紹介してもらった。


 Fランクは薬草採取や掃除、手伝いが主だった依頼だから、常設依頼を確認して日にちに余裕のあるのを採取を二件やることに。


「何かあったら聞きに来てね」


 そこそこのギルドに受付一人と食事ブースにコック?マスター?らしきおっさんと給仕のお姉さん。んで、買取カウンターに居眠りのおっさん。ちょっとした備品を売ってるらしい売店にもおっさん。


 確かに田舎っぽい風情だ。



 ギルドを出て教えてもらった宿を目指すとすぐに見つかった。

 通りがかりに町の人とすれ違ったけど、やっぱ遠巻きだ。ゴスはダメかな??


 目的の宿は〈小鳥の止まり木〉と言う名のとおりほのぼのとした建物だ。

 俺入ったら怒られない?


「すみませーん」

「はーい」

 声をかけると奥からエプロン姿のかわいいおばちゃんが出てきた。


「あんれー、めんこい殿方でねの!なん用かね?」

「あ、しばらく泊まりたいんですが」

「おんやー。珍しかね!よかよかよ!何日お泊まりかね」

 めっちゃ訛ってるけどどこの人かね。


「一泊素泊まり銀貨四枚、食事付きなら一泊二食で銀貨五枚よ」


 おお、銀貨はやっぱ一枚千円って感じか?安い宿だ。


「じゃぁとりあえず十日ほど?食事付きで」

「まぁ!じゃぁ金貨五枚ね。お部屋は二階の角部屋にしてあげるけ」

 階段登って右の奥と説明を受けた。


「夕飯は夜六時から九時まで食堂で、朝食は朝五時から八時までやけねー」


 時間は一日二十四時間で表してる。良かった。


 鍵(板)を受け取って、二階に上がって部屋に入ると、カントリーなほっこりした部屋だ。


 ベッドカバーがパッチワーク?あ、ただの継ぎはぎか。


 ビジュアル系衣装の俺と言う存在の異物感が半端ない。


 まぁ寝るのはどこでも寝れるから良いや。


 さて、町を見て回るか。それとも無限収納に入っている俺の財産チェックをするか?


 チェックは寝る前で良いからとりあえず物価と売っている物を調べたいな。


 ・・・この可愛らしい部屋をタバコ臭くして良いものか?


 良くないよなぁ。


 困った。


 薄汚れた宿を紹介して貰えば良かった。


 まぁ、外で吸うか。歩きタバコダメじゃないよな!


 下に降りて「買い物してきます」と鍵を預けて宿を出る。


 今現在は午後三時過ぎだ。


 人が少ないのでタバコの火を付けて吸う。


「ふー。なんだかんだ好きに吸えないのは染みついた日本人のサガか」


 嫌煙、嫌煙っ!てな。


 少し歩けば、まばらに商店と屋台が。


「おー、変わった服の兄さん!見てっておくれ」

 声を掛けてくれたのはソーセージ?を売っってるお兄さん。


 フランクフルトみたいなサイズで銅貨四枚。四百円。


「んー、タバコ終わるまで待ってくれる?」

「良いすよー。それ変わったタバコやね?高級品?」

「そうかな。もらいものー、普通の買いたいんだけどどこに売ってるか知ってる?」

 変な顔をされる。


「そんな良いもの吸ってて普通の吸いたいのか?薬屋で見てガッカリしないかね?」

 マジか。どんなタバコ売ってるんだ。


 吸い殻を携帯灰皿に入れて、ソーセージを買う。


 あ、この世界で初の食べ物か。


 竹串だ。


「どうっすか?うまいでしょ」


 うん。ハーブたっぷり肉肉しい味だ。

 この世界もしかして香辛料は高いのか。胡椒は使ってなさげ。


「うん、しっかりした味だな」


 ビールと一緒がいい。


 天井から葉っぱがぶら下がってるのはなぜか聞いたら持ち帰り用だって言うので追加で五本買った。

 あとで胡椒かマスタードで食べたい。


「あざっす!」


 一本おまけしてくれた。


 また来てねと愛想のいいお兄さんと別れて、店を覗いて歩く。


 ふーむ。道具屋くらいしか興味が持てそうにない。


 少し奥まった路地で薬屋と魔道具屋を見つけた。

 魔道具屋はクローズだ。残念。


 まずはタバコとこの世界の薬を見てみよう。






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