一章

俺、ここでやっていけるのか?

 女神とさよならして降りたのは、大きめな街道沿いを少し離れた岩陰。


 失敗して森の中とかじゃ無くて良かった。


 しばらく人の流れを見ていた。


 ん、漫画とかのいかにもな異世界だ。


 その前に見た目をチェックせねば。


 ハンドミラーをバッグから取り出して。


 ワクワクドキドキの時間だ。



「!!!!!!!??????」


 俺、この世の物じゃないイケメン!!!


 リバーの繊細さ、レオナルドのアンニュイさ、ハイドさんの小悪魔的色気、ハクエイさんの圧倒的倒錯感。若干の真田さん的ワイルド感。

 混ざってる!良い感じに混ざってる。


 妖しい男になってる!!やべぇ。誰も近づけん気がする。


 金髪ロン毛にちょび髭、ダークブルーの瞳。


 アニメから飛び出た俺!!

 

「俺・・・ヤバくね。彼女出来るより俺が襲われそう」


 うほー。希望の顔だ。俺もう今のこの気持ちで死んでもいい。



 けどまずスキルを見よう。



||||||||||||||||||


name (無名) (元 一ノ瀬成) 人族 22歳


スキル 言語理解 無限収納 身体能力向上

    魔法習得 剣術 精神耐性

    創造魔法 錬金術 転移 調理

    鑑定 MAP

ユニークスキル

    タバコと酒と調味料、特定の飲食物召喚 

特殊スキル スマホ タブレット バイク 銃機扱い


 加護   ティアランシアの憐憫

      ドリアスのお願い


|||||||||||||||||||||||


 なんか色々気になるけど、俺今名無しですか。


 成(ナル)って呼ばれにくいし、元の自分とは別の人間になりたい。


 でも自分が呼ばれ慣れてるのがいいな。


 ジェイル!

 ゲームの時に使うハンドルネームにしよう。


 今の顔に合いそうだし。


 さては名前決めた事だし、人生の第一歩を進めますよ。

 

 まずはお取り寄せでタバコを。


 スマホにはインベントリとメールとショップ、音楽と画像データのアイコンが。

 ゲームとかは消えてるのか。


 ショップを開くと、コンビニっぽいラインナップにタバコと酒が。

 酒とタバコの品揃えは物凄いのに食べ物が少ない。まぁ、仕方ないかな。

 調味料はそれなりに揃ってるから良いか。


 あ、一応荷物持ってないとまずい。この格好にリュックはやだな。大きめな肩掛けでいいか。

 創造魔法で黒い革鞄を出した。多少は入ってそうな膨らみを見せる。


 さて念願のタバコ。


 廃盤品もいっぱいあるぞ。


 悩む。何が良いかな。

 ここは異世界に合いそうな葉巻にすべきか。


 とりあえず、普通の紙巻きで良いか。

 葉巻は落ち着いた場所で吸おう。


 俺はソフトケース、ワンカートン買って一つ胸ポケット、残りは無限収納に、女神にワンカートン捧げた。

 箱や紙はそのままでビニールとか消えてる。エコ?


 ついでにマッチと携帯タバコ灰皿も購入。



「ふー」

 この一服がたまらんのよ。

 口に広がる味と香り。


 咥えタバコで猫背で歩く、やってみたかったんだ。


 さて次通りかかった人に町の入り方とか教えてもらおう。


 岩陰からでて、少し歩けば馬車の列。


「・・・」

 めっちゃ目を背けられてるんだが。


 彼らの格好は、オーガニック系。

 雰囲気で言えば、森ボーイ?俺ヴィジュアル系。


 アンタッチャブルか。俺やべぇ奴か。


 やっちまった感。


 どうすっかなぁ。


「ふー」


 岩陰に戻るのもなんだし、このままも道なりに行くしかないか。


 遠巻きー。


 趣味に先走った結果怪しいヤツになった。


 まぁ日本でもゴスで歩いてたら仲間じゃないと遠巻きだな。


 俺は着たい服を着る。

 せっかく綺麗な顔になったし、似合うんだから。


「よーよー、オニイチャン?良いもん吸ってんのなぁ?」

 タバコ吹かしながら、ぼんやり歩いていたら、悪そうな三人組に絡まれた。


「それそれ~、お高い香りしてるなぁ?」


 どうやらタバコが気になってるようだ。


「タバコが欲しい時のお作法は一本ください、だろうが?」

「アアン?」

「一本?けちクセェな!」

 

 なんだと!現在のタバコ一箱は俺が吸ってた頃のほぼ倍の値段だぞ!

 お小遣い制のお父さんが泣いちゃう五百円なんだぞ。

 

「ツレでもないのに一本もやる筋合いはねえんだけどな」

 女神にならワンカートンだがな!


「ふー」

 煙だけ楽しませてやるよ。

 ただの副流煙だがな。


「おい。頼むから売ってくれ」


 あれ?奪いに来ないのか。


「二十本、銀貨五枚」

「は?」

 あれ、銀貨って千円か?ぼったくり価格か。銅貨五枚だっけ。

 通貨の基準聞くの忘れたわ。


「そんな安くて良いのかーー!?」

「ウォー」


 あ、安いの?結局銀貨の価値がわからん。


「俺にも二十本!」

「俺も」


 三人ともワンケース。

 こいつら火種あるんかな。

 あ、火魔法っすね。


 喜ぶガラの悪い三人に怪しげな俺。


 馬車の連中、ちょっと早足で行っちゃったじゃないか。


「うめぇ!なんじゃこりぁ」

「こんなうめぇ煙草あるなんてなぁ」


 そうかよ。この世界のタバコも吸ってみたいがどこで買えるんだ。


「お前、こんなの売ってくれていいヤツだな!」

 ぼったくりタバコでいいヤツ認定。チョロいのか。この世界。


「そんでこんな田舎に何しに来たんだ」


 あ、田舎なんだ。


「んー、気ままに旅をしている」

「はぁ?」

「お前どっかのボンボンか?」

「護衛は?なんで一人なんだ」


 あれ。お金持ちそう?


「いや、一人旅」

「マジか」


 なぜか和気藹々?で一緒に歩いている。


 門まで一緒らしい。


「あー、忘れてた。俺たちはこの街近隣で冒険者をやってる〈鋼鉄の拳〉の俺はランガ」

「俺はヤン」

「俺はヴァロ」

 

 第一冒険者発見!!


「俺はジェイル。冒険者になりたいと思っている」

 そうそう、身分証作って貰えば良かったのに忘れてた。


「は?お前幾つだ。今更か!」

「え、あちこち旅してたのに冒険者タグなしで一人旅!?」

 

 あちゃー。設定がパンクしたぞ。


「いやー、なんとなくこうなった?」

「お前めちゃくちゃだな!」

「なんとなくで生きてるのか!」

「すげぇな!」


 何が面白いのか爆笑されまくった。


 馬車や荷物籠をしょった人たちが門に入っていく。


 やっと俺たちの番になった。


「お、ランガ、今帰えりか?」

「おう」

 三人が冒険者タグを一応見せる。


「ん、初めましてだな。身分証を」

「何も持ってない」

「「「「ハァ!?」」」」

 まぁそうなるよな。でも無いものは無い。


 創造魔法で作るのは違法っぽいしな。


「入れないか?」

「・・・いや、これに触ってくれ」


 差し出されたのは水晶玉もどき。アニメで見たー。


 ピカーっと白く光った。


「へぇ、犯罪歴無し。少しも濁りがないのはめずらしいな」

 小さな嘘や浮気なんかはほんのり濁りが出るらしい。

 高性能嘘発見器!!


「はぁーん?まっさらか?」

 え。

「恋人でもいれば多少はイザコザあるもんよ」

 こんなので童貞がバレた。


 門番のワイドめ!大きな声で何言うんだよ。


「お前そんな綺麗な顔で何もねぇのか?」


 やめて!憐れまないで!


「美人すぎるとダメってかー」

「かーわいそー」

 コイツらいつかコロス。


「オネエチャンとこ行くか?奢るぞ」

「いらないよ!」


 なぜ大事(!?)に取ってあるのをお金払って捨てるのさ。


「女に幻想持ってんのか?適当にやっとけよー」


 うわーん!強者の笑み!!


 結局、犯歴無しで銀貨八枚支払って入れてもらった。

 身分証作ってから見せにきたら銀貨五枚返ってくるらしい。


「ほれ、ギルド連れて行ってやるから」

 同情するなら金をくれ! 


 ランガに肩を組まれたまま、ウェスタンな建物に連れ込まれた。










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