もう1人の竜
ドラムは走りながら、相手を見ていた。
細身で筋肉質でもない。
手ぶらでなんの武器も持たない。
それなのに勝利を確信してこちらを見ている。
戦場に立つのは異常な佇まいだった。
そして直感的に、先制攻撃は愚策であると判断し、ドラムは足を止めた。
「おいらはニガ・ドラム!お前の名前はなんだ!」
「俺の名はドラゴ・ソニック!わかったらさっさとかかってこい!」
だがドラムは微動だにしない。
「おいおい、来ねぇのかよ...しょうがねぇ、なぁ!」
瞬時にドラゴはドラムの目の前に立っていた。
ドラムの腹部に痛みが走る。
「うぐっ...」
さっきまでドラゴが立っていた場所には鳥の足のような、4本指の足跡が残っていた。
ドラムは見覚えのあるような気がした。
お腹にパンチは食らったものの、致命傷ではない。
ドラゴの腕を掴み、自分の腕を「拡げ」てお腹にお見舞いする。
「お返し...」
ドラゴの腹は鱗に覆われていた。
それは広く、硬く覆われているわけではなく、ドラムの拳のサイズだけ覆われていた。
鱗、4本指の足跡。
それらはドラゴのスキルが「竜化」であることを示していた。
それでもドラムには違和感が残っていた。
トン・グラムの竜化とはレベルの違う別物であることは理解できる。
体の一部を一瞬だけ竜化させることで体への負担を最小限にしながら、最大限の力を発揮している。
だが瞬時の移動は説明がつかない。
先ほどのパンチも目では追えなかった。
体感の時間間隔を「拡げ」ているにも関わらず視認できないほどのスピードを竜化だけで生み出しているとは考えにくい。
そこでドラムは恐ろしい仮説にたどり着く。
スキルを2種類保有している。
つまり、竜化と同時に早く動くスキルを併用していると考えた。
そこまで考えたドラムは自身の認識できるフレームレートを「拡げ」た。
人間は1秒間を240分割した情報しか認識できない。
その分割を24000分割に拡げたのだった。
すると、ドラゴの移動を認識することができた。
体の反応は追いつかず、攻撃を喰らいながらもドラムの仮説は現実になった。
そして、立ち上がりながらもドラムは叫ぶ。
「相手はスキルを2つ持っているぞ!!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます