間違い

「ぐっぅぅぅぅ」

カインズは苦い表情を浮かべる


「ごごごごごごごめんなさい...きききき緊張してしまって...」

おどおどするアーニアとは違い、他の人は戸惑いを浮かべている。


「あのカインズさんの腕が...」「てかなんでカインズ攻撃してんのあの子?」


そんな喧騒の中、ミア・ソルバルトが手をあげる。

「降参します。」

1組目の試験は1分と経たずに終了した。


「大丈夫、ほら元通り。」

先ほどのメガネの男性があっという間に治療する。


イルヴァン・シュタイン

スキル:癒す者(キュアー)。さまざまな治療技術を網羅し、医療にも精通しているという。その治療技術は卓越しており、死者すら息を吹き返すと言われている。


「ちっ、聞いてねえぞこんなのよぉ...」

「すみません...!」

アーニアは頭を下げる。

「ただ、いい一撃だったぞ!」

先ほど地面に落ちた方の腕で、カインズはグッドサインをする。


「では次、トン・グラム、ニガ・ドラム、下へ」

「お、オイラの出番だ。なんだか名前が似てるなぁ」

呑気に戦闘の舞台へと降りていく。


「カインズさん、大丈夫なのかな...」

戻ってきたアーニアが、リックの隣に座る。

「大丈夫。それよりすごい一撃だったな...」

「合格するかな...?」

「審判斬って合格はないだろ笑」

「えぇぇぇ...」

実際は真逆だろう。明日には学院中で話題になるに決まっている。


「それより、あれ。」

「あ、今日の男の子だ!頑張れーー!!」

アーニアは大きな声で応援しながら手を振る。


「オイラ、女の子に応援されるなんて、初めてだ...」

そう言いながら、地面の砂をかき集めている。

気づけば、2人とも武器を持たず距離をとって向き合っていた。


「はじめ。」

合図と同時にトン・グラムが炎を放つ。

が、瞬時にかき消されるとともに無数の大きな砂がトン・グラムを襲う。


リックは目を見張った。

「もしや...あのニガ・ドラム...」


トン・グラムは背中に大きな羽を生やし、空へと回避する。

しかし、上からは大きな砂が降り、やがて砂に埋もれた。

さらに埋もれた砂山に、大きくなったニガ・ドラムがのしかかる。

「どうだー動けないだろー」


「そこまで。」

試験終了の合図とともに砂の山とニガ・ドラムは小さくなった。


それを見たリックは確信した。

コイツは、僕のアドバイスで強くなる。と。


「次、シャルドネ・ビアンカ、アーマン・リック、下へ。」


試験官の呼び声を聞き、リックは席を立つ。

「頑張ってね!」

「やれるだけやってくるよ。」


階段を下りながら、戻ってきたニガ・ドラムと目が合う。

「見たかおいらの戦い!スキルを目一杯使った、文句なしの戦いだろ!」

「いや、それは間違いだ。」

「む...それより、さっき応援してくれた女の子はどこだぁ?」

そう言って席の方へと歩いて行った。


「いい天気だな」

空を見上げながらリックは武器を手に取った。

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