スキル鍛錬

二日酔いの頭を抱えながら迎えた朝。

目に突き刺さるような日差しと、不快に響く鳥の鳴き声。

二度とこんな朝は迎えたくないと、リックは思った。


「リック!スキルレベルが上がったよ!」

リビングにはアーニアがいた。どうやら一晩中瞑想をしたらしい。

半分寝ていたらしいが、それは瞑想なのか...?

「見せてあげる!」

無理やり外へ連れ出され、大きな木の前に立つ。


一閃。


アーニアがそう言った瞬間、目の前の木は縦に真っ二つになった。

「すごいでしょー?」

ドヤ顔でこちらを見ながらそう言うが、手に持っているのはただの枝だ。

「すごいよこれは...」

「リックのも見せてよ!」

「そうだな、とりあえずやってみよう...」


難波津に 咲くやこの花 冬ごもり 今を春べと 咲くやこの花


読んでみるが、何も起こらない。


「何にも起こらないね...」

これはまずい。全くスキル鍛錬ができない。このまま実践試験に突入することだけはどうにかして避けなければならない。

「こうなったら、筆記試験を頑張るしかないな。」

「リック、満点取ってね!私はカンニング

「絶対ダメ。」


それから2ヶ月間、毎日スキルを声に出して読んだ。もはや暗記してしまって、呪文のように唱え続けていたが、何の成果も得られなかった。


「ついに来てしまった...」

気づけばドミニオン学院の校門の前に立っていた。


「大丈夫よ、リックは筆記で満点取るんだから」

「カンニングはやめろよ」

「し、しないわよ!」

「...?緊張してるのか?」

「し、してる...」

図星だったらしい。何だか落ち込んで、髪の毛をいじいじしている。


「オイ、邪魔だぞ。」

不意に後ろから声が聞こえる。

振り向くとそこには小さな...いや横には大きい恰幅の良い男の子が立っていた。この身長だと確かに僕たちは邪魔なようだ。

「なんか変なこと考えてるだろ!」

「いや、そんなことは...」

「オイラはニガ・ドラム。王になる男だ。忘れんなよ!」

そう言ってスタスタと門をくぐっていく。。


「私たちも行きましょ。」

「そうだな。」


試験会場へと歩くリックの顔は、緊張でひきつっていた。

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