難波津に 咲くやこの花 冬ごもり 今を春べと 咲くやこの花
剣を構え、2人は向き合う。
相手は長身で黒く赤い髪の男。男とは思えないほど髪が長い。
「はじめ。」
合図とともに、シャルドネ・ビアンカの姿が消える。
「......!!」
見回してもどこにもいない。
「上か?」
雲ひとつない空を見上げた瞬間
「下だ」
声が聞こえるとともに迫る剣。間一髪でかわすが、また姿を見失う。
「...どこだ」
足音に耳をすますが、聞こえるのは鳥の鳴き声だけ。
「前だよぉ!」
真正面に突然現れたビアンカに瞬時に反撃をする。
「..........!!」
その瞬間、ビアンカは人間の動きとは思えない関節の動きで反撃を防ぎ、
そのまま距離をとった。
「なぜ反応できる?」
「瞬時に現れる敵には慣れているので」
父シュリンクの「縮める」能力の方がよほど厄介だと、リックは思った。
「次はこちらから行くぞ」
ビアンカに向かって走り出したその時、何かにつまづいた。
確かに何もないはずなのに、何かがそこにある...
空中で剣を地面に刺し、高く飛び上がる。
風が心地よい。
着地と同時にビアンカは襲ってくるだろう。
だがさっきから感覚が余計なところへ散る。
まるで自然を楽しんでいるように。
ビアンカを探しながらふと、競技場の隅を見る。
そこには一輪の花が咲いていた。
難波津に 咲くやこの花 冬ごもり 今を春べと 咲くやこの花−
気づけば着地と同時にこの歌を詠んでいた。
「何を歌っているのだぁ!」
ビアンカが襲いかかったそのとき。
梅の花が舞い、ビアンカは競技場の壁に背中を打ちつけて気絶していた。
リックは一度も瞬きをしなかった。
にもかかわらずコンマ数秒、目の前が暗くなり、気づけば戦闘は終了していたのだった。
「では次...」
状況の整理がつかないまま、リックは観客席へと戻った。
圧勝と言えば圧勝だが、何よりスキルが発動した。
その事実に驚きを隠せなかった。
「お疲れっ、リック」
「ありがとう」
「スキル、使えたんだね」
「今日が初めてだよ。正直びっくりしたよ...」
スキルの説明は何も変わっていなかったが、リックは脳内でメモをした。
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