第3話
結局、その日も私は警察のお世話になってしまった。
この前とは別の警察署に連れていかれたのに、二回目ということもバレていて、しっかり住所氏名控えられてしまった。
ようやく解放された帰り道。とぼとぼと歩く私には、もうこれまでの情熱はなかった。
私はただ、男の子を「少年」って呼びたかっただけなのに……。
全女子の憧れの、「少年呼びお姉さん」になりたかっただけなのに……。
未就学男児の
清らかで純粋なそんな願いは、叶えられることは出来なかった。私の夢には……敵が多すぎる。
二度も公的権力に怒られてしまったことで、私の心は完全に折れてしまっていた。
もう、いいや……。きっと「少年呼びお姉さん」はフィクションの中だけの存在で、実在なんかしない……実在しちゃ、いけないんだ……。
自分の中の芯の分が失われて抜け殻となっていた私は、亡霊のように実在感のない足取りで歩いていた。
と、そのとき。私の隣を、一台の大きなバイクが通り過ぎていった。
そのバイクを運転していたのは……真っ黒なレザーのライダースーツの人。全身にぴったりと張り付いたそのスーツのシルエット……それから、フルフェイスのヘルメットから伸びる黒い長髪から、それに乗っていたのが女の人だと分かった。
あ、そうか……。
通り過ぎていく彼女の姿を見ているうちに、無気力だった私の心に、なくしてしまった情熱が戻っていく。これまでよりもずっと強い、新しい生きる目的が、ムクムクと湧き出してくる。
男の子を少年呼び出来なくても……男の子と上手に話せなくても……いいんじゃないの? だって、だって……他にも癖は、たくさんあるんだから!
少し先の自動販売機の前でバイクを止めて、乗っていた女性がヘルメットを外す。そして頭を振って、長い髪をたなびかせていた。そんな彼女の姿を、未来の自分に重ねながら……。私はその日のうちに、大型二輪免許の合宿に申し込んだ。
私、
御寧山さんは、少年呼びお姉さんになりたい 紙月三角 @kamitsuki_san
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