第4話 拾った?
帰宅した。
俺の部屋は一人暮らしにしてはそこそこ広い。
それこそもう一人泊まれるくらいには。
ソファに彼女の体を横たえる。
俺も息が切れたし、水でも飲むか。
流しに行って、浄水器をひねって水を嚥下えんげして、人心地つく。
ふう。
さて。状況を確認しよう。
空から女の子が降ってくる。
名乗る。
へんなウィンドウが出てくる。
放っておけないので、とりあえず家にあげる。←イマココ
うん。わからない。非日常感満載であることしかわからない。
とりあえずウィンドウの方を確認しよう。
名前 直方仁
Lv 85
職業「異世界主人公(召喚予定なし)」
技能「鑑定」「言語理解」「威圧耐性」
称号なし
ふむ。これだな。
落ち着いて一つずつ見ていこう。
まず。名前。うん。俺の名前だ。何もおかしなところはない。
次はLv。
確かにダンジョンでは発現する。
この前測ったのと同じ数値だ。
まあ、これも置いとこう。
そして、職業。
「異世界主人公(召喚予定なし)」
もう、諦めた。⋯⋯どこかでうまく使えないだろうか。
まだ未練があるな。
技能。
新しく発現したやつだ。
まずは「鑑定」。うん。基本にして最強の能力だな。
相手の能力が最初からわかっていたら情報アドバンテージは莫大なものになる。
例えば、家に連れてきた彼女とか。
ゆっくりそちらを見て、意識を失っているのを見て安心する。Lv666って書いてたよな⋯⋯。
どう足掻いても勝てない。
いや、女の子に戦闘力なんか関係ないしね。むしろあった方が嬉しいかもしれない。
とりあえず、この謎システムに関するものが見えるらしい。
発動範囲はおそらく視界に入ったものだ。
次の技能は「言語理解」だ。
心当たりはある。さっき、彼女の言葉が理解できなかった。
だが、謎のノイズが走った後、はっきりと彼女が何を言いたいかがわかるようになった。
俺の言葉も彼女に正しく伝わっていたみたいだ。
おそらくこの力は、言葉が通じない相手に対してもコミュニケーションが可能になる能力だ。
文字を書く場合はどうなるかは要検証だな。
何はともあれ、あって損はない能力だ。
召喚予定はないけど、異世界なら便利に違いない。
現実世界でも海外旅行とかで使える。
もう一つの技能は「威圧耐性」
多分威圧されにくくなるんでしょう。本当の効果は知らないけど。
あってもいいけどなくてもいいって感じだ。
称号はなし。
うん。普通だな。
今日これが見えるようになっただけの普通の大学生だから、称号がないってのは納得できる。
彼女のも検分しておくか⋯⋯。正直見なかったことにしたい。
でも、気になるよな⋯⋯ 。
なら情報はあった方がいいだろう。
名前 トライヘキサ
Lv 666
職業「槍使い」
技能「縮地」「槍捌き」「水魔法」「火魔法」「収納」「人柱力」
称号「血槍姫」「魔物の敵」「ダンジョン踏破者」「滅ぼせしもの」「逃亡者」
⋯⋯Lvは考えないことにするとして。
技能の時点で強そうな感じがする。
「縮地」は体を早く動かす能力だろうし、「槍捌き」は槍の扱いが上手いんだろう。
「水魔法」と「火魔法」もあるし、「収納」というおそらくチートな技能も持っている。
最後のはよくわからない。「
○ルトかな? 一体何尾が入ってるんだ⋯⋯。
多分そういうことじゃないとは思う。そうじゃないといろいろやばい。
総じて、戦闘向きという感じだ。
ついで称号を見るか。物騒なのが並んでる。
まず、「血槍姫」
技能や職業を考えると、槍姫というのはわかる。
血が加わってるのは意味わからないし怖いけど。
鮮血を散らせて魔物を殲滅していく彼女の姿が想像できる。
「魔物の敵」
これはおそらく何千体の魔物を討伐したら手に入れることができるものだろう。
戦闘職の行き着く先みたいな。
「ダンジョン踏破者」
ダンジョンを踏破した証。そのはずだ。
だが、今までに一度もダンジョンが踏破されたという話は聞いたことがない。
彼女は一体どのダンジョンを踏破したというのだろう。
「滅ぼせしもの」
何かを滅ぼしたらしい。普通に考えればダンジョンだろうが、前のとかぶるからな。
別の何かを滅ぼしたのか。心当たりはあるような。ないような。
「逃亡者」
何かから逃げてるらしい。何をやったらこの称号がつくんだろうか。
やっぱり不穏だ。
まとめると高すぎる戦闘能力と、いろんな裏事情がありそうと言う感じだろう。
これからどうなるか全然わからない。予想ができない。
でも。
彼女の姿を見る。
褐色の肌は健康的で美しく、白髪も、溶ける雪のよう。
二次元と比べても遜色ないどころか上回っている。
できれば、物語の主人公たちと同じように、彼女と冒険ができればいい。
そう思ってしまった。
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