出会い

授業の内容は主に2つに分かれている。


戦闘訓練や生産訓練を通してスキル・業の実践を行う実践授業。


様々な専門分野に関して講師の話を聞きながら質疑応答をしていく座学授業。


それぞれ生徒が望む授業を受講できるため、自分のレベルや趣向に合わせて時間割を決定することができる。


リックは座学授業の美術探求という授業を受講している。


窓から見える景色を切り取って描いたり、ときにはキャンバスを持って外へ飛び出す。


もちろん楽しいが、それ以上にスキルの説明文の理解が深まることがあった。

文献にヒントが無いリックにとって、それは大きなメリットであった。


「おい、おい!」

リックの隣で絵を描く男子生徒がちょっかいを出す。

あまりにもしつこいので、リックは詠んだ。


秋の田の かりほの庵の 苫をあらみ わが衣手は 露に濡れつつ


隣からのちょっかいはリックの耳には届かなくなる。


30秒後、再び耳が聞こえるようになったが、何度もリックは自身の聴覚を奪って授業を終えた。


キャンバスには春になって咲き乱れる花々が描かれていた。


そのキャンバスを見た隣の男子生徒は、リックに頭を下げた。


「すまない!そんなに絵を描くことが好きだとは思わなかったんだ...何かお詫びにできることはないか?」

「じゃあ、これからは授業の邪魔をしないこと。あとは友達になってくれたら嬉しいな。」

「お安い御用さ。僕の名前はサ・クラバ」

「アーマン・リックだ。」


そんな会話の中、リックは出していたスキルを見て驚いた。

「増えてる...」

「何が増えてるんだい?」

「業が増えたんだ...」

「技を使っている様子には見えなかったけど...」

「対象の聴覚を奪う詠唱で自分の耳を聞こえなくしていたんだ。」


クラバは目を伏せる。

「良いスキルじゃないか...僕と違って...」

「そんな便利なものでもないぞ?今だって追加されたけど、どんな効果か見当もつかない。」

「僕で試してみてよ。」

「どんな効果かわからないぞ?」

リックは念を押す。


「構わない。それが終わったら、僕のスキルを教えよう。」




そこからは一言も話さず、2人は訓練場に向かった。

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