新事実

翌日、リックは朝から図書館で本を漁っていた。

百人一首というスキルの資料を見つけるため、スキルの入門書から専門書まで様々な本が席には積まれていた。

それらの本を読むなかで、スキルについてわかったことを書き連ねていった。


・スキルには詠唱型と非詠唱型がある。

リックの百人一首やアーニアの剣禅一致は詠唱型にあたり、文言の詠唱によって超常的な力を発揮することができる。一方でシュリンクの縮めるシュリンカーなどは非詠唱型にあたり、能力は限られるものの詠唱を必要としない。使い手によっては超常的な力を詠唱なしで発揮することもできる。


・スキルの成長

スキルレベルを上げることで<わざ>を取得することができる。スキルの使用によってスキルのレベルを上げることができる。また、成長は人によって異なり、同じスキルの所持者を比べても、取得しているわざは異なる。


これ以外にもスキルの図鑑などを読んだものの、手掛かりになるものはなかった。

諦めてハシゴに登り、本棚の上の部分にあった本を戻していく。


「うわああぁぁ」

バランスを崩し、リックは何冊もの本と一緒に床へと落ちた。

怪我はなかったが、本を戻す手間が増えてしまった。


「なんてこった...」

ため息をつきながら本を戻そうと、大きく空いたスペースに目を向けると、横向きに奥に本が置かれていた。


『未来都市ミドルニア』


すべての本を棚に戻し、その本を開く。


そこには太古から大国だったドミニオン帝国がかつて他国から同時に攻められた際、1人の歌人が万の軍勢を相手にした逸話が描かれていた。

驚くことに、その戦では死傷者が敵将1人のみだったという。

その時戦場に響いた歌が書かれていた。


あしびきの やまどりのおの しだりおの ながながしよを ひとりかもねん


リックは確信した。

スキル:百人一首の取得者が過去にも存在したと。

そしてこの歌がこのスキルにおいて最強であることを知った。


早くスキルのレベルを上げなければ。

焦りと期待を孕んで、訓練場への足取りを早めた。

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