自主練

入学後、最初のテストが近づいてきた。


段々と訓練場の予約が取れなくなり、リックたちは自主練をしていた。

しかし、お昼ご飯のタイミングには自然と同じテーブルに集まっていた。


「みんな、明日のテストは大丈夫?」

「おいらは今、化学の勉強をしてるんだぞ。」

「僕は今心理学を勉強しているよ。人の欲求を知ることは大切だからね。」

「私はずーっと瞑想してるよ!リックは?」

「僕は...スキルの自主練かな。」

「みんな頑張ってるね!」

アーニアがスプーンを掲げる。


初めてのテストは入学試験と同じ実践形式。

一律の基準は無く、入学時の結果と比較して成長している度合いで点数が与えられる。

100点満点だが、0点の者は在学資格を失う。

分かりやすく、残酷だ。


お昼を食べ終わり、リックは寮で自主練をしていた。

「この3つ目の業、自主練ができるようになったのはでかいぞ。」

これまで相手がいないと成立しない業しか無かったリックにとっては貴重な時間だった。


そうして自主練を続けていると、技が増えていた。


あしびきの 山鳥の尾の しだり尾の 長々し夜を ひとりかも寝む


あの『未来都市ミドルニア』に記されていた、

1人の歌人が万の軍勢を相手に、死者を1人出した、


あの歌だった。


期待もある反面、リックはがっかりもした。

その逸話から、遠距離の攻撃であると推測していたからだ。

だがその説明を見て、推測は外れていると感じた。


山鳥の尾のような長い夜を1人で過ごす。


部屋で詠んでみるも、特に変化は起きない。

「対象を設定しないと発動しないのかな」

寮のベッドを対象にしても何も起きない。


そして試験当日。

カインズとシュタインが生徒の前に立つ。

「よぉ!3ヶ月ぶりだな。俺の腕もほら、元通りだ。」

「あの日には完治してましたけどね。」


「今日はお前らの成長度合いを測るテストだ。」

「順番は入学試験と同じ順番で行く。いいか!」


生徒は揃って返事をする。


「では、ドミニク・アーニア、ミア・ソルバルト以外は観戦席へ。」

名前を呼ばれた生徒以外はコロッセオの中心部にある舞台から降り、階段を使って上へと上がる。





ドミニオン学院の、いやドミニオン大陸の歴史に残るテストが始まる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る