伝説
「さあアーマンちゃん、楽しく遊びましょう?」
そう言いながら剣を抜く。
「名前も知らない人と遊びたくないな。」
「ジャック・ハイラルド。これで遊んでくれるのね?」
「ハイラルド。いい名前だね。」
「私はジャックの方が気に入ってるけどね」
雨上がりの空気は冷たく二人を包んでいた。
ハイラルドは目にも止まらぬスピードでリックに斬りかかる。
「難波津に 咲くやこの花 冬ごもり 今を春べと 咲くやこの花」
「柔化」
梅の花が舞うとともに、アーマンの目には剣を避けるように変形したハイラルドが映った。
慌ててハイラルドの剣を蹴り飛ばす。
蹴った腕は柔らかく、蹴った方向に延びた腕が縮みながらリックに襲いかかる。
「柔化」
アーマンが立つ地面が柔らかくなり、バランスを崩しながらも剣を受け止める。
「っ.....!!」
だが今の一瞬でアーマンはスキルの概要の仮説を立てた。
自分を含めた対象を柔らかくすることができる。なお、他の生物を対象にすることはできない。もしできるのであれば、地面を柔らかくする必要は無いからだ。
その仮説は最悪の形で的を得ていた。
「硬化」
柔らかくなった地面は元の硬さに戻り、リックは沈み込んだ地面に戸惑う。
「なるほど、二つ使えるのか。」
「正解。」
その瞬間、後ろからドラムの声が聞こえた。
「相手はスキルを2つ持っているぞ!!!」
「もう1人正解者がいたようだね。」
そう言ってリックは詠んだ。
「あしびきの 山鳥の尾の しだり尾の 長々し夜を ひとりかも寝む」
「......!!!なぜその詩を......?!」
リックはそのセリフを聞いて、剣をしまう。
急に動きがゆっくりになり、ハイラルドは顔を青くする。
やがて元に戻るとともに沈み込んだ地面へと転がる。
「この詩を知ってるのか?!」
「その詩は...ヤバい...!おい!みんな!百人一首よ!」
その瞬間、5人の顔がひきつる。
「魔族に伝わる伝説の...百人一首よぉ!!」
ハイラルドが言い終わると同時に、黒い円が再び現れる。
5人はその円に向かって走り出す。
「まずい...!」
スキルの情報を持つ唯一の手がかりを失いかねない状況にリックは焦る。
一閃。
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