あしびきの 山鳥の尾の しだり尾の 長々し夜を ひとりかも寝む
「次、アーマン・リック、シャルドネ・ビアンカ。」
「さあ、僕の番だ。」
やる気に満ち溢れている顔でリックは立ち上がる。
「やる気満々だね!リック!」
「試したいことがあってね。」
新しい業を試す機会がここにきて初めてやってきた。
ビアンカはリックに話しかける。
「久しぶりだな。」
リックは応える。
「久しぶりだね。前回は晴れていたが、今回は雨だ。」
気づけば雨は強くなり、地面には水たまりができていた。
「どんな天気でも勝つってか?」
「いやいや。天気が移っても、同じ人と剣を交えられる。しみじみするよ。」
「それがなんだってんだよぉ!!」
ビアンカはおもむろに剣を抜く。
「趣だよ。」
リックは静かに剣を構える。
「はじめ。」
まだ2人は見合っている。
ビアンカはリックのカウンターを警戒し、容易に手は出せない。
リックもまた、新しい業の正体が掴めない以上むやみに使えない。
「こっちから行くぜ。」
ビアンカは小さなナイフを取り出し、投げつける。
そのナイフはやがて見えなくなり、リックの肩をかすめる。
適応者
様々なものに適応し、触れたものも適応させることができる。
適応できないものは無いものの、具体的に何に適応するかの指示を出さねばならないため、未知の物や理解できないものには適応できない。
ビアンカはナイフを周りの景色に「適応」させ、擬態させることで見えなくしたのだ。
「厄介だな。」
そう言った後、リックは詠む。
あしびきの 山鳥の尾の しだり尾の 長々し夜を ひとりかも寝む
するとビアンカの動きが急激に遅くなった。
さっきまでリックに向かって走っていたビアンカが止まったように。
だが雨音は止まっていない。
「っっ.......???!」
ビアンカは適応できなかった。
何が起きているのか理解できず、何に適応すれば良いのかわからなかったからだ。
10秒後、急に動き出した自分の足についていけず、バランスを崩した。
リックはその瞬間を見逃さない。
剣をビアンカの首に当てる。
「降参するか?」
「す、する訳ないだろ!!」
「じゃあ。」
リックは詠んだ。
秋の田の かりほの庵の 苫をあらみ わが衣手は 露に濡れつつ
ビアンカの首は地面に転がった。
「自分の首が落ちる音は聞きたくないだろう。」
「そこまで。」
シュタインは瞬時にビアンカの治癒を始める。
対象の動きを10秒間遅くする
リックは脳内でメモをした。
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