小さな違い

ドラムとグラムは見合っていた。


「はじめ。」


合図とともにグラムは全身を鱗に包み、背中には羽が生えていた。


「竜化か。」

リックはある書物の伝説を思い出した。


竜化

体の一部分、または全身を竜へと変化させることができる。基本的には口を竜の口に、背中に羽を生やすなど部位に対応した変化が可能。鍛錬次第で対応していない部位への変化が可能だが、身体への負担が大きい。


「空飛べたら気持ちよさそうだね!」

アーニアの発言に、クラバは拍子抜けする。


グラムが口から炎を吐く。

ドラムは瞬時に息を止め、自身の周りの二酸化炭素の割合を<拡げ>て炎を消す。

が、熱に耐えきれず距離を取る。


「おいらのお気に入りの服だぞ!」

少しだけドラムのズボンが焼けている。

「ご、ごめんなさい...」

そう言いながらグラムはみるみる人間の姿に戻っていった。


変化は一時的なものですでに限界を迎えたと睨んだドラムは、体感の時間間隔を

<拡げ>、急激に距離を詰める。

グラムにとっては1秒間の出来事であり、視認できなかった。


そのままドラムはグラムのズボンの端をちぎった。


「ああ...私のお気に入りのズボンが...」

「ダメージズボンもおしゃれだよね。」


みるみるうちにグラムの腕は竜の尾になっていく。


「何をやってんだあいつは...」

リックは頭をかかえる。


時間のかかる変化を見てドラムは瞬時に理解した。

体の1部分を無理やり別の部分へと変化させるのは体に大きな負担がかかると。


そしてその体への負担を<拡げ>た。


かろうじて倒れず立っているが、グラムは意識を失っていた。


「そこまで。」


シュタインの声とともに、観客席からは声が漏れた。

「あのドラムってやつ、今何したんだ?」

「あの女の子、腕が竜の尻尾に...」


「ズボン、直してやれよ。」

戻ってきたドラムにリックは言う。

「裁縫は得意なんだ。」

「そういう問題じゃないんだけどな...?」


「にしても、ドラム君はスキルが成長して戦い方が変わったね。」

クラバがリックに尋ねる

「?あいつは非詠唱型のスキルだぞ。」


クラバは驚く。

自分も非詠唱型のスキルである以上、多彩な戦い方は望んでも実現できないと考えていたからだ。







「ただの小さな認識の違いだよ。」

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